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No.26 王女エミリーの残虐なる復讐

今から500年以上前のスコットランド。この国にあるダンスタフニッツ城の王女である18歳のエミリーは、当時スコットランドの王との結婚が決まっており、幸せな日々を送っていた。すでに結婚前に王との間に3人の子供を産んでいたので、この結婚はほぼ確実なものと誰もが思っていた。

だがスコットランド王の側近であるクリットン公爵は、自分の娘を王と結婚させようと思っていたために、エミリーが王と結婚するのだけはどうしても阻止したかった。そこでエミリーの悪口をさんざん王に告げ口し、エミリーとの結婚をやめさせ、ついには自分の娘とスコットランド王を結婚させることに成功した。

ここまではよかったが、スコットランド王は、今度はエミリーを、自分の妻ではなく娘としてこの城におきたいと言い出したのだ。そんなことをすれば、あかの他人であるエミリーも、この国で権限を持ってしまう。


どうしてもエミリーが邪魔なクリットン公爵は、エミリーとその一族を皆殺しにするように部下たちに命じた。特にエミリー本人の殺し方に至っては極めて残虐で、泣き叫ぶ子供たちの前でエミリーをさんざん犯し、その後で子供たちを生きたまま燃えさかる暖炉の中に投げ入れ、そしてさらにその後にエミリーを殺す、というむごいものであった。

死に行くエミリーが、いかにすさまじい憎しみをいだいてはいたかは、想像に難(かた)くない。

それから間もなくして、クリットン公爵の城では異変が起こり始めた。兵士たちが原因不明で次々と変死し始めたのだ。「これはエミリーの復讐に違いない」という噂が城の中に流れ始めた。

あの時の虐殺に加わった・加わらない、直接手を下した・俺はやってない、などの理由から兵士同士でケンカが始まり、ケンカは殺し合いに発展し、またたく間に100人以上の兵士たちが死んだ。
一族を直接襲った兵士は、自分で自分の身体に剣をつき立てて死んでいった者もいるという。


そして次に起こった異変は王妃・・つまりクリットン公爵の娘が城の壁から転落死するという事件であった。王や侍女たちの見ている目の前で王妃は、すさまじい叫び声をあげながら突然高い壁の上から身を投げたのだった。

その時多くの者は王妃の後ろに、血だらけのエミリーが立っていたのを目撃している。

相次ぐ怪現象に恐怖におののくクリットン公爵は、げっそりとやつれてしまった。だが、事件の首謀者であるクリットン公爵はまだ生きている。彼自身にエミリーの復讐はいつ来るのか、と部下たちは内心思っていた。


そして1453年のある日、その日は訪れた。多くの人の目の前でクリットン公爵は信じられないような死に方をしたのだ。罪人を処刑する前にクリットン公爵はギロチン台の前で罪状を読み上げていたのだが、突然誰かに後ろから突き飛ばされるように身体が弾け飛び、そのままギロチン台への階段を登り始めた。

いや、彼自身の意思で登っているのではない。手足をばたつかせながらしきりに抵抗している。だが、見えない何者かが後ろから彼を押し上げているのだ。

そしてそのままあお向けにギロチン台に寝ころがった。クリットン公爵は必死でわめいている。まもなく誰も手を触れていないのにギロチンの刃はすごい勢いで落下し、クリットン公爵の首は跳ね飛び、10メートルほど先へ転がった。

この事件がエミリーの復讐であることは誰も疑うことはなかった。


また、エミリーとの結婚を破棄したスコットランドの王はそれからほどなくして、黒焦げの幼児の死体を抱いては城の中をうろつく、という場面がたびたび目撃されるようになった。相次ぐ恐怖で廃人同然になってしまい、最終的には何者かによって暗殺された。

また、残されたクリットン公爵の身内の者に対してもエミリーの復讐は行われた。ウォルター・クリットンは結婚式の当日行方不明となり、あのダンスタフニッツ城の、あの暖炉の中に頭を突っ込んで死んでいるのが発見された。彼の両目は暖炉の火かき棒でえぐられていたという。

クリットン一族は全部で34人の男性がいたが、彼らは皆、結婚が決まると変死するということが続いた。エミリーの復讐は、クリットン一族を根絶やしにするまで終わることはないのだろう。