Top Page 文書館 No.035 No.033
平成10年ごろ、自分が当時いた会社で、上司の結婚式に出席したことがある。 この結婚式の余興で、自分の同僚である、ある19歳の男の子が歌を歌うことになっていた。なっていたと言うより、本人が「歌わせてくれ〜、歌わせてくれ〜。」とお願いしまくって歌うことになったらしい。 本人もかなりやる気満々で、一ヶ月前から振り付けの練習をしたという。そして結婚式の当日。相変わらず彼は燃えていた。 しかし、披露宴の会場に入った瞬間、彼は「あ〜、急に緊張してきた。この中で歌うんですか〜?」「恥ずかしー」とか言い出して、料理が始まるとすぐにビールをガブ飲みし始めた。緊張をアルコールで和らげようとするのは誰しもが考えることである。 でも、彼の場合は普段、ほとんど酒を飲んだことがない。なのにビールをかなり飲んだ後、ウイスキーのダブルを注文して、その後ロックまで飲み始めた。みるみる酔っていくのが誰の目から見てもはっきり分かる。 何がおかしいのか分からないが、ケタケタケタケタ笑い続けている。他の人が祝辞を述べている間、「そうだー!」とか「がんばれー!」とか席に座って大声を出す。 自分は彼の隣の席に座っていたのだが、酔った勢いでこっちによりかかってきたので、少しよけたら彼はそのまま椅子からころげ落ちてしまった。 椅子にはい上がろうとしても足下がフラついていてなかなか座れない。やっと座った後、こんどはテーブルをゆすり始めた。何人かでテーブルを抑える。その後、また椅子から崩れ落ちる際に、今度はビールをひっくり返してしまった。 かなりヤバイ状況・・。こんなので歌が歌えるのだろうか。しかし式はたんたんと進み、彼の歌の番が回って来てしまった。そして、名前をコールされた時・・彼は既に立てなかった。 「キャーハッハッ、うったなんか歌えましぇ〜ん!!」 と、天井を仰いで叫んだ後、また不気味な笑いに入る。ケタケタと笑い転げている彼を、自分ともう一人の男で支えてステージまで連れて行こうとしたが、完全に歩けない状態で、そのまま床に崩れ落ちてしまった。 「ちょっと酔われているようですので、次の方から・・。」といったアナウンスをしてもらって、しょーがないからこいつの歌は飛ばしてもらった。 ここで済めばまだよかったのだが、みんなで会場の外に連れ出した後、彼はそのまま廊下で寝てしまった。 仰向けで寝ていると、次の瞬間、彼は突然口を抑えて「うおぇっ!」と叫んだ後、まるでホースから水が出るかのように垂直方向にゲロを噴出してしまった。 だが、生き物の本能だろうか。彼はとっさに首を横にひねり、ゲロが自分の顔面に戻ってくるという事態だけは回避したようだ。しかしその代わり、式場の廊下にはゲロの水たまりが出来てしまった。ちなみに式場の廊下は、じゅうたん張りであった。 ちなみにこのゲロを吐く瞬間は、見事にビデオに納められた。と言うより、廊下で寝ているシーンを撮っていたら突然吐いたと言った方が正しいが。 しかし彼は起きあがり、ゲロにまみれた格好で、再び披露宴の会場に入ろうとしている。このまま彼をまた会場に入れたら、完全に変質者の乱入になってしまう。何人かで取り押さえ、どうにかこうにか建物の入り口付近まで引っ張って来た。 しかしここで彼が突然暴れだした。何がしたかったのかは分からないが、たまたま近くにあったスチール製のロッカーの、壁側の部分に手を突っ込んで、叫び声と共に思いっきり引っ張ったのだ。 要するにロッカーを倒したかったらしい。 次の瞬間、このロッカーは見事に倒れてしまった。その際に一人、ロッカーの下敷きになってしまった。下敷きというと大げさだが、しゃがんだ体勢のまま、背中でロッカーを支えるハメになってしまったのだ。 そして彼はここでとうとう力尽き、そのまま眠りに入った。みんなでロッカーをもとに戻した後、四人で彼の手足を一本ずつ持って、ちなみに自分は左手を持ったが、やっと車に押し込み、一区切りついた。なんなんだこの人は。 結婚式でここまで乱れる人は初めて見た。はっきり言おう、サイテー。 |