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No.021 やり手のリサイクルショップ

あるカラオケ喫茶が、経営不振から閉店することになった。閉店するのはいいのだが、そこは借家だったので、当然全部片づけて出ていかなければならない。

店の中にはこれまで営業に使っていたテーブルやソファー、カラオケの機械などが膨大にある。これらの物も全部処分しなければならない。

これらの設備に、投資した金額は数年間で約五百万円。少しでも今後の生活の足しにしようと、経営者のママさんはリサイクルショップに電話をかけた。

「もしもしカラオケ喫茶の○○ですけど、もう店を閉めることにしましたので、お宅の店で色々と引き取ってもらいたいものがあるのですが・・。

カラオケの機械とか家具とか、とにかくお宅のお店で売れそうなものは全部引き取ってもらえませんか?」

「分かりました。ではさっそく明日にでもお伺いいたします。」

と、リサイクルショップも快く返事を返した。

「店の方は、もうカギをかけてあるのですが、明日は私、12時くらいにお店の方に行きますので、そのぐらいの時間に来てもらえませんか?よろしくお願いいたします。」

「分かりました。お伺いいたします。」

そして次の日、ママさんが約束の12時くらいに店のカギを開けに行くと、なぜかドアのカギはあいていた。昨日確かにしめて帰ったはずなのに。

不審に思って、すぐにドアを開けてみると、中はすでにもぬけのカラというか、これまで使っていた機材も家具もすべてがなくなっていた。

その上、壁に金具で固定されてあった大きな棚まで全部とり外され・・、とり外されたというより無理やり引きはがしたような跡があって、壁には、棚の残骸(ざんがい)の木片があちこちに残っていた。

さらに念のいったことに、カーテンも全部とり外され、蛍光灯も一本一本全て抜かれていた。スリッパもなくなっていた。


びっくりしたママさんは、すぐにそこのリサイクルショップに電話をかけた。

「○○ですけど・・、もう引き取りに来られたんですか?」

「はい、もう一通り全部回収して帰りました。」

「回収して帰ったって・・、ドアにはカギがかかっていたはずなのに、一体どこから入ったんですか?」

「裏の窓が開いていたのでそこから入りました。」

窓から入った・・?
リサイクルショップが引き取りに来たというより、暴徒の略奪に会ったという表現がピッタリの状況になっていた。おまけに畳の上も土足で歩いたらしく、グチャグチャ。

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「こんなことをされては困ります。」

「いや我々もこれが仕事ですから。」

後日、そのリサイクルショップの下っ端の人らしき人が、鑑定された金額を封筒に入れて持ってきた。封筒を開けると、中には二万円が入っていた。

五百万の設備投資が二万円。
その日の晩、ママさんはその二万円を持って飲みに行き、あっという間に使いきった。確かに生活の足しにはなったみたいだ。