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No.119 獣姦と鮮血、そして殺人で射精する異常者・12人殺害のピーター・キュルテン



1929年2月3日、ドイツのデュッセルドルフ。
女性事務員フラウは深夜、帰宅途中に何者かに後ろからいきなり首を絞められ、気を失った。気がついた時は病院のベッドで手当てを受けているところだった。頭には24箇所も鋭利な刃物で刺された傷があり、中でもこめかみに受けた傷はひどく、脳髄(のうずい)が見えていたほどだったという。

所持品は何も取られていないし、性的暴行も受けていない。ただ、襲われて重症をおわされたのだ。

その五日後。今度はローズという名の幼い少女が街はずれの建築現場で死体で発見された。服に乱れはなく、レイプされた形跡はない。首を絞めて殺された後、頭を13個所も鋭利な刃物で刺されていた。
先のフラウ殺人未遂事件と手口がよく似ていることから警察は同一犯として捜査を始めた。

三人目の犠牲者となったのは男性だった。55歳のエルドルフという機械工で、深夜、酒に酔って公園のベンチで寝ているところを襲われた。いきなり刺されたらしく、犯人と争った形跡はなない。頭部と上半身に20個所の刺し傷があった。凶器は鋭利な刃物かハサミのようなものらしい。所持品は何も取られていない。

四人目はエルナという16歳の少女だったが、犯人にいきなり首を絞められ、仰向けに転(ころ)がされた時、エルナは必死に抵抗し、犯人の顔をツメで思いっきり引っ掻(か)いた。一瞬犯人がひるんだ隙に何とか逃げ出し、これは未遂に終わった。

このエルナの犯行があったのは4月2日。そしてその翌日にはまたもや女性が襲われた。同じように首を絞められて失神し、草むらを引きずられて行く時、彼女は意識を取り戻した。恐ろしくて声が出なかったが、襲われる直前、犯人は突然走り去っていったという。直後に数人の足音が聞こえたので彼女は大声で助けを求めた。おそらく犯人は人の気配がしたので何も出来ずに逃げ去ったのであろう。これも未遂に終わった。

そして7月にも同じく三件の絞殺未遂事件が起きた。襲われたのはいずれも女性である。7月30日には35歳のエマという女性が、アパートの自室で絞殺死体となって発見された。

三人が殺され、四人が未遂に終わった。犯行の手口はどれも共通している。相手を絞殺し、頭や上半身を刃物でメッタ刺しにするのだ。犯人は被害者から何も奪わないし、レイプもしていない。では動機は何なのだろうか。警察は捜査本部を設置し捜査を進めたが、何ら有力な手がかりは得られなかった。


これら一連の事件の犯人は、同じデュッセルドルフ市内に住むピーター・キュルテンという男である。キュルテンは当時47歳。妻は3つ年上で50歳。この時点ではキュルテンはまだ捕まっていない。

キュルテンは工場で働く平凡な男で、妻は飲食店で深夜の清掃をする仕事をしている。礼儀正しく、優しい口調で話す紳士的な男・・それが周囲の人々の、キュルテンに対する印象だった。

このデッュセルドルフで、連続殺人事件に世間が震えあがっている時期、妻が深夜の仕事帰りが怖いというので、キュルテンに迎えを頼んだことがある。
「ねえ、今日の帰りは仕事場まで迎えに来てくれない? 連続殺人の犯人って、人を殺して血を吸うっていう噂まで流れてるし、私怖くって・・。」

「心配ないよ、お前が襲われることは絶対にない。それでも怖いというのなら、今日は迎えにいってあげよう。」


妻の仕事は、夜に出勤して深夜に帰宅する。妻が出かけてから、キュルテンは獲物を求めて夜の街を徘徊(はいかい)するのだ。

逮捕された後にキュルテンは殺人についてこう語っている。
「人を殺したいという衝動が日に日に増していった。特に、捕まる前の数ヶ月間はひどかった。この衝動は人を殺すまで決しておさまることがないのだ。人間の首を絞めている時、私は絶頂感を感じて射精する。その後、死体を切り刻んでいる時、オルガズムに達することもあった。」

「ある時、少女をハサミで刺し殺した。こみかみの傷から鮮血が吹き出ていて、その血を吸った瞬間絶頂感を感じ、射精した。」

キュルテンはほぼ生まれながらの犯罪者に等しい。17歳の時、窃盗で刑務所に送られてからは刑務所を出たり入ったりで、17歳から38歳までの間に3回刑務所に入っている。この間に一般社会で過ごしたのはわずかに二年足らずだった。

「刑務所に送られるたびに私は社会に対しての憎しみを増していった。私はまるで刑務所に入るために生まれてきたようなものだ。極悪人の父の魂が私の中に入り込み、盗みや放火、殺人などをやらせるんだ。社会に出たら、思い切り残酷な犯罪を犯して世間の奴らを驚かせてやる。そういう空想をするのが獄中での楽しみだった。」


機械工エルドルフ殺しについては次のように告白している。
「2月12日の夜8時ごろ家を出てから三時間ほど獲物を探したが、見つからなかった。帰ろうと思っていたところで、公園のベンチでイビキをかいている男を見つけた。酔ってここで寝ているらしい。私はハサミを取りだし、男のこめかみを思い切り突き刺した。深く突き刺したので、ハサミが抜きにくかったが、やっと引っこ抜くと、鮮血が噴き出した。男はうめき声をあげながらベンチから転がり落ちた。その後、男の首と頭をハサミで突き刺した。傷口から鮮血が吹き出る光景を見たとたん、絶頂感を感じて射精した。」

ピーター・キュルテン

8月8日に殺害した少女マリアに関して。
「その日は誰かを殺そうという意思はなかった。ただ、道端のベンチに座っていると一人の少女が近づいてきた。私は外見的には穏やかな紳士に見える。子供が好感を持つのも当然だ。牧場へ行ってみないかと誘うと、うなずくので、二人で出かけることにした。

牧場から続く林の中を歩いている時、私はこの子を殺そうと決めたのだ。私は少女の首を絞めて失神させるとハサミを首に突き刺した。意識を取り戻した少女が『殺さないで。』と懇願(こんがん)したが、私はハサミを心臓に突き刺した。勢いよく鮮血が吹き出た。これでやっと死んだ。

死体をどう処理しようか、あれこれと考えた。そうだ、死体はどこか見晴らしの良い場所に埋めて、これから時々その場所に散歩に来ることにしよう。自分の思いついた素晴らしい考えに胸がドキドキした。少女を埋めた場所へはその後、30回くらいは訪れた。この下に自分の殺した少女が眠っていると思うと、なんとも言えない落ち着いた気分になるのだ。」

キュルテンは、捕まらない自信があったのか、この少女が埋まっている場所を地図にして警察に送りつけている。警察がその場所を掘って少女マリアの死体を発見した。

キュルテンの殺人の動機・・それは社会に対する憎しみと、鮮血や相手の苦しみによって得られる性的な快感のためなのである。

9月になるとキュルテンは凶器をカナヅチに変えた。12月までの三ヶ月間で二人を撲殺し、一人を絞殺、四人が重症を負わされた。年が開けて1930年になってもキュルテンの犯行は続いた。


1930年5月の中ごろ。キュルテンは逮捕されることをだんだんと覚悟してきた。いずれ自分は捕まるだろう。極刑にされても覚悟は出来ている。だが、残された妻が心配だ。妻は若いころ、その当時の婚約者に裏切られ、その彼を射殺した罪で四年ほど刑務所に入っている。出所してからキュルテンと知りあい、一緒に暮らし始めてから、もう十年になる。身体が強い方ではない。自分が捕まればきっと生活に困るだろう。

ただ、デュッセルドルフの連続殺人犯、すなわち私には、その情報提供者に多額の賞金がかけられている。妻に私のことを警察に密告させ、その賞金が妻に入れば生活に困ることはないだろう。

殺人鬼の最後の思いやりで、賞金を妻に、そして自分は捕まることを覚悟した。


5月23日の夕方、キュルテンは妻をレストランに誘った。そしてそこでこれまでの犯罪の全てを告白した。穏やかに話したつもりだったが、妻の驚きと恐怖は普通ではなかった。一年以上に渡り、このデュッセルドルフで市民を恐怖に落としいれてきた、連続殺人犯がまさか自分の夫だったとは。

「確かに夫は、これまでの人生の半分以上を刑務所で過ごしてきた極悪人ではあったが、私と知りあってからはてっきり心を入れ替えてくれたものとばかり思っていたのに・・。」

妻が恐怖し、信頼を裏切られて落胆しているのは分かった。それでも何とか話を続け、賞金のことも勧めた。

「私にはまだすべきことが残っている。明日、もう一度詳しいことを話すから、教会の前で待ち合わせしよう。それが終わったら警察へ行って私のことを話すのだ。お前に賞金が入れば、今後の生活も大分楽になるだろう。」
そう言ってキュルテンは妻と分かれた。


翌日、キュルテンは待ち合わせの教会の近くまで来て驚いた。何か明らかに周囲の雰囲気が違う。
立ち話をしている奴や通行人が私服警官であることは察しがついた。辺りにはまだまだ警察が隠れているに違いない。妻が密告したことは明らかだ。

「明日会った後で警察に行くように、と妻には言っておいたのに、約束は守られなかったか・・。だが、これまで一緒に暮らしてきた女だ。これがお前にしてやれる最後のことになるだろう。」

キュルテンはゆっくりと教会に向かって歩き出した。とたんに数人の男たちがキュルテンをとり囲んだ。1930年5月24日、デュッセルドルフの殺人鬼・ピーター・キュルテンは逮捕された。

12人を殺害し、25人が殺人未遂および重症。一年四ヶ月に渡る市民の恐怖は終わった。


鮮血と殺人に性的興奮を感じるピーター・キュルテン。彼の変質的な感覚は、少年時代からその土壌があったと言われている。

キュルテンは1883年、ドイツ・デュッセルドルフの南、約40kmの辺りにある町・ケルンで生まれた。13人兄弟の3番目。父親は何回も刑務所に入っている男で、家庭内では暴力を振るう、家具は壊す、といった最低の男だった。狭い家の中で酒を飲んでは嫌がる母親を子供たちの前で犯す。生活はいつもどん底だった。

幼いキュルテンにまず影響を与えたのは、キュルテンの一家と同じ建物内に住む「野犬捕獲人」だったと言われている。当時の「野犬捕獲人」とは、街の中の犬を捕らえては業者に売る男で、買い取った業者は犬を殺し、肉を食用にして販売し、脂(あぶら)の部分は火傷(やけど)の薬として販売していた。


この野犬捕獲人がキュルテン少年に犬をいじめることを教えた。シッポを切断したり、針を刺したりして犬が苦しむのを見て二人で喜んだり・・。また、メス犬の性器に自分のペニスを突っ込んで射精してみせたり、そしてそれをピーター少年にやらせたりもした。また、牧場にキュルテンを連れていって、ヤギやニワトリとSEXすることも教えた。この男との交流でキュルテンは獣姦に目覚めてしまった。

ある日、キュルテンは、ヤギを犯そうとしている時、ヤギがあまりに暴れることに腹を立て、ヤギの腹にナイフを突きたてたことがあった。一瞬でヤギの腹から鮮血が噴き出す。その血を見た瞬間、これまで経験したことのない快感が全身を走り、一気に射精した。

これから後、キュルテンは普通の獣姦では満足出来なくなり、性行為の途中で動物を刃物で殺すのが普通となった。十代始めから十代半ばまで、動物の血にまみれて性行為にふけり、快感に酔いしれた。


最初の殺人はキュルテンが9歳の時だった。友達と川に遊びに行った時、友達の一人をイカダから突き落とし、助けようとしたもう一人も突き落として溺死させている。だがこの事件は事故として処理された。9歳の少年に殺意があるとは誰も思わなかったからだ。

そして数年後、窃盗で捕まり、17歳から21歳まで少年院と刑務所に入れられた。出所してからも働く気は全くなく、空き巣などで生活費を稼いでいた。
ある日の夜キュルテンは、また盗み目的である大きな家に忍びこんだ。だが家には金目のものが見当たらない。たまたま開けた部屋で10歳くらいの女の子が寝ているのを発見した。キュルテンはそっと近寄って女の子の首を両手で絞めつけた。女の子は目を覚まし、必死に抵抗したが、キュルテンはその手を離さず、そのまま絞め続けた。やがて女の子はぐったりとして動かなくなった。

女の子の下半身を脱がし、性器に指を突っ込んでみたが興奮も勃起もしない。次にキュルテンは、隠し持っていたナイフを取り出し、女の子の耳から耳にかけてザックリと切り裂いた。暗い中、鮮血はよく見えなかったが、血の吹き出る音は聞くことが出来た。なま温かい少女の血がキュルテンの両手にかかった時、全身が快感にひたり、射精した。キュルテンはそのまま逃走した。

この事件は迷宮入りになっていたが、キュルテンが犯行後13年経って自供し、ようやく解決となった。


また、先のデュッセルドルフの連続殺人に関しても以下のような供述をしている。
「オブリガールという少女をカナヅチで殺した時、少女のこめかみから流れ出る血を吸った瞬間に全身に絶頂感が走り、射精した。」
「少女シュレットを殺した時には手についていた血をなめただけで射精した。」

逮捕される前の1930年の春ごろ、キュルテンは夜中じゅう獲物を求めて探しまわったが、結局この日は見つけられず、町のはずれにある湖に来てしまったことがある。湖には白鳥が寝ていた。キュルテンはそっと忍び寄っていきなり白鳥の首を切断した。首から吹き出る鮮血を飲んでみたところ、快感に包まれて一気に射精した。その後、切断面に口をつけて血を飲んだのだが、飲みすぎて後で気持ち悪くなり、吐いてしまった。


キュルテンは、事故などで血まみれになっている人を見ただけでも興奮する。ある時キュルテンは、偶然列車の脱線事故の現場を通りかかったことがある。事故現場では男が列車の下敷きになり、身体はぐちゃぐちゃ、血だらけで死にかけていた。キュルテンは助けるふりをしてその男に近づき、男の身体に手を触れた瞬間、またもや絶頂感が身体を走りぬけ、射精した。

鮮血と殺人に性的興奮を感じる異常な感覚。キュルテンの犯罪に、殺すまでに至らず、殺人「未遂」が多いのは、相手を殺そうとしている最中に射精してしまって、その時点で自分の目的が果たせたために相手が一命を取りとめた、という場合もあるようだ。

キュルテンは1931年7月2日、ギロチンで処刑された。



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