超能力や予知能力と聞けば、誰しもロト6の次の当たり番号や明日の競馬の勝ち馬などが分かれば瞬く間に大金持ちになれるのに、と考えるものである。もっとも現実はそう甘くはないが、しかしこのような能力を持った人間が実際にこの世にいた。

イギリスのピーター・フェアリーは、あるテレビ局で働く普通のサラリーマンであったが、給料前でも金に困ったことがなく、欲しい物は次々と買ったりして、やけに羽振りのいい生活を送っていた。同僚が尋ねても「競馬で稼いだのさ。」と言うだけで詳しくは語らない。「競馬にしちゃ、やけに勝ちが続くな。」と言われても「なーに、たまたま運がいいだけさ。」といった調子である。

運にしては勝ちが続きすぎるし、あまりにも稼ぎすぎである。しかもピーター自身の競馬に関する知識はお粗末なものであった。もっともこの頃には決して他人に話すことはなかったが、実はピーターは夢の中に出てくるシーンや、車を運転中に聞こえてくる声などで、未来のレースの結果を知っていたのである。


ピーターに初めてこういった不思議なことが起こったのは1965年のダービーの直前だった。ある日彼はラジオを聞きながら車を運転していると、ラジオからしきりに「ブレイクニュー夫人、ブレイクニュー夫人」という言葉が聞こえてくるような気がした。

その声に気を取られたのか、彼は道に迷ってしまった。見知らぬ場所に出てふと看板を見ると「ブレイクニュー村」と書かれてある。

道を調べなおして、やっと仕事先に到着すると、そこで彼が最初に聞いた言葉も「ブレイクニュー」という言葉だった。さっきからつきまとっているこの言葉・・。「ブレイクニュー」とは一体何なのだろうと同僚聞いてみたところ、明日のダービーに出走する馬だということが分かった。

しかし前評判はかなり低い。だがピーターは、何かピンときて、この馬に賭けてみたところ大当たりで、この1レースだけでかなり稼ぐことが出来た。

その後は能力が目覚めたのか、出走表を見ただけで一着になる馬が分かるようになってきた。また、夢の中で明日の新聞を読んでいるシーンが見えたり、あるいは自分が競馬場にいて勝利の瞬間を見ている場面などが見えてくるようになった。

この能力は段々と強くなり、ピーターはどのレースを買っても100発100中で当たるようになった。当然稼ぎも驚くほどの金額が手に入るようになったのである。


だが彼は1976年、ついにこの秘密をテレビで喋ってしまった。イギリスのBBCテレビが、「競馬の結果を夢で知ることが出来る男」を主人公にしたドラマを放映した時、彼は我慢できなくなり、「それはドラマだけの話ではなく、実際に出来る人間がここにいるのだ!」と名乗り出てしまったのである。

イギリス全土に放映された番組の中でインタビューに応じた彼は、それからすっかり馬券を買いにくくなってしまった。ピーターが買う馬券と同じものに全財産突っ込む人間だっているかもしれない。そんな考えもあってか、やがて彼は競馬からは遠のいてしまった。

もっとも同僚の話によると「彼は今まで十分過ぎるほど儲けてきたからね。別に今後は競馬で稼がなくても、もう莫大な資産があるから十分だろう。」ということだった。


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