アメリカのジョージア州に住む、12歳の少年ハリー・マーチンは、ある日友人と森の中にハイキングに出かけた。その日はとても暑い日で、二人は持ってきた水を全て飲み干し、二人の水筒はとっくにカラになっていた。

それでも歩き続けたが、ノドがカラカラだ。どこかに川はないものだろうか・・。二人は水を求めてさ迷い歩いた。ある地点まで来た時、友人が川を見つけた。「ハリー!川だ、川があったよ!」

近寄ってみると水の澄んだ小川だ。これなら十分飲めそうだ。二人は嬉々として川に入り、両手で水をすくってごくごく飲んだ。乾ききった身体には最高においしく感じる。夢中で水を飲んでいると、ハリーのノドに何か「ごろっ」とした違和感が走った。

「何・・今のは・・? 何か飲み込んでしまったのか?」ハリーはちょっと気持ち悪くなったが、友人にわざわざこのことを告げて心配をかけるのもイヤなので、あえて口には出さなかった。

そしてハイキングも無事に終わり、二人はそれぞれの家へ帰った。だが、それから一年後、ハリーの身体に異常が起き始めた。腹が減って腹が減ってしょうがないのだ。肉でも魚でもお菓子でも、目に入るものは手当たりしだい、何でも食べ始めた。

これだけ毎日食べたら完全に肥満体になってしまいそうだが、なぜか身体は別に太った様子もない。むしろ以前よりも弱々しくなった気さえする。だが、食欲が旺盛になっただけで、あとは大した変化もなかったので、ハリーの母親も特別心配するようなことはなかった。

だがしばらくするとハリーは、舌を出して唇をやたらと舐めるようになったり妙に目がすわったりして、だんだんと彼が変わってきたことを母親も認識し始めた。

ある日ハリーが「ママ、カエルって食べられるの?」と聞いたところ、さすがに母親も気味が悪くなって病院に連れて行くことにした。

病院で一応色々な検査を受けたが、その結果を伝えに来た医者の表情が妙に険しい。
「お母さん、信じられない話ですが、ハリー君の胃の中には何か生物がいます。」
「生物ですか!?」

「そう、我々も驚いたんですが、間違いなく何かの生物が胃の中で生きているのです。」
「その生物って一体何なのですか?」

「それは取り出してみないと分かりませんが、事態は極めて深刻です。緊急に手術が必要です。」

驚き、不安になった母親も手術に同意する。そして手術は行われた。大した時間ではなかったが、手術室のランプが消え、医者がトレイに入った「何か」を持って手術室から出てきた。

「お母さん、出ました。こいつがハリー君の胃の中に潜んでいたやつですよ。」
それは体長1.2メートルもあるヘビの死骸(しがい)だった。


「キャーッ!」と母親も悲鳴を上げる。
「こいつがハリー君の食べたものを、更に食べてたわけです。彼の異常な食欲はこいつが原因ですよ。」

よく見るとそのヘビは、普段よく見かけるようなヘビとはかなり違う。体型こそヘビだったが、身体はつるつるしていて、濡れている。そして色は赤みがかった肌色。まるで人間の皮膚の色だ。そしてそのヘビに目はなかった。

一年前のハイキングの時、小川で飲み込んだものはヘビの卵だったらしい。それが胃の中でかえり、そのまま成長して生きていたのだ。川の水を飲む時には気をつけたほうがいいかも知れない。


Top Page  怪事件・怪人物の表紙へ  No.87  No.85

このページの先頭へ