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No.025 エジプトの観光地を襲った銃乱射テロ・67人が死亡

テロ集団の突然の襲撃。無差別に銃を乱射し、観光客でにぎわう遺跡は血の海と化した。


▼事件発生

エジプト南部に位置する遺跡であるルクソール。ここは日常的に観光客が訪れる遺跡観光地となっている。

平成9年(1997年)11月17日、午前9時過ぎ、このルクソールを突然テロリストの集団が襲った。イスラム原理主義組織「イスラム集団」によるテロである。

標的となったのは、ルクソールの「ハトシェプスト女王の葬祭殿」と呼ばれる遺跡付近にいた観光客たちだった。

この日、銃を持った数人の男たちが、この葬祭殿に続く斜面を駆け上がってきた。
(左の写真の、手前から奥に向かって伸びている斜面である。その先にあるテラスまでの往復はこの斜面を通るしか道はない。)

葬祭殿のテラスの部分には、100人近い観光客がいた。

異変を感じた一人が「テロだ!逃げろ!」と叫んだが、テラスの部分は高くてとても飛び降りられるような高さではない。

テロリストたちは無差別に銃口を向けると、次々と引き金を引いた。何十発という弾丸の音と人々の悲鳴が上がる。襲われている人たちも、逃げるといっても逃げる場所がない。恐怖に怯えながら射殺されるしかなかった。

即死した人も多くいたが、手や足を撃たれて倒れた人もいた。テロリストたちは、まだ生きている人達の一人一人の頭を撃って確実に殺害していった。この時、多くの人は左目を撃たれて殺されたという。

虐殺は約30分続いた。一通り終わるとテロリストたちは「アラー・・アラー・・アラー・・」と歌いながら踊り始めた。
日本、スイス、ドイツからの観光客、旅行のツアーガイド、現地の警察官など、合計67人が死亡した。重軽傷を負いながらも助かった人は20数人。

日本人は10人が死亡し、そのうちの4組は新婚旅行中だった。

テロリストたちはバスに乗り込んで逃走したが、その途中で付近の住民たちがバスの進行を遮(さえぎ)り、駆けつけてきた警官隊と撃ち合いになった。

後に警察側から、テロリスト6人全員を射殺したと発表があったが、逃げた仲間が4人ほどいたという目撃情報もあり、犯人の正確な人数は把握出来ていない。


▼生き延びた女性

生存者20数名の中の一人である、スイス人のロズマリーは、あの襲撃の時、手と足を撃たれ、激痛に襲われてその場に倒れこんだ。幸いにも頭と身体には弾丸は当たらなかったが、ロズマリーの周辺にいた観光客は即死状態だった。

倒れたロズマリーの上に、死亡した観光客が二人倒れてきてその下敷きとなった。後で考えればこれが良かったのかもしれない。

ロズマリーはハンカチに血をつけ、それを自分の顔や服、腕などに塗りつけた。撃たれて死んでいるフリをしたのである。

テロリストたちが生きている人を見つけては頭を撃ってとどめを刺している中、ロズマリーは微動だにせずに死んだフリを続けた。

バン! バン!と銃声が聞こえるたびに一人ずつ殺されているのが分かる。ようやく銃声は止み、テロリストたちは去っていった。発見されずに済んだ。スイス人観光客はこの時30人いたが、生き延びたのはロズマリーを含めて8人だった。


エジプトといえば、遺跡の観光地として世界中から多くの観光客が訪れている国であるが、その一方でこうしたテロに巻き込まれて現地で亡くなる人も多い。1992年から98年までにテロによって亡くなった人は、観光客地元民含めて1100人にものぼる。



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