Top Page  心霊現象の小部屋  No.64  No.62


No.63 布団の横で踊り狂う

田辺信夫さんは、地元の高校に通う普通の高校二年生である。彼には、幼い時からとても仲のよい友達として「良雄君」という同級生がいた。だがこの親友である良雄君は、とても気が弱く、学校でもいつもいじめの対象になっていた。田辺さんも、よく良雄君をかばったり相談にのってやったりしていたのだが、なかなかいじめからは抜けきれない。

その日も二人は一緒に帰ったのだが、今日は良雄君は一段と深刻な顔をしていた。聞けば、明日までに五万円持ってこなければ、裸にして校庭の木に縛りつけてやる、と脅されているらしい。


「そんなお金、渡すことないよ。俺、明日、そいつらと話してみるからさ。先生にも明日、一緒に相談に行ってみようよ。」
と、田辺さんが言うと、

「うん・・、でも・・持って行かなかったら、これからもどういう目に合わされるか・・。」
「一回渡したら、また次も『持って来い』って絶対言ってくるよ。とにかく明日、先生に相談してみようよ。」
そう言ってとりあえず、二人は分かれ、それぞれの家に帰った。


そしてその日の夜。
深夜二時をまわったころ、布団に入っていた田辺さんは、何かの物音でふと目を覚ました。何か音楽のようなものが聞こえる。ドンドコ ドンドンドンという太鼓の音と、ピーヒャララという笛の音。

「何だ?こんな時間に・・。祭りでもやってるのか?」
天井を見ながらそう思った瞬間、布団の横で何かが動いている気配を感じた。その方向に目をやると、そこにはなぜか良雄君がいた。
ここは田辺さんの部屋であるにも関わらず、良雄君が勝手に入ってきているのだ。


しかし部屋の中の良雄君は普通とは思えないような格好をしていた。服を脱いでパンツ一枚になり、顔にはプロレスラーのようなペイントをし、身体中にトーテムポールのような異様な模様が描かれている。

その姿で布団の横で激しく踊っている。それも盆踊りのようなゆったりとした踊りではなく、全身を激しく動かし、手足を大きく振りながら、狂ったように踊っている。

「よ・・良雄!お前、何やってんだよ・・!」
田辺さんが問いかけても全く聞こえないのか、必死の形相をしてそのまま踊り狂っている。

時間にしてほんの2〜3分くらいだろうか。突然良雄君は足元から急に透明になり、そのまま頭まで透明になって、すーっと消えてしまった。良雄君が消えると同時に太鼓と笛の音も聞こえなくなった。


「何だったんだ・・今のは・・あれは確かに良雄だったよな・・。」
そう思っていたところへ、今度は廊下を走る音が聞こえてきた。「信夫!信夫! 起きてる!?」 母親の声だ。

ふすまを開けると、母親が真剣な表情をして入ってきた。
あんたとすごく仲のよかった良雄君っているでしょ? 今連絡が来たんだけど、あの子、家で首吊って自殺したんだって!」
「えっ!?」

では、さっきのは良雄君が最後の別れに現れたのだろうか。それにしてもあの身体中の模様と踊りはどういった意味があるのか、田辺さんには理解出来なかった。