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No.106 ノックしている相手に話しかける

韓国の、とある病院。

一人の看護師が、夜、部屋の中で書類業務を行っていた。彼は今日は夜勤だった。

病院の夜といえば、霊的な話が多い。誰もいないはずの部屋から足音が聞こえたり、窓に人影が映ったり、昨日亡くなった人と廊下ですれちがったり。

そういった話はこの病院でもちらほらと聞かれていた。そうした経験をした看護師は、決まって翌日になると、前夜の自分の恐怖体験をいろんな人に熱心に語っていた。


今日、夜勤の彼は、これまでにそうした経験は全くない。他の看護師の体験を聞いてもいつも適当に聞き流していたし、面白い話という印象しか持っていなかった。。

夜もふけて午前2時ごろ、彼のいる部屋のドアが「コンコン」と、ノックされた。

「はーい、どうぞ。」と彼は反射的に答えた。

どうぞと言ったので、てっきりドアを開けて誰かが入ってくるのかと思ったが、そのまま反応がない。

「そういえば、こんな時間に誰だろう?」

入院患者の人が具合でも悪くなって助けを求めに来たのかも知れない。不審に思った彼は、自分でドアを開けてみた。

誰もいない。

一瞬、これまでの、他の看護師から聞いた話が頭をよぎった。

「まさかな・・。」

ドアを閉めて再びイスに座ったとたん、またもや「コンコン」とノックが聞こえてきた。

今度は走って行って、思い切りドアを開けてみた。しかしまたもや誰もいない。あのわずかな時間に隠れるような場所もない。

ぞっとした彼はドアを閉めた。その瞬間またもや「コンコン」とノックされた。

背筋がぞくぞくしながら彼は思いきって、ドア越しに話しかけてみた。

「すいません、そこに誰かいるんですか?もし、いるんだったらまたノックしてくれませんか?」

「コンコン」


と返事が返ってきた。


声を震わせながら、また質問してみた。

「生きている人ですか?だったら2回ノックして下さい。そうでなかったら1回だけノックして下さい。」

「コン」

うわあぁぁっ!と小便ちびりそうになった。

「この病院で亡くなった人でしょうか?そうだったら2回、違うなら1回ノックして下さい。」

「コンコン」

「あなたは男ですか、女ですか?男なら2回、女なら1回ノックをお願いします。」

「・・・・・」

この質問には反応がなかった。

「あれ?世の中には男と女しかいないはず。それ以外の選択肢って何だろ?」

一瞬考えたが、ピンときた。

「あなたが1人なら1回ノックして下さい。2人なら2回ノックして下さい。」

相手は複数だから、男女の質問に返答しなかったのではないのかと思ったのだ。

すると次の瞬間

「ドカドカドカドカドカドカドカドカッ!!」

と、激しくドアを叩く音が無数に響いた。

「ギャーッッッ!!」

彼はそのまま気を失った。

目が覚めた時、自分も他の看護師と同様、出勤して来た医師や看護師にこの話を片っぱしから話して歩いたのだった。



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