Top Page  怪事件・怪人物の表紙へ  No.94  No.92


No.93 包丁で治療を行う心霊手術師・ホセ・アリゴ



1955年、ブラジルの片田舎コンゴニャス・ド・カンポという街に、ホセ・アリゴという一人の農民がいた。ある日ホセは妙な夢を見た。夢の中に一人の男が現れて、「私は第一次世界対戦で死んだ、ドイツの外科医アドルフ・フリッツだ。」と自己紹介するのだ。

この時は単に「変な夢を見たな。」というくらいにしか思わなかったのだが、それからしばらくして、その夢の意味の分かる出来事に遭遇した。

ホセはある日友人の家を訪ねた時に、その家で、ある一人のガン患者と出会った。その患者は女性だったが、すでに末期の状態で、意識もなく、瀕死の状態でベッドに横たわっていた。

するとその時ホセは、自分でも意識しないままふらふらと台所まで歩いていき、一本の包丁を持って戻ってきた。そして周りの人を下がらせると、包丁をその患者の腹にいきなり突き立てたのだ。


周りから悲鳴が上がる。誰もが「殺した!」と思った。だがちょっと様子が違う。ホセは包丁を刺した傷口から手を突っ込み、腹の中をまさぐっている。顔も真剣そのものだ。まもなくホセは、患者の傷口から何か血まみれの塊(かたまり)のようなものを取り出した。そして疲れ果てたようにぐったりと床に座り込んだ。

すぐに周りの人が医者を呼んだ。駆けつけた医者が患者を診察して驚いたように言う。「患者が回復し始めている・・!」
医者が調べたところによると、ホセが体内から取り出したものはガンの腫瘍(しゅよう)だったのだ。そしてまもなくして、この患者は本当に回復した。

「医学とは全く無縁の一人の男が包丁で奇跡を起こし、ガン患者を救った」
この噂はたちまち広がった。


噂を聞きつけ、何人もの人たちがホセを頼ってくるようになった。
「分かった、やってみるよ。ただし、その前にちょっと一人にしてくれないか?」と、ホセは最初に一人で部屋にこもる。そして次に出てきた時には明らかに様子が違っているのだ。

「さあ、手術を始めよう。」そう言い放つホセは、普段の農民の姿とはまるで違い、医学知識を十分持った医者といった感じで実に堂々としている。

治療の方法も、以前ガン患者を救った時と同じく、包丁を使った手術である。包丁で身体を開き、手で直接悪い部分をつかみ出す。しばらくするとみんな病気だったことが嘘のように回復していくのだ。

消毒もしていない包丁を使っているにも関わらず、患者の中には感染症を起こす者が一人もいない。そして包丁で身体を切られているというのに患者は痛みさえ感じていないようなのだ。そして出血もほとんどない。傷口も数日でふさがってしまう。


奇跡としかいいようのない手術であったが、実際に患者が回復している以上、インチキなどではない。ホセの元には連日千人を超える人が治療を求めて長蛇の列を作るようになった。

ホセは患者に対した時でも、これまでの病状など聞かなかった。聞かなくてもすでに分かってしまうからだ。また、実際に自分がどういう治療を行っているか、自分でもよく分かっていないようだった。

「私がどういうことをやっているのか、自分でもよく分からないんだ。自分はただ、アドルフ・フリッツという外科医の霊に導かれて手術をしているだけなんだから。」

と、ホセは周りの人にはよく語っていたという。

だが、医者としての資格がないのに治療行為を行なっているということで、ホセは二度に渡って警察に捕まった。そして刑務所にも入れられた。

そうした苦難を乗り越え、ホセは1971年に交通事故で亡くなるまで、莫大な数の人を、その奇跡の心霊治療で救った。


Top Page  怪事件・怪人物の表紙へ  No.94  No.92