バミューダのある路上で、ある日バイクとタクシーが衝突事故を起こした。バイクの方は兄弟で2人乗りをしており、タクシーにはお客が1人乗っていたので、この事故に巻きこまれた者は合計で4人。しかし幸いなことに怪我こそすれ、死者は出なかった。

そしてその事故から1年が経過した。それぞれ傷も癒(い)え、別々の日々を送っていた。あの時のバイクの兄弟は同じように2人乗りで走りを楽しんでいた。タクシーの運転手も相変わらず仕事を続けていた。

ある日、その運転手がタクシーを走らせていると、道の先の方で手が挙がった。タクシーに乗ろうとしているお客である。すぐに車を寄せてお客を拾おうとしたが、運の悪いことに、自分より先にもう一台タクシーが走っており、そっちの方がお客を乗せて走り去ってしまった。

「ちっ」と舌打ちして、再び車を走らせる。しばらく走っていると、また路上で手が挙がった。今度は自分の前にタクシーはいない。路肩に車を寄せると、今度こそお客が乗ってきた。

「どちらまで行きましょうか?」と聞いたが返事がない。
「あのー、どちらまででしょうか?」と、今度は振り向いて聞いてみた。後ろの座席には驚いたような顔をした1人の男が座っていた。

「あっ!お客さんは・・!」
1年前の事故の時のお客だった。全く偶然にもあの時のお客を拾ってしまったのだ。

双方ににがい思い出がよぎる。なんとなく嫌な感じがしながらも、ようやく行き先を告げられてタクシーは発進した。業務的な会話を一言二言したが、後は沈黙になってしまった。


「あの場所だと、どうしてもあの道を通っていくことになるな・・。」
運転手も心の中ではそう思ったが、あえて言葉には出さなかった。喜ばしくない再会をして、嫌な思い出のある道を再び通らなければならない。

あの日あの時と同じ風景が車の外を流れていく。まもなく事故現場にさしかかった。と、その途端、後ろのお客が「あっ!」と声をあげた。

向こうの方から、あの時のバイクにあの時の兄弟が乗って、まっすぐこっちへ突っ込んでくるのだ。

「そんなバカな!」
4人ともそう思ったかも知れない。だがあっと思う間もなく、バイクとタクシーは再び衝突してしまった。まるで吸いつけられるかのように。


同じ状況、同じ人間による全く同じ事故が再び起こってしまった。ただ一つ違ったことは、今回の事故でバイクの兄弟の方は死亡してしまったことである。


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