Top Page 文書館 No.021 No.019
平成7〜8年ごろの話。 「解体屋」という仕事がある。平たく言えばビルや家なんかをバラバラに破壊する、建設業とは反対のことをするような職業である。 ある日、ある解体屋の会社がいつものように仕事を受けた。 「家を新築するから元の古い家を壊して、サラ地にしてくれ。」というものだ。 社長以下、従業員は指定された日に現地に向かい、まずは注文通り、その家をバラバラにブッ壊した。家は木造で壊しやすかったし、作業用の機械もすんなりと入れるような場所だったので極めて簡単に一仕事終わった。 そして山積みになったガレキを片づけていると、後ろの方から突然一人の中年の男が走り寄って来て、いきなり 「ワシの家はどうなったんじゃー!」 と叫び始めた。 「なんでワシの家がバラバラになっとんじゃー!」 びっくりした従業員たちは、一斉に振り返り、「どうかされたんですか?」と、その変な男に一応聞いてみた。 その男の話を聞いてみると、驚くべき事実が発覚した。 どうやら壊さなくてはならなかったのは隣の家だったみたいだ。間違えて、まだ人が住んでいる家を、そこの住人が留守の間に全部破壊してしまったのだ。 何でも、その家は建て売り住宅で、全く同じ家が二軒並んでいたそうなので、ありがちなミスと言えばありがちなミスである。(そうか?) しかもその、家を壊されてしまった人には小学生の子供がいて、その子供は自分の家が壊されている間、解体作業を側(そば)でずっと見ていたという。 そして近所のお友達と一緒に、「ねーねー、僕の家がね、今バラバラに壊されてるんだよー!」と言いながらみんなで大笑いしていたという事実まで判明した。 損害賠償は五千万とか六千万とか。。。家を壊された人は激怒し、写真や思い出の品など、金に替えられないものもあるので、訴えると言い始めた。 その後どうなったのかは知らないが、賠償問題が発生したことだけは間違いあるまい。 |