その4
前回の続き
「飲み薬の他にも、貼り薬、塗り薬…各種取りそろえてありますから」
「…どこに?」
「もちろん、ポケットの中です」
「どうやったらそんなに入るんだ…」
「私のポケットは宇宙です」
確かに、そうかもな。
「今の台詞、ちょっとかっこいいですよね?」
「パクリだけどな」
「うわっ、ひどいですよ。これでも一生懸命ドラマを見ながら考えたんですから」
なんか違わないか?ドラマの見方。
バニラエッセンスの魔術師
「とりあえず、何か食べるか?」
「えっと…そうですね…」
小さな口元に白い指を当てる。
「やっぱりお腹すきましたから…よろしくお願いします」
「じゃあ、また学食行ってくるから何か欲しいものを言ってくれ」
「それでは基本ということでバニラをお願いします」
「…分かった、買ってくる」
・
・・
「買ってきてやったぞ」
そう言って俺は栞にアイスを手渡す。
「ありがとうございます」
嬉しそうにアイスクリームのカップを受け取って、
そしてこの前並んで座った場所の雪を払いのける。
「…頭が痛い」
俺は平然とアイスを食べてる栞の方に顔を向けた。
すると栞は、なにやらアイスを睨むように見ている。
「…変だ」
小さく呟いた。
「味が変わった…これはどういうことだ?」
まるで男のような女の子らしからぬ口調である。
「栞、どうかしたのか?」
「あっ、いえ、なんでもないです。最近の事件ですこし敏感になってたみたいですね」
「そうか、ならいいんだが」
たぶんあいつと始めて会ったのはこの時だったんだろうが、そのころの俺はそれに気づくことはなかった。
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