萩焼についてその特徴と歴史を簡単にですが説明します
 ここに2枚の写真があります。この2枚が萩焼をよく表していると思います。実はこの2つは同じ器なのです。右が使用前で左が使用後です。長く使ううちに、ただ白くて味気ない器に渋みや味がどんどん出てきます。これを萩の七化けといいます。萩焼は土がたいへん柔らかい焼物です。焼くときもカチッと焼き締めるのでなく、ふんわりと焼き上がるように心掛けます。そのため吸水性が大変豊かになります。
 また、萩焼の土は焼き上がったとき、土と釉薬の間に大きな収縮率のズレを生みます。そのため、釉の表面に細かいひびが入ってしまいます。これを貫入というんですが(左の写真をよく見てもらうと細かいひびが分かると思います)、この2つの理由から、器にお茶などがしみ込んで色が変わるわけです。
 昔は朝鮮からの焼物の方が日本の物より格が上でした。しかし、長く使われ時代と共に侘びた風情をかもし出す高麗の茶碗と、時代のつきやすい萩焼の茶碗の見分けがつきにくくなることから萩の七化けという言葉が生まれました。
 よく萩焼はその半分以上をお使い下さる方が作るといいます。それは、漏れを止めること、使うことが器を育てるという萩焼の大きな特徴の一つだからです。
  萩の七化け
茶慣れの良さ
 お茶の世界で、よく一楽、二萩、三唐津とか一萩、二楽、三唐津とかいわれ、萩焼の茶碗は大変高く評価されています。これは器がお茶に合うとか、手取りが良いとか、いろいろな理由があると思いますが、最も大きな理由は茶慣れの良さではないかと思います。萩焼の土はザングリとして堅く焼けません、そのため器が弱く柔らかいせいか、熱が逃げにくく、器にお茶がなじむといいますか、器がお茶をはじきません。私の感じでは表面張力しないような感じです。堅い焼物はお茶もすぐ冷めますし、お茶をはじきます。そのせいか、味も明らかに違います。これは実際にふたつの湯呑みにお茶を入れてもらって呑んでいただければよく分かると思いますが、萩焼の器は本当にお茶がおいしく感じられます。
萩焼の欠点
 どんなものにも、良さがあればあるだけ欠点もあると思いますが、萩焼も例外でなくその良さゆえにもつ欠点があります。まず第一に吸水性が豊かであるということは、逆に言うとたいへん漏れやすいということです。特に私のやっている鬼萩は土が荒いため、お茶を飲んだ後、茶たくにお茶がたまっていることなどがあたり前のようにあります。大抵の場合、お使いいただくうちに止まってきますが、中には大変時間がかかる場合もあります。(漏れ止めは片栗粉を使うなど色々な方法がありますが、詳しいことは別の所に書いていますのでそちらを参考にして下さい)また、お茶などが器にしみ込みやすいということは、お酒や醤油などを使った場合よく洗ってしっかり乾燥させないと、カビが生えたりする事があります。カビはオーブンに入れ250℃くらいで15分くらい焼くと燃えてなくなりますが(一応オーブンを使って良いか悪いかは窯元に確認して下さい)やはり少しやっかいなところです。
 第二に土が柔らかいということは、欠けたり割れやすいということです。洗い桶などに磁器などと一緒に入れて洗うと、ぶつかって負けてしまいます。そのため洗うときは洗い桶などに入れず一つずつ別に洗うようにしなければいけません。少し手間がかかります。ただ私としては、何でも便利な時代にそういうことも焼物を味わう一つとして考えるようなことが大事なのではないかと思っています。
漏れについて
萩焼の由来

萩焼はその起源を一千余年も前より見ることが出来ますが、今日、茶陶におきまして 「一楽二萩三唐津」 とまで語られるようになりましたのは、およそ四百年前文禄・慶長の役後に朝鮮半島より連れ帰った李朝の陶工李勺光・敬の兄弟によって始まることになります。
 萩藩主毛利輝元のもとに御用窯として開窯、藩の厚い庇護もさることながら、その李朝の陶技と並々ならぬ努力のもに新たなる道を拓きました。さらに其の後に続く陶工たちの一層なる努力によって、徳川も元禄の頃には萩独特の境地に達することになります。
 
一つに萩焼と申しましても何が良しとも申しかねますが、素朴にして風雅、土の暖かみ、茶慣れによる変化にかもし出される侘びた風情など感じ得るものは多々ございます。長くお使い下さるうちに、そのような味わいを少しなりとも感じて頂けましたら私としましても大変嬉しく思いますさらに、一つ一つ忘れ去られたものを拾い上げるよう山々を歩き、土を知り、灰を焼き、炎に逆らわずして窯を焚く、そんな日々のくり返しの中に自分の作陶心を極めたいという気
持ちを添えさせて頂ければ何よりでございます。