Top Page  心霊現象の小部屋  No.08  No.06


No.07 やまない足音

「この家には何かいる。」彼女がそう思い始めたのは、引っ越してきてから間もなくのことだった。その家は普通の平屋の一軒家。父親の仕事の都合でこの地へ、そしてこの家へ引っ越してきた。

何か変だ。特に仏壇の置いてある部屋が何かおかしい。夜になるとその、誰もいない部屋から奇妙な音が聞こえる。

「チャリーン」という、刀と刀がぶつかり合った音とか、茶碗が割れる音、木の枝が折れるような音である。あるいは、夕方、湯飲みにお茶を入れて仏壇の中に置いておくと、なぜか次の日の朝には湯飲みがカラになっている。

彼女はまだ高校生。気味が悪くてたまらなかったが、住むところはここしかないからしょうがない。


そんなある日、彼女は夜中、トイレに起きた。トイレまで行くには、その仏壇のある部屋の前を通過しなければならない。イヤだなぁ、とか思いながらこわごわと廊下を歩いていると、例の部屋の中から何か足音が聞こえる。「ミシッ、ミシッ」という、誰かが歩いているような音である。

「だれ?」と思い切ってふすま越しに声をかけてみたが何の返事もない。だが、足音はまだ聞こえてくる。確かに誰かが部屋の中を歩いているようだ。猛烈に怖かったが、思い切ってふすまを開けてみることにした。

両手で「えい!」っと思い切りふすまを開け、すぐに中に走って、パッと部屋の電気をつけた。・・・誰もいない。だが、まだ「ミシッ、ミシッ」という音は聞こえてくる。


ところでその部屋は畳の部屋ではあったが、畳の上にじゅうたんが敷かれてあった。彼女が回りを見渡してみると、はっと気づいた。

じゅうたんに、人間の足を形をした「へこみ」ができている!

しかも、その「へこみ」は右、左、と、規則正しく移動している。移動しているというよりも、その「へこみ」は、まっすぐ彼女のほうに向かって歩いてきている! そのへこみが移動するたびに「ミシッ、ミシッ」と音がしているのだ。まるで透明人間が歩いて歩いているかのように!

彼女は硬直して声も出せない。だが、その「へこみ」は音をたてながら、ゆっくりと彼女の方に向かってくる。そして・・彼女の正面で、まるで向かい合うかのように、ピタッと止まった。

「ひっ・・」恐怖のあまり、彼女はそのまま気を失った。気づいた時には朝がきていた。仏壇の湯飲みは、やはりカラッポになっていた。


すぐに両親に昨日あった出来事を話すと、父親と母親も少なからず同じようなことを体験していたようだ。

大急ぎで引っ越しの準備をし、彼女の一家はすぐにその家を出た。その家で昔、何があったのか、あの足跡は何だったのか、そんなことはどうでもいい。とにかく一刻も早くこの家を出たかった。

幸い、近くによいところが見つかり、家族はそこへ引っ越すことができた。引っ越した後でも彼女は時々「その家」の前を通りかかる。今では、新しい人たちが住んでいるみたいだ。でも、今住んでいる人たちは本当に大丈夫なんだろうか。