Top Page  心霊現象の小部屋  No.88  No.86


No.87 オーストラリアで起こったポルターガイスト事件

1998年1月、オーストラリアのハンプティー・ドゥーという小さな町に住むアギウス夫妻の家で異変が起こった。その日は曇り空で、遠くの方で雷が光っていた。家のポーチにいたアギウス夫妻は突然、頭や肩に何か小さな物が落ちてきた衝撃を感じた。

「イタッ」「何だ、これは!」

夫妻に降り注いだのは小石だった。頭上からバラバラと大量の小石が降ってくる。落ちてきた小石が次々と足元に転がっていく。小石の直径は平均して1.3cmほどである。

びっくりして訳が分からない夫妻は、とにかく家の中へ逃げ込んだ。すぐにドアも窓も閉め切ってカギをかけた。しかしそれでもおさまらない。家の中にいるのに、次々と上から小石が降ってくるのだ。

「どうなってるんだ、一体!」

不思議に思って夫妻が上の方を見上げると、小石は天井付近で突然現れ、それが落ちてきていることが分かった。

「そんな馬鹿な・・!」
何もない空間から次々と小石が物質化して現れてくる。この怪奇現象に夫妻は恐怖したが、自分たちではどうしようも出来ない。

左の2人がアギウス夫妻
そのうち降ってくるのは小石だけではなくなった。ナイフやガラスの破片、電池、スパナなどが同じように天井の下に突然出現しては落下してくる。やっとこの現象がおさまった時には、床は落下物で一通り埋め尽くされたような状態だった。

これをきっかけとしてこの後、こういった現象が夫妻の家でたびたび起こるようになっていった。

しかし気持ちは悪いが、住み慣れたこの家を出て行きたくはない。奇怪な現象といっても毎日起こるわけではなかったので、夫妻はいつか何も起こらなくなるだろうという希望のもと、この家に住み続けた。


だがそのうち落下物に加えて別の現象が起こるようになっていった。床に落ちた小石が並んで文字を形作るようになったのだ。ますます気味の悪さがエスカレートしていく。

それらの文字は「HELP」「FIRE」「SKIN」「TROY」と読めた。そのうち小石たちは文字だけでなく、十字架や三叉(みつまた)の槍(やり)なども形作るようになった。

アギウス夫妻には「TROY(トロイ)」という名前の友人がいたが、彼は交通事故に遭(あ)い、車の中で焼死するという最後を遂げている。

「まさかトロイの霊がここにきているのか?」


この怪奇現象に霊の存在を感じ、ますます恐怖したアギウス夫妻は神父に頼んでお祓(はら)いをしてもらうことにした。

教会に電話してこれまでの経緯を説明すると、トム・イングリッシュ神父がうちに来てお祓(はら)いをしてくれることになった。これで何とかなってくれれば、という期待のもと、約束の日になり、イングリッシュ神父がアギウス夫妻の家を訪れた。

しかしイングリッシュ神父はいきなり洗礼を浴びることとなった。神父がアギウス夫妻の家の中に入ったとたん、今度は薬のビンと弾丸が神父に向かって降りそそいだのだ。

イングリッシュ神父も初めてのことでびっくりしたが、必死に祈りを捧げ、聖水を家中にふりまいた。お祓(はら)いをしている間は何も起きないし、これでこの奇怪な現象もおさまるのではないかとアギウス夫妻も大分安心してきた。

しばらくしてお祓(はら)いも終わり、神父は帰っていったが、帰ってからが逆に事態はひどくなってしまった。

窓ガラスが突然何枚も粉々に砕け散り、神父が置いていった聖書や十字架が空を飛び、壁に叩きつけられる。ドアが勝手に開閉したり、物が宙を飛び交うという現象が始まった。

完全にポルターガイスト現象である。大きな音が家の中に響き渡り、夫妻はその日はほとんど眠ることが出来なかった。

まるで家の中に霊がいて、夫妻の行動を監視し、神父を呼んだことに対する復讐をしているかのようだった。


一向におさまらない現象にアギウス夫婦は困り果て、イングリッシュ神父以外にも二人の聖職者にお祓(はら)いを頼んだ。しかし彼らもまた、この現象を静めることは出来なかった。一人の聖職者は、突然胸の前にナイフが出現し、あやうく胸に突き刺さるところだったが、直前でナイフの飛んでくるスピードが落ちて何とか助かっている。

もう一人の聖職者は、祈りを捧げている際中、見えない力によって右腕を背中の方にねじ曲げられ、そのまま床の上にうつぶせに押し倒された。

アギウス夫妻の家のことはある程度近所に噂が広まっていたので、お祓いの時には見物人が集まってきており、聖職者たちが受けたこれらの現象は、多くの見物人の前で起こったことである。


トニー・ヒーリーの滞在中に空間から降ってきたもの。
種類にして30種類以上の物質。
アギウス夫妻の家のことは口から口に伝わり、随分と有名になっていった。そのうちにオーストラリアの超常現象研究家・トニー・ヒーリーもこの噂を聞きつけ、アギウス夫妻に家を調査させて欲しいと連絡を取ってきた。

ワラにもすがる気持ちでアギウス夫妻は調査を承諾し、トニーは5日間の間、この家で宿泊して調査を行うこととなった。

研究家が来ていても、いつもの現象は当たり前のように起こった。トニーは頭から様々なものを浴びることとなった。それは弾丸やナイフ、小石、スパナ、電池などで、同じように天井の下の空間で突然物質化して落下してくる。
トニーが調査中に落ちてきたものの種類は30種類を超えた。


また、話を聞きつけたのは研究家だけではなく、テレビ局も取材にやってきた。

シドニーのテレビ局「チャンネル7」のワイドショーがアギウス家を取材に訪れた時にもこの現象は相変わらず起こったが、撮影は困難だった。

小石やナイフが飛び交っている方向へカメラを向けると、とたんに騒ぎがおさまるのだ。そしてカメラの向いていないところで物が飛び交い始める。

結局撮影出来たのは、銃弾が落下してきた場面と食器棚の裏側からプラスチック製のフタが飛び出してきた場面、電子レンジの上に置いてあった哺乳(ほにゅう)ビンが突然落ちた場面の3つだけだった。

撮影の間、床には小石のメッセージも現れていた。「NO CAMERA」「NO TV」といった文字が小石によって形作られたのだ。カメラやテレビに映すなということであるが、まるでアギウス夫妻やテレビ局の行動を全部監視しているかのようなメッセージである。

アギウス夫妻にとってはごく些細な場面しか撮影はされなかったが、このチャンネル7の放送の反響は大きく、高い視聴率となった。一躍この家はオーストラリア中で有名となり、多くの取材が訪れるようになった。


前述の超常現象研究家・トニー・ヒーリーの調査によれば、この家でこういった現象が起こり始めたのはアギウス夫妻が引っ越してきてからであって、その前の住人の時には何も起こっていないことが分かった。

また、アギウス夫妻がこの家の前に住んでいたバチェラーという町でも、夫妻の家のドアにたびたび小石がぶつかってくるという現象があったという。つまりアギウス夫妻は引っ越しても、その引越し先(この家)でまたポルターガイスト現象に遭っているのだ。そして今回の家が特にひどい。

1998年5月、ついにアギウス夫妻は引っ越してしまった。奇怪な現象もその原因だが、たびたびの取材や世間から好奇の目で見られることに耐えかねたようだ。しかし奇怪な現象が始まってから4ヶ月間住み続けたことになる。

アギウス夫妻の引越し先は定かではないが、その引っ越した先でまた同じ目にあっているのか、おさまったのかは不明である。