バックナンバー室(10) No.28〜No.30

No.28

<今回のテーマ>
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                                                 不定詞と動名詞(2)
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前回、不定詞と動名詞の違いについて

「不定詞」を考える場合、to の持つ目的地・状態へ向かう「→」のイメージを持つ。

動名詞は「その時」その時 〜の状態であったり、〜している、ing のイメージを持つ、
こうしました。

動名詞をとる動詞 enjoy、finish、keep などはすべて「その時」やっていたり、ある状態であったりしたものを、楽しんだり、終えたり、続ける・維持する、のですから ing を使うんですね。
では、

  Would you mind shutting the window? 窓を閉めてもらえませんか

この mind は「気にする」の意味です、そして何を気にするのかというと shutting 閉めること、なんですね。
ここでの shutting はどう考えても、「その時」のことではなくこれから(未来)のことですから、不定詞の方ではないかと考えてしまいますが、

現在進行形が「近い未来のはっきりした予定」を表す時や be going to do が「近い未来」を表すように ing の「その時」の範囲の中にも「近い未来」が含まれていると考えればいいのでしょう。

Would you mind shutting the window? この時の shutting 閉めるという動作は、この後すぐの未来のことなので ing が使れているのですね。

escape [iske'ip]の後にも動名詞が用いられます、escape 意味を詳しく言うと「現在のある状態、またはまさに起ころうとする事態から」逃れる、ということです、ですからこれも ing を使うのですね。

  He narrowly escaped being executed by hanging.
        彼は間一髪で絞首刑になるのを免れた

narrowly [nae'rouli]adv.;かろうじて、間一髪で
execute [e'ks∂kju:t]v.t.;執行する、遂行する、実行する
hanging [hae'nging]n.;絞首刑
 

では次は不定詞と動名詞「どちらも」とる動詞を見てみましょう。

  He began(started) to talk.
                talking.
この時は「始める」のですから、これから始める時もあれば、もうそれが始まっている状態の時もあるはずです、ですから両方ともに用いることが可能、というわけです。

  She likes to play tennis.
              playing

この場合、to do と doing とは実際はほとんどよく区別なく用いられているのですが、文法的言うならば、doing は一般的なことを言う場合、つまり反復的・習慣的動作を言う時に使われます。
「いつもやっている」テニスが好きだ、ということですね。

これも進行形に「反復的・習慣的動作」をあらわす場合があるからなんですね。

これに対して、to do の方は特定の時・場所と結びついた行為について言う場合に用いられます。

  I like to play tennis every Saturday.
  My father likes to send me to a girls' school.

every Sunday これまでも毎週やっているのですが、これからも、次の日曜にやるテニスも好きなので、その日曜に向かう気持ちがto で表されていると考えることができます。
send me to a girls' school.女子校に送るというのは、これはもうこれからのことを示していますから、方向性を表す to が用いられるのです。
 

では不定詞と動名詞とで意味が変わる場合をみてみましょう、

  He tried to listen.  彼は聞こうとした
  He tried listening.  彼は試しに聞いてみた

to listen の場合は、まさに聞くという行為に向かっていっているので不定詞が用いられています。

一方 listening は「その時」には聞いていますから、「試しに」という意味になるのです。
 

  I remember(forget) to see you.  あなたに会うことを覚えている(忘れている)
  I remember(forget) seeing you.  あなたに会ったことを覚えている(忘れている)

to see の場合は、これから会う、ということに向かっていますから不定詞を使うのですね。

seeing you これは「以前」に会ったことについて、覚えている(忘れている)のですから、完了形を使ってもよさそうなんですが、

覚えている(忘れている)という場合には、その動詞の意味から言って、「これから」することを覚えている(忘れている)か「以前」やったことを覚えている(忘れている)の2種類しかない訳です。

「以前」のことの意味になるのは当然、当たり前のことなので、わざわざ完了形を使ってそれが「以前」であることを示す必要もない、ということで ing 動名詞の形がそのまま用いられるのですね。
remember、forget という動詞の持つ意味からそうなるのです。
 

最後に、

  He stopped to smoke.   彼はタバコを吸うために立ち止まった
  He stopped smoking.    彼はタバコを吸うのを止めた

これももちろん、不定詞と動名詞の違いで説明は当然できますが、( to smoke は止めるという方向に向かっていますし、smoking はその時吸っています)

文法では to smoke は動詞の目的語ではなく、「〜のために」の意味の「目的」を表す副詞的用法になっています。また、この時の stop は自動詞です。                                              (END)

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No.29

<今回のテーマ>
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                                                            はやい
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日本語での「はやい」を漢字で書くと二通りありますね。
そう「速い」と「早い」です、

「速い」は、「速度」が速い場合に、「早い」は、「時間」的に先であるという場合に用います。
これが英語では、

「速い」は fast、「早い」は early となります。

ですから a fast train なら、「速く」走る列車の意味になりますし、 a early train なら時間が「早い」列車(早朝の列車)のことを言います。

間違いやすいのがこれ、「私の時計は1分進んでる」は、

  My watch is one minute fast.

とします、言葉の意味だけを単純に覚えてしまうと、時計だから「時間」ということで、early を使ってしまいかねないのですが、時計が進んでいる、というのは、時計の「針」が速く動いてしまうからなんですね、ですから「針」の動きに注目して fast が用いられる訳です。

では、「はやい」の反対の意味はというと「遅い」ですね、これは

「速度」が「遅い」は slow
「時間」が「遅い」は late

になります。余談ですが、「はやい」は「速い」と「早い」と二つあるのに、「おそい」はどちらとも「遅い」なんですね、今まで気にしたこともなかったんですが、今気付きました、日本語も面白いですね。

「この時計は3分遅れている」は

  This clock is three minutes slow.

考え方は fast と同じです、時計の針の進みが遅いので時計が遅れるのですね。

  (You are) Ten minutes late!  10分遅刻だぞ

主語を替えてみました、
これだと、「時間」的に遅れていますから、late になります。
 

ここで「速い」を意味する単語をいくつかあげてみましょう。
  fast の他には quick と rapid でしょうか。

fast と quick の違いはというと、共に「速い」のですがその質が少し違うようにみえます。

  He runs(swims, walks) fast.
  Matsuzaka is a fast pitcher.    松坂は速球投手だ

fast は走る、泳ぐ、歩く、などといった動作・動きが「一定で継続的な」速さの場合に使われます。

これに対し、quick は

  Be quick, or you'll miss the airplane.    速くしないと、飛行機に乗り遅れるよ

  What a quick dog.     なんて速い(すばしっこい)犬だ

quick は同じ「速い」でも「すばやさ・機敏さ」という「瞬間的な」速さを感じさせる語です。

  ball (球)を修飾する際に fast を使えば、まさに野球のピッチャーが投げる速球のイメージがしますし、

quick を使うとなると、「すばやさ・機敏さ」を感じますから、バスケなどでの短いパス回しでの時のボールの動きであるとか、ビリヤードのブレイクショットの後の球の動きのような、何度も球が短時間で次々と跳ね返ってくるイメージを感じますね。

  He has a quick mind. 彼は頭の回転が早い
  She walk at a quick pace. 彼女は早足で歩く

頭の回転だと、ぱぱっとした頭の回転を思い浮かべますし、早足で歩くとなると、ささっとした足の動きを連想します、速さの中に「すばやさ・機敏さ」という「瞬間的な」ものを感じますね。

  rapid [rae'pid] は、

rapid progress[prα'gres];急速な進歩   rapid growth ;急成長
rapid stream[stri:m] ;急流

と  に近いものと、

rapid heartbeat ;心拍数が早いこと
rapid pulse ;脈が激しいこと

これなどは、どくどくという脈や心臓の音が聞こえてきそうですから quick に近いものがあります。

rapid は fast や quick よりもあらたまった感じがあります。

また、fast が動いている「人・物」をよく表すのに対し、rapid はprogress、groth、development[dive'l∂pm∂nt];発達などに付くように「動きそのもの」を表すことが多いことがあげられます。

この他に「速さ」を表す語としては、

swift [swift]      動きに「滑らかさ・円滑さ」が伴っています

speedy            「速度」の速さが強調されます

などがあります。

これに対し、「速い」の反対の意味である「遅い」は slow だけなのですから、おもしろいですね。

似たような意味の言葉で、gradual[grae'd3u∂l];少しずつの
  leisurely[li':3∂rli];悠々とした、悠長(ゆうちょう)な

などがありますが、単に「遅い」と言えば slow になります。

※ leisurely が名詞になると leisure ;レジャー、余暇   です。
悠々としてますもんね、レジャーは。                                                       (END)
 
 

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No.30

<今回のテーマ>
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                                                 high と tall の違い(2)
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記念すべき第1回のテーマがこの high と tall の違いについてでした。この時、この違いについてこう言いました…

            ものの位置に注目すれば ― high
            地上からの高さに注目すると ―  tall

(例えば、a tall man とは言うが a  high man とは言わない、またceiling(天井)、cloud(雲)を表現するには high を用いるなど)

ここで、「蜃気楼」さんからこのような質問が寄せられました、

「 地上から見た高さはtallで表現するとありました。そして、人間の身長は tallであらわすとのことですが、例えば以下のような表現があります。

  He is six feet two inches high(tall).

あるいは、ビルの地上からの高さを表すときに、  The building is 40 meters high.

とも言います。ですから、地上からの高さを表す場合にも、highは使うと思います。
これらは、いずれも、highの下には空間はありません。いずれも、地上からの高さをあらわしたものです。ですから、highは、下に空間がある、あるいは地上からの高さを表す場合はtallを使うととは
言い切れないとおもいますが、いかがでしょうか。」

このようなご質問を受けました。
 

※ ちなみに1フィート(ft.)は、約30.48cm       1インチ(in.)は12分の1フィート、2.54cm
six feet two inches なら 6 ft.2 in. とか 6'2" とも書きます

そうですね、これらの場合のように地面からの「高さ」を表す時には high が使われますね。

確かに人の背の高さを表すときには、地面から頭のてっぺんまでの「高さ」が問題となりますから、空間はないように見えます。

しかし、身体測定をする際の目線に注意して見て下さい、
 

       _ _ _ _ _ _ (注目) (* *)               相手の背を測る時に私たちが
     ○     ↑                              見るところは、相手の頭のてっぺ
  └┼─ six feet two inches        んです、そしてそこにある数字を
     ∧     high(tall)                     読んで身長を測ります。
   ||    ↓                               この時の「高さ」というものは、
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄                  地面から対象物の先端までの尺度・距離を表していますが、実際に問題としているのは、地面の1点と対象物の先端というこの2点を問題としていると考えることもできます。そうすれば、この2点の間にまさに「空間」が存在していると考えることができます。この2点間の「空間」の距離が 6フィート2インチなのです。
 

  ┌―┐‐‐‐‐‐(注目)(* *)    ビルの場合も同様です、ビルを
  |ビ|    ↑                 直接測るメジャーはないでしょう
  |   |                       が、この時の目線もビルのてっぺ
  |   | 40 meters high        んに注目しています。
  |ル|                       そこと地上との間の空間の距離が
  |   |    ↓                 ビルの高さ 40メートルなのです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       このような人や物の数字などで表される「高さ」を考える場合には、このように2点間、ある点とある点、点と点とを問題にしています、注目しているのは頂点であるところの点なのですが、それに伴って当然あるべきそのものの底である点も前提条件として組み込まれているのです。そして、これが「 ものの位置に注目すれば ― high 」ということなのです。
 
 

また、high と tall の違いについて述べた「高さ」というのは、この、高さが何メートルとか、何フィートという「尺度」ととしての高さとは少し違った意味での高さです。

  tall man    tall building   tall chimney [t∫i'mni]n.;煙突

  high ceiling   high jump   high flight

これらの「高さ」は、高いのか低いのか、と言った場合の「高さ」つまり「高いということ」を問題にしています。

この「高いということ」を感じる時に、

            ものの位置に注目すれば ― high
            地上からの高さに注目すると ―  tall

ということになります。
tallが地上からの高さ・高いことに注目する際に、「下から続いている」イメージがあることは、その時にも述べましたが、この感覚がよくわかるのは、街を歩いていて、ふとビルを見上げた時、「ああ、このビル高いなあ」というビルが自分の目の前から空に向かってそびえ立っているあの感覚が tall です。
この下から上まで「続いている」感覚を感じるのが tall です。
(これを図にしようとしましたが、何度やってもうまくいかず…
結局断念)

tall が主に、細長いものが高い、と言うときに使われるのはこの続いている感覚があるからなのです。

tall が下から上のまでの線として高さを捕えるのに対し、high はそのものの位置、つまり点、に視線が注目しています。この「線」と「点」としての捕え方の違いが、tall の方がより「物理的」な高さを表し、high の方はより「観念的」な意味での高さを表す要因ではないでしょうか。

  high school    ;高校
  high quality [kwα'l∂ti];高品質
  high society ;上流社会
  high-risk    ;ハイリスク、大きな・高い危険
  high-pressure [pre'∫∂r];大きなプレッシャー、高気圧
  high technology [tekn'αl∂d3i]、high-tech [ha'itek] ;先端技術・ハイテク

などなど、high を使った語句は非常に多くあります。

あっ、そう「鼻」が高い、と言う時は、tall ではなく、high を使います。鼻の高い部分の「位置」に注目しているのですね、F1 のフロントノーズ(先端部分)で、高いものは high-nose と呼ばれています。
                                                                                                                 (END)
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