Top Page 心霊現象の小部屋 No.106 No.104
ここで人が死んだ・殺されたという思いが、影や樹木、ただの通行人を幽霊と勘違いさせてしまう。 しかし稀(まれ)に、その逆パターンもある。事件が発覚する前からその付近で「幽霊を見た」という人が続出し、ある日何かのきっかけで死体が発見される、という場合である。 こういった事例は先入観ということでは説明しきれないため、心霊事件としては極めて信憑性(しんぴょうせい)の高い、一流の事件と言える。 新聞でも取り上げられた「秩父(ちちぶ)貯水槽殺人事件」はその代表的な事件であった。 事件は、埼玉県にある永福寺の近辺で起こった。この「永福寺」という寺は、秩父霊場二十二番札所としても知られており、霊場巡りをする人たちが立ち寄る寺でもある。 1976年(昭和51年)ごろから、この近辺に幽霊が出るという噂が広まり始めた。あるタクシー運転手が、深夜にこの辺りを走っていた時、道端にうずくまっている女を見つけ、具合でも悪いのかと車を停めて近寄ってみると、女の顔が腐ったようにドロドロに溶けており、びっくりして逃げ出すという事件があった。 同じような時期、このタクシー運転手だけではなく、実際に幽霊らしきものを見た、という人が何人も現れている。 翌年の1977年(昭和52年)になると、騒ぎはますます拡大し、「自分も顔が溶けた女を見た」という人が後を立たなかった。寺であるから確かに墓場はあるし、幽霊話が出ても不思議ではないのだが、顔が溶けた女という具体的な証言が多いのが不思議な共通点であった。 1977年(昭和52年)12月1日、永福寺の門の近くの山道で「おばけがでる」とチョークで書かれた30cmくらいの石が発見された。しかもこの石は誰もいじってないのに、いつの間にか移動しており、毎日、場所が変わっていたという。 そしてその一週間後である12月7日、事件が発覚した。 この石の近くには、防火用の貯水槽があるのだが、地元の消防団の男性がたまたま消防の業務の一環で、この防火用貯水槽のフタを開けてみた。 その瞬間、異様な臭(にお)いが貯水槽の中から漂ってきた。 中を見てみると、水の中に人間の背中が浮いている。 「死体だ!」と大変な騒ぎになった。 引き上げて地面に横たえてみると、顔は腐ってドロドロに溶けており、この近辺で起こっていた「顔が溶けた幽霊」の証言にまさにピッタリであった。 検視の結果、奥歯の治療跡から身元が判明し、以前から行方不明になっていた21歳の女性「Yさん」だということが分かった。彼女は妊娠していた。 この貯水槽が、最後に点検されたのは、約一年前であり、死体は点検の直後に捨てられたものとみられた。また、幽霊騒ぎが起こり始めたのも、死体が捨てられた時期と一致していた。 すぐに殺人事件として捜査が開始されたが、捜査開始から3日後、この女性と付き合っていた男性が判明し、問い詰めたところ、犯行を自供したために即座に逮捕された。 捜査開始当初は、手がかりの乏(とぼ)しい事件として難航が予想されていたのだが、わずか3日で解決するという、予想外の展開となった。地元の人たちは、これも幽霊の仕業ではないかと噂した。 この話には後日談もあり、ジャーナリストの小池壮彦氏が2004年にこの地を取材に訪れた時、問題の貯水槽はすでに埋め立てられていたが、小池氏は被害者であるYさんの家を訪ねてみようと、事前に聞いておいたYさんの住所をナビに入力して車で出発した。 ナビの指示通り車を走らせていると、到着を知らせる電子音が鳴った。だが、そこは住宅地ではなかった。ある墓地の前だった。 まさかと思い、小池氏は車を降りてその墓地の中を調べてみることにした。ひょっとしてと思った通り、この墓地の中で、事件の被害者であるYさんが眠っている墓を発見したのだ。 まさにYさんの今の「住所」に案内されたということになる。この現象は、後に日本テレビのスタッフも確認している。 小池氏は、タクシーにも協力を頼んで、このことを試してみたが、やはり同じ結果となった。 Yさんが元々住んでいた家とこの墓地はずいぶんと離れており、地域も違う。ナビの誤差ということではない。いまだにYさんの魂は現世にいるのかも知れない。 Top Page 心霊現象の小部屋 No.106 No.104 |