昭和30年7月28日、林間学校のような形で三重県津市の海岸の海岸を訪れ、その海で泳いでいた中学生たちが突然、集団で溺れ死ぬという事件が発生した。

この時の死亡者は36名。普通に水泳を楽しんでいた、この中学生たちに一体何が起こったのか・・。かろうじて生き残った生徒の話を聞くと、例えばある生徒はこう証言している。

「私が泳いでいると、突然友達のAさんが、〇〇さん、あれ見て!と叫び声を上げました。彼女の指さした方向を見ると、同級生たちが次々と海の中に引きずり込まれていってました。そして波の上には何か黒い人間たちの集団がひたひたとこちらに迫ってきていました。

その黒い人間たちの集団はどんどん私の方にも近づいてきて・・・よく見るとそれは防空頭巾をかぶった大勢の女の人たちだったのです。その人たちは泳ぐというより波の上を移動しているといった感じで・・あっ・・と思っと瞬間、いきなり私も誰かに足を引っ張られて海の中に引きずり込まれました。

海の中で薄れていく意識の中で、私は足をつかんで放さない、無表情な防空頭巾の女の人をはっきりと見たのです。」

この生徒を含めてこの時助かったのは9名。なんとかこの生徒は助かったものの、その後肺炎を併発して30日間入院することになった。入院している最中も彼女は「亡霊が来る・・亡霊が来る・・。」とうわごとのように言い続けたという。

ここで昔、この地に何があったのかを調べてみると・・・、この事件のちょうど10年前の昭和20年7月28日の終戦間際、B29の大編隊が津市上空を襲い、実に250名もの死者を出していることが分かった。この時、死体の大半はこの海岸の砂浜に埋められていたのだ。

生徒たちを襲った、防空頭巾やもんぺ姿の女性は、この時に成仏しきれなかった戦争の犠牲者たちなのだろうか。

また、この海岸では7月になると、奇怪な死に方をする人がその後の相次ぎ、釣りをしていた人が理由もなく沖へ沖へと歩いていき、水死したまま死体も上がらないとか、また、先の生徒と同じような目にあった男性が、やはり「亡霊が来る・・亡霊が来る・・。」病院のベッドでうわごとを言いながらなくなったりもしているのだ。

そしてその後、この海岸には死者を慰霊するための女神像が建てられた。


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