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No.19 老婆の住む家

フリーのカメラマンをやっている川村さん(仮名)は、ある時京都の無人の村を訪れた。この村にはなぜか人が誰も住んでいない。にも関わらず、それぞれの家には家財道具が残されたままで、中にはついさっきまで誰かがいたかのように茶碗を洗ったまま縁側に置いてある家さえある。

この村までバスで来た川村さんは、着くと同時にあちこちで写真を撮り始めた。夢中になって撮っているといつの間にか夕方になってしまった。そろそろ帰ろうと思ってバス停に行ってみると、すでに最終のバスは出た後。

これは困ってしまった。こんなところに取り残されたのではたまらない。辺りをよく見渡すと、ちょっと離れたところに一軒だけ明かりのついている家があった。この村の管理人の家かもしれない。


とりあえずその家しか頼るところがない川村さんは、その家を訪ねてみることにした。「ごめんください。」と言って声をかけると中から一人の老婆が出てきた。

事情を話して「何とか一晩だけでも泊めてもらえませんか」と頼んでみると「泊まるだけならええよ・・。」と消えるような声で老婆は答えた。

何とか今晩はしのげそうだ。一部屋借りて布団に横になる。隣の部屋には老婆が寝ている。だが隣の部屋が妙に静かだ。一人の人間がいるはずなのに全く物音がしない。覗いて見るのも失礼だと思い、川村さんはそのまま寝てしまった。


夜中ふと目が覚めた。トイレに行きたくなったのだ。時計を見ると午前3時。と、その時隣の部屋から「カタッ」と物音が聞こえた。さすがに何か気になった川村さんはそっとふすまを開けて覗いてみた。するとその部屋にいるはずの老婆の姿はどこにもない。かわりに扉の開いた小さな仏壇が一つあるだけだ。

ふすまを開けてこわごわとその部屋に入ってみると、仏壇の中に一枚の写真が飾られているのを発見した。・・が、次の瞬間、川村さんは恐怖で凍りついた。その仏壇の中の写真はまぎれもなく、さっきのあの老婆だったからだ!


「うわあぁぁーっ!!」恐ろしくなってすぐに家を飛び出した。無我夢中で走っているといつの間にかバス停に来てしまった。そして川村さんがバス停に着くと同時にバスがやって来た。

「こんな時間になぜバスが?」と一瞬思ったが、迷ってる暇はない。すぐにバスに飛び乗った。やっと落ち着いてバスの中を見渡すと、一番前の席にはあの老婆が座っており、じっとこっちを見ていた。

「うわぁーっ!」川村さんはまた悲鳴をあげた。他の乗客が心配して近寄ってくる。
「あ・・あそこに座っている人が・・。」と、言葉にならない言葉を発して川村さんは一瞬目を閉じた。そして目を開けるとそこには老婆も乗客も、そしてバスそのものさえなくなっており、川村さんは村の道路に一人でぽつんと立っていたという。


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