Top Page 文書館 No.028 No.026
ある文房具屋さんは、とある生命保険会社に毎月、コピー用紙などの文房具を買ってもらっている。毎月、担当の人が配達しに行っているのだ。 だがある日、担当の人がいつものようにコピー用紙の束を持って行くと、そこの支店長が出てきて、もう来月から持って来なくてもいいと言う。もっと安く売ってくれる店を見つけたから、今後はそこで買うことにしたというのだ。 もちろん担当の人も、今まで通り買ってもらえるように、必死にお願いする。だが支店長の反応は冷たい。 「だから来月から、もう持って来なくていいと言ってるんだよ。お宅のは高いの!分かった?分かったら帰って帰って。」こんな調子である。 しようがない。これはもう、支店長を説得するには切り札を出さざるを得ない。 「あのー、こういうことを持ち出すのは気が引けるんですが、自分は個人的にこちらの会社の生命保険に加入しております。自分だけじゃなく、うちの社員も何人も入ってるんです。何とか『お付き合い』ということで、今後もうちから買っていただけませんでしょうか?」 そしてこの言葉に対して支店長の反応は・・。 「うちの生命保険に入ってるからって、それがどうかしたんか。」 切り札は簡単に却下されてしまった。内心ムカつきながら、諦めて帰ろうとした瞬間、同じ文具店の社員であるA主任がいきなり「こんちはー。」と言ってそこへ入ってきた。 「あれー? 主任、何でここに?」 と担当の人が聞くと、 「おぉ。妙な所で合うのぉ。今日は個人的な用事でちょっとな。」と言って主任はそのままカウンターに向かって歩いて行ってこう言った。 「すいません。自分、こちらの会社の生命保険と養老年金に加入している者なんですが、全部解約することにしましたので手続きをしてもらえませんか?」 「え!?」と受付嬢がちょっと驚く。すぐにさっきの支店長が出てきた。「あの・・解約とは・・うちの方で何か不手際でもありましたでしょうか?」 「いや、そういうんじゃないですけど、自分の友だちが別の保険会社にいまして、そっちの方に入ることにしました。」 「あ・・いやいや、解約されると損をするのはお客様の方でして・・。」 「はい。損してもいいです。解約して下さい。」 「いやいや・・しかしですねぇ・・。」 この支店長と主任のやり取りを見て担当の人は思った。これは今、自分が受けた、冷たい仕打ちとまるっきり逆のパターンではないか。 すぐに担当の人もこの話に加わってきた。 「自分もこちらの会社の生命保険、解約しますので僕の方も手続きして下さい。」 「えっ!?」さすがに支店長も焦って説得し始めた。だが二人はもう止まらない。結局押し切って解約に持っていった。 しかし保険会社の人もコピー用紙を断ったら、その場で生命保険を二件と養老年金を一件解約にされ返すとは夢にも思わなかったんだろう。この戦いは文具店の勝利に終わったようだ。 |