Top Page  心霊現象の小部屋  No.32  No.30


No.31 ひき逃げされた少女

北九州市内のある駐車場で、ある朝、6歳の少女の遺体が発見された。その少女は前日から行方不明になっていた少女で、遺体の外傷から見て、車に轢(ひ)き逃げされた上に、ここに捨てられたのは歴然としていた。

そして同じ北九州州市内。ここに住む39歳の木山庄治さん(仮名)には二人の娘がいた。歳は11歳と8歳。その日木山さんは朝早く起きることができたので、二人の娘を車で学校まで送っていくことにした。

だが、車を走らせていると、突然長女の方が「お父さん・・、足が・・、足が痛い・・。」と、突然苦しみ始めたのだ。そして間もなくして次女の方も苦しみを訴え始めた。なぜか二人とも足が痛いという。

「痛い・・痛いよ・・、お父さん・・。」苦しみ方が異常だったので、木山さんは学校へ着くなり、すぐに医務室へ連れて行った。だが医務室ではどうにもならない。医務室の先生の勧めもあって、今度はすぐに総合病院へ連れていくことにした。


だが総合病院で診てもらっても、原因らしい原因が分からない。とりあえず考えられる処置だけして、後は自宅で様子を見ようということになった。自宅に帰ってからも、娘たちの容態はよくなるどころか、逆に悪化し始め、今度は二人とも熱が出てきた。熱もひどくなる一方で、手当ても甲斐なく苦しみは一向に収まらない。

足の方もまだ痛いらしく「痛いよ・・。足が痛い・・。」と、二人ともうわごとのように言っている。たがしばらくすると次女の方が「お父さん、靴が・・靴が履(は)きたいよ・・。靴がないよぅ・・。」と、変わったうわごとを言うようになった。

「このまま放っておいては万が一のことがあるかも知れない。」そう思って木山さんは、今度は別の病院へと連れていってみた。しかしこの病院で診てもらっても、はっきりしない。

医者の方も「靴が履きたいとは、どういう意味なんでしょうね。もっともそれが分かったところで熱が下がるとは思えませんが・・。」と、この原因不明の熱と足の痛みにはお手上げの状態だった。


だが、この繰り返されるうわごと・・。木山さんには心当たりがあった。

「まさか、そんな・・。」そう思って木山さんは自分の車を調べてみることにした。車の下を除き込むと、そこにはやはり子供ものの新しい赤い靴が、部品と部品との間にはさまっていた。

そう、あの6歳の少女の轢(ひ)き逃げ事件の犯人は木山さんだったのである。前日の夕方、誤って少女をはねてしまった木山さんは恐ろしくなり、そのまま少女の死体を車に乗せ、市内の駐車場まで運んで、そこで捨てたのだ。少女は足の骨を折り、頭を強打して即死の状態だった。

車の下にはさまっていた赤い靴は、少女が2日前に父親に買ってもらった靴で、とてもお気に入りのものだった。買ってもらったばかりの赤い靴を履いて遊びに出て、そして木山さんの車にはねられたのである。

うわごとを繰り返す娘たちを見て、木山さんは自首する決心がついた。これも不慮の死を遂げた少女の思いがなせる業であろうか。だが自首はしたものの、結局次女の方は、この時の熱が原因で脳に後遺症が残り、精神に異常をきたす結果となってしまった。誰の顔を見ても「靴が履きたいよ。靴がないよ。」と繰り返すようになってしまったという。