アメリカのニューヨーク。その大都市の地下には、巨大な迷路のような下水道が入り組んでいる。この下水道の中に入っていったん迷ってしまうと、地上への出口を見つけるのはかなり困難だと言われている。

ニューヨークでホームレスとなってしまった女性マジー・テイラーさん(63歳)は、住む家がないため、この下水道の中を家にしていた。テイラーさんはずっと下水道の中にいるため、内部のことはよく知っているつもりだったが、ある日どうしたことか道を一本間違えてしまい、うろうろと歩くうちに完全に迷子になってしまった。

「困ったわ・・。どうしよう。」
道を聞こうにも下水道の中で出会う人がいるはずもなく、時々水道局の係員が降りてはくるものの、そのような人に偶然出会える可能性は低い。

寝るだけならいいが、さすがに下水道の中に食べ物はない。食べるものはやはり地上まで調達にいかなければならないのだ。そのうち手持ちの食料もすっかり底を尽き、完全に何もなくなってしまった。飲み水は仕方がないので下水に流れている水を飲んで飢えをしのいだ。

だが食べるものが欲しい。猛烈な空腹状態が続き、もはや耐え切れないところまできていた。テイラーさんが意識も朦朧(もうろう)としていた時、すぐ近くで「チューチュー」という鳴き声が聞こえてきた。

ふと目をやると、そこにはこの下水道に住みついているドブネズミの集団がうろついていたのだ。極度の飢餓状態におちいっていたテイラーさんは、このドブネズミがとてもうまそうに見えたという。

いつも持ち歩いている護身用の杖(つえ)を、思いっきりドブネズミの集団の中に降り降ろした。杖の先端がその中の1匹のネズミに当たった。ゴロンと身体を横たえるドブネズミ。

そのネズミがまだ生きていたかどうかは分からない。しかしテイラーさんにとって、それはどうでもよいことだった。すぐにそのネズミをわしづかみにして、思いっきりかぶりついた。手足を引きちぎり、かじりつき、生のまま食べ始めた。極度の空腹状態では何を食べてもうまい。下にはポタポタとネズミの血がしたたり落ちている。

こうしてネズミを食料とすることを思いついたテイラーさんは、それからも杖で何匹もしとめてはかぶりつき、飢えをしのいだのだった。

数日後テイラーさんは、見まわりにやってきた水道局の係員に偶然発見され、やっと救助してもらえた。すぐに病院に運び込まれたが、全身にネズミの噛み跡が十数箇所も残っており、食料を確保する際の戦いの傷跡ということは、誰が見ても明らかだった。


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