1896年6月17日。フランスの田舎で二人の農夫が小さな小屋で雨宿りをしていた。突然襲ってきた嵐でどしゃぶり。カミナリも鳴り出した。
するとちょっと間を置いて、二人のすぐ近くにカミナリが落ちてしまった。すさまじい衝撃と共に二人の農民は外へ放り出され、気を失ってしまった。
しばらくして正気を取り戻すと、二人とも着ているものはボロボロ。ほとんど裸同然の格好になっていた。だがもっと驚いたのは、二人の身体にきれいな絵が描かれていたことだった。
いや、よく見ると絵ではない。まるで刺青(いれずみ)のように周囲の景色が・・あたかも写真のようにそれぞれの身体に写しこまれていたのだ。緑の草地、松の木、ポプラなど、それは鮮やかに身体に写し出されていた。
この事件が新聞に発表されると、各国から似たような事例が次々と届き、さらに二人はびっくりした。イナズマが落ちた時、その光で周囲の風景を何かに「プリント」する現象については、古くから報告の事例があるというのだ。
例えば1857年、イギリスの「気象協会ジャーナル」に掲載された事件。
1812年、サマーセットシャーでカミナリが落ち、その時の衝撃でヒツジが6頭死んでしまった。仕方がないから死んだヒツジを食用にしようと、一頭一頭ヒツジの皮を剥いでいた時、人々は驚きのあまり悲鳴をあげてしまった。
ヒツジの皮を剥いだら、その胴体の部分に、この近辺一帯の風景が銅版画のようにはっきりと写し込まれていたからである。
また1971年、アメリカのサウスカロライナ州では、そこに住む一人の男が猟に出かけ、一頭の野ウサギを仕留めてきた。今日の晩御飯にしようと妻に預け、料理してもらうように頼んだ。妻はウサギを持って台所へ入ったが、しばらくして「キャーッ!」という妻の悲鳴が聞こえてきた。
びっくりして台所へ駆けつけるとそこには皮をはがされたウサギが乗っていたが・・そのウサギの胴体には、女性の顔がくっきりと映し出されていたのだ。その顔はクチビルを半分開きかけてカールをした髪の毛の女性であったが、そんな人にはもちろん見覚えがない。
この事件も新聞で報道され、この家には連日大量の野次馬が訪れたという。