Top Page 文書館 No.017 No.015
自分が昔いた会社の同僚で、こういう目にあった人がいる。 その会社の業務は、取り引き先を車でまわる仕事で、昼ご飯も車の中で食べることが多い。 その人がどこかの駐車場に車を止めて中で弁当を食べていると、「コンコン」と窓ガラスをノックする音が聞こえてきた。ふと横を見ると、ものすごく怖そうな・・例えようもないくらい怖そうな二人組が立っていた。 窓をあけると、「兄ちゃん、ちょっと道を訪ねたいんじゃが、ええか?」と言うので「別にいいですよ。」と言うと「じゃあ、ちょっと助手席に乗らせてもらうわ。」と言って、いきなり助手席のドアを開けられた。 「道を訪ねるのに何で助手席に乗ってくるのか?」と思ったが、その謎はすぐ解けた。でっかい手提げカバンを座席にドカッと置かれて「兄ちゃん、ワシら神戸から流れて来たんじゃがのぉ、ちょっとこれ、買(こ)うてくれいや。」と言う。 ちらっと中身を見ると、中にはエロビデオがいっぱい。「しまった!」と思ったが、もう遅い。(これはまだDVDが普及する前のビデオテープの時代の話) 「なぁ、ちょっとワシらの昼飯代に貢献していや。一本でええからよ。イヤとは言わんじゃろうのぉ。」 とても断れる雰囲気ではない。 「何ですか、これ?これを買えと言うんですか?一本いくらなんですか?」 「五千円じゃ。」 「五千円なんて持ってないですよ。今1500円しか持ってないですよ。」 「ウソをつくな!お前ちょっとサイフ見せてみぃや!」と言うので、 言われるままにサイフを出してみると、中には千円札が一枚と小銭がチャラチャラ・・。 「これだけか!わりゃええ加減にせえよ!」 「す、すいません。1500円でいいんだったら買います。」 「このボケが!しょーがねーなー。1500円に負けたるけぇ、一本買えや。」 「あ、いや、でもやっぱり僕、買わないです。」 「なんじゃとコラ!ここまできてそれで済むと思うとるんか!わりゃ殺したろーか!」 「か、買います買います!」 「おっ?そうかぁ?なんか悪いのぉ、無理矢理買わせたみたいで。」 そういう訳で1500円払った。「兄ちゃん、ジュースでも飲んで昼からも仕事頑張れよ。」と言うので「ジュースなんて買えませんよ、今1500円払いましたから。俺、あと80円しかないですよ。」と言うと、 「おっ?そうかぁ?じゃあこれでジュースでも飲めいや。」と言って100円返してもらった。少しは情けがあるみたいだ。そしてその二人は去って行った。 会社に帰ってから彼は全員の前でこの話をした後、「そーやって買ってきたのが、このビデオや。」と言って、そのエロビデオを誇らしげに全員に見せていた。 自分も見させてもらったが、ケースがプラスチックではなく、白い厚紙で、そのケースにチラシのようなものがセロテープでとめてあって、「定価25000円」と書いてあった。 「仕事中に、あり金全部突っ込んでエロビデオ買ってきたというわけですか。でも、今度から値切らずに、ちゃんと定価で買った方がいいですよ。」 と僕が言うと 「お前、ワシの話を全然聞いてなかったみたいじゃのぉ。」と言われた。 こういう訪問販売は、当たったら最後、逃げることが出来ない。 |