お文の魂・・・もうあの家にはいられません、と離縁を望む女がみたのはお文という女の幽霊?
石灯籠・・・行方不明になった娘が戻ってきたと思ったら、母親を殺した!石灯籠に残るしるしに半七は何を見た?
勘平の死・・・素人芝居の舞台で勘平が腹に突き立てたのはすりかえられた本物の刀だった。
湯屋の二階・・・毎日必ず湯屋の二階にやってくる二人連れの侍の正体とは?
お化け師匠・・・養女に冷たい仕打ちをした踊りの師匠が、蛇にくびり殺された。
半鐘の怪・・・おのずからじゃんじゃん鳴り出す半鐘には一体どんな謎が秘められていたのか。
奥女中・・・若い茶屋娘が時々影を隠す?娘に話を聞くと、どことも知れぬお屋敷に連れ込まれるのだという。
帯取りの池・・・言い伝えのとおり、帯取りの池に帯が浮いた。やがて、その帯の持ち主が死体で発見される。
春の雪解・・・せっかくのお得意を振り切って逃げる按摩。その得意先では、何故か妙な心持がして気味が悪いのだ。
広重と河獺・・・ある朝、お旗本の屋敷の屋根に置かれた少女の死体は、一体どこからやってきたのか?
朝顔屋敷・・・聖堂での素読吟味の行われる日の朝、お旗本の嫡男が、お供が目を離した隙に突然姿を消した。
猫騒動・・・猫婆と呼ばれる異常な猫好きの母親と、孝行息子の二人暮しの家で、ある日母親が殺されてしまった。
弁天娘・・・奇妙な病気で死んだ奉公人は、死ぬ間際に、お店のお嬢さんに殺された、と言い残したという。
山祝いの夜・・・箱根の旅籠で強盗殺人が。半七は、その事件に関わりのある渡り中元に助けを求められた。
☆☆☆作者が老人(半七)から聞かされた昔の面白い話、手柄話を書き留める、という形の短編推理小説。
『お文の魂』がこのシリーズの第一話らしい。半七も初登場というわけだがその場面は…「「これは江戸川の若旦那。なにをお調べになるんでございます」笑いながら店先へ腰をかけたのは四十二三の痩せぎすの男で、縞の着物に縞の羽織を着て、誰の目にも生地の堅気と見える町人風であった。色のあさ黒い、鼻の高い、芸人が何ぞのように表情に富んだ眼をもっているのが、彼の細長い顔の著しい特徴であった。彼は神田の半七という岡っ引きで……」結構いい男らしい。このお話でもすでに、半七の目の付け所の面白さが如実に出ていて、楽しく読める作品になっている。『石灯籠』これが記念すべき半七十九歳の初手柄話。『勘平の死』では、捕物一辺倒ではない人間味のあるところを披露。これが半七の魅力の一つだ。『湯屋の二階』は登場人物とその持ち物の不思議な取り合わせがいい感じ。読後感も○で好き。『半鐘の怪』の展開の面白さ、突飛な結末には笑えるし、ちょっとしみじみもする。『帯取りの池』のラストも悪くない。『広重と河童』は出来はもう一つだが、広重の絵からヒントを得て、という半七の行動には感心した。『朝顔屋敷』は人物はイマイチだし、結末もあまり好きではないけど、面白い発想だと思う。意外な真相だった。『猫騒動』はなんだか悲しい話だが、不思議感がいい。『山祝いの夜』も半七らしい結末。
半七は、ちょっとしたヒントから独特の発想をする。かな〜り本格推理なのだ。プラス江戸情緒たっぷり…もろ私好みなのだ〜♪ |