Top Page  心霊現象の小部屋  No.50  No.48


No.49 料金の請求

深夜の京都市内。あるタクシーが病院の前を通りかかると、一人の若い女性が手をあげた。乗せてみて行き先を聞くと随分と遠い。こんな夜中にあんな遠くまで行くのもちょっと不思議に思ったが、到着するまでの時間もかなりあるので少し話しかけてみた。

「具合の方はもうよくなったの?」とか、「あの辺は今、工事やってて・・」などと、とりとめもないことを話しかけてみたが、女性はすこし微笑んでうなずくだけで返事はあまりない。

やつれた感じで元気もなく、どうやら退院して家に帰る様子ではなさそうだ。途中から道案内をしてもらって、やっと女性の家らしきところへたどりついた。


「すいません、私、お金を持っていないので家から取ってきます。少しここで待っててもらえませんか?」

そう言って女性は家の門から庭の方へと入っていった。運転手も言われるままに待っていたのだが、一時間経っても女性は出てこない。これは無賃乗車をやられたのかと思い、いい加減待ちくたびれて、家の方へ請求に行くことにした。

女性が入っていった門から庭の方へと入っていくと、なんとこの家ではお通夜をやっていた。悲報を聞いた親族たちが多く集まって悲しみに暮れている。

「なるほど。入院中していたのに、誰かのお通夜があるからここに駆けつけてきたのか。」
事情は分かったが、こういう雰囲気で料金の請求をするのも心苦しい。しかし、これも仕事である。


この家の奥さんらしき人を見つけて、○○の病院の前からここまでお連れして・・などの事情を話してみると、ハッとしたような顔になり、その女性はどんな感じの人でしたか?と、その奥さんはしきりに聞いてきた。

「身長はあまり高くなく、細身でちょっとやつれた感じで、髪は肩のあたりまであるストレートで・・」などと運転手が先ほどの女性の特徴を言ってみると、

「それはもしやこの娘ではありませんか?」
と、祭壇の方を指さした。

祭壇の上には遺影が飾ってあり、その遺影の中に入っている写真は、さっきここまで運んできた女性そのものだった。聞けばつい先ほど、病院で亡くなったという。

結局遺族の人に料金は支払ってもらったが、その運転手もその後どうやって帰ったか覚えてないほど気が動転し、それからはその病院の前を避けて通るようになったという。