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No.041 殺人事件のあった部屋に次の入居者はいるのか

殺人事件が起こった家とか自殺のあった家、あるいは一人暮らしの老人などが自然死して、発見された時には死体は腐乱していた、などの家を一般的に事故物件という。

自然死ならば、他殺や自殺と同様に事故物件扱いしなくても良さそうな印象を受けるが、実際遺体の発見が遅いと、遺体は膨らみ皮膚が避け、そこにウジがウヨウヨとわいていたりしている。ウジはハエに成長し、莫大(ばくだい)な数のハエがその部屋に生息している。窓に黒いカーテンがかけてあるのかと思ったら、それが全部ハエだった、ということもあるらしい。

また、こたつに入ったまま、こたつのテーブルに頭と腕をつけた体勢で死亡していた老人の場合、死後数か月経って発見された時には大分腐乱しており、警察が遺体を起こすと額(ひたい)と腕の皮膚がベリベリとはげて、こたつのテーブルに残ったりすることもあるという。

現場に立ち会った人であれば、絶対この部屋には住みたくないと思う。


1987年に東京豊島区のアパートで、一人暮らしの女性が侵入者に暴行されそうになり、抵抗したところ侵入者に刃物で首を刺されて殺された事件があった。

このアパートは、他の入居者も出て行ってしまい、ほとんど廃墟のようになっている。

また、1988年に起きた事件で、死亡した赤ん坊をビニール袋に入れて布団に巻いて隠していた事件があり、この現場の舞台となったマンションは、やはり上記の件と同様、ほかの入居者たちも出ていって、マンションの持ち主とその親族しか住んでいないらしい。事件のあった部屋はもちろん空き室となっている。

こういった事故物件に、次の入居者があるのかというと、あまりないらいしが、全くないというわけでもない。

その物件を管理する不動産屋には、「重要事項説明義務」があって殺人や自殺、孤独死などがあった場合、それを契約の際に次の入居希望者に伝えなければならない義務があるとされている。

しかし、これはケースバイケースであり、直前の入居者が自殺しているとか、殺人が起こったのが1年前であればもちろん伝えなければならないが、事件から10年も15年も経ったものでも伝えなければならないのか、あるいは自然死で死体の発見が遅れただけで事件性のないものまで言わなければならないのか、ということになると、言う必要のない場合も出て来る。

このあたりは不動産屋の判断になるし、昔のことであれば、担当の人もそのことを全く知らないといった場合もある。

事件が起きて数年間は伝える義務があるにしても、時の流れと共にそれは「伝える義務」からは外(はず)れていく。

つまり、大昔に、どんなに凄惨な殺害事件があった部屋でも、すさまじい死体が発見された部屋でも、それを知らずにそこに住んでいる人は大勢いるということになる。


また、事故物件を最初から公にして募集する場合もある。事故物件は全てが事件性のあるものばかりというわけではなく、圧倒的に多いのは一人暮らしの老人の孤独死や病死である。

そういったことを公開した上で完全にリフォームし、家賃も最初の1年か2年を半額にして募集を行うケースもある。しかし人気のある物件や立地条件の良いところだと、家賃の値引きは行わないことも多い。

UR都市機構(旧住宅公団)では、平成18年度には首都圏だけで約200戸の事故物件の募集を行った。人気は高く平均倍率は2.6倍にもなり、抽選を行った。まるで新築のようにリフォームされた上に家賃が値引きされているのであれば、そこで過去に自然死があったとしてもやはり人気の高い物件となる。

また、自殺する場合、海や山ではなく、死に場所として自分の部屋を選ぶケースも多いが、部屋で自殺者が出た場合、次の入居者が何年もいなくなる。そこを管理する不動産屋は大変な損害を被(こうむ)ることになる。

そうした場合、遺族に損害請求を求める場合も多い。だいたい家賃の2年分を負担してもらうのが一般的らしい。部屋で自殺をすると遺族にも迷惑をかけることになるのである。