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No.149 呪術師 ウラ・フォン・ベルヌス



▼殺人未遂事件

1982年12月17日、西ドイツの南部に位置するランツベルクという町で、殺人未遂の容疑で2人の人間が逮捕された。首謀者はハンネローレ・エップ(37)という人妻である。

殺されそうになったのは、ハンネローレの夫であり、材木会社の社長でもあるハインリッヒという男である。

ハインリッヒの妻であるハンネローレは、室内装飾家であるH・ムンド(42)と浮気をしており、ムンドにのめり込むに連れて自分の夫が邪魔になってきた。そこでムンドと共謀して、夫であるハインリッヒの殺害計画を立てたのだ。

ハインリッヒに麻酔液をかがせ、意識を失ったところで車の運転席に乗せてその車を池に落とそうとした。池への転落事故と見せかけて殺す計画であったが、ハインリッヒは寸前のところで目を覚まし、ブレーキを踏んで間一髪助かった。

このハインリッヒが警察に通報したため、妻ハンネローレとその愛人であるH・ムンドは逮捕された。


逮捕されたハンネローレと愛人ムンドの供述によると、「自分たちはある呪術師(じゅじゅつし)に、夫を呪い殺してくれるように金を払って依頼したが、いっこうに夫は死なない。だから、もう自分たちで殺してしまおうと行動に移した。」と言う。

その呪術師が呪い殺してくれていれば、自分たちは実際に夫を殺すための行動は取らなかった、と主張する。

警察側も、この現代の世において呪いなどとは、と相手にしなかったが、あまりに2人が主張するので、その2人の言う呪術師を参考人として呼び出すことにした。

その呪術師というのが、ウラ・フォン・ベルヌスという56歳の女性である。警察に呼ばれ、やって来たのは小柄な、ごく平凡な中年女性だった。

そのウラが言うには

「そうです、私は呪術師です。もう20人以上は呪い殺しています。しかしそれが罪だとは思っていません。私が殺した連中はみんな悪人ばかりですから。みんな当然の報(むく)いを受けたのです。」

と淡々と語った。この件についてウラが罪を問われることはなかったし、結論から言えば、ハンネローレから依頼を受けたウラの呪いは失敗に終わったことになる。ウラは、裏社会では有名な呪術師であったが、警察に呼び出されたのが失敗した一件の時だったとは皮肉な結果である。

呪術というものは、いつも成功するわけではないようだ。


▼ウラ・フォン・ベルヌスの店

前述のハンネローレが、ローテンブルクに住むウラの元を訪れたのは、1982年6月17日。裏社会に詳しい知人たちから呪術師であるウラの話を聞き、紹介してもらってウラの店へとやってきた。

聞いた話によると、ウラの元には政治家や芸術家を始めとする有名人たちの依頼も多く、これまで呪い殺した相手は20人以上という。ただし死亡した相手がそれぐらいということで、病気や事故、怪我など、相手が生存したままある程度の成功をおさめた呪いの数までは不明である。

一人当たり日本円で100万円くらいで引き受けており、何ヶ月先まで予約が詰まっているという人気の呪術師だ。ウラの呪いをかけられた者は転落死や交通事故、心臓マヒ、熱病などで死亡しているという。

ハンネローレが通された部屋は全て真っ黒で統一された部屋で、中央にテーブルが置かれてあった。テーブルには赤い布がかけられており、金色の燭台(しょくだい)には赤い8本のロウソクが立てられ、火が灯(とも)されていた。

しばらく待っていると、ドアが開いて全身黒づくめの女性が現れた。彼女がウラ・フォン・ベルヌス本人である。

「本日のご用件は?」とウラが重々しく口を開いた。
「夫を殺して欲しいのです。理由は言えません。もう夫を愛せなくなったのです。これ以上あの人と一緒に生活していくことに耐えられません。」

「分かりました。今日、ご主人の写真は持って来られてますね?」と言われ、ハンネローレは夫の写真をウラに渡した。

ウラは、「魔女パンフレット」というものを発行しており、そこには呪いの種類や料金などが書かれてある。彼女が使う黒魔術には13ほどの種類がある。ハンネローレはパンフレットを見て、呪いの種類の説明を受けて呪いを選び、料金を払った。

ウラは魔剣を振りかざし、呪文を唱(とな)え始めた。呪文が終わると
「悪魔よ! この写真の者、ハインリッヒ・エップに死の呪いを与えたまえ!」と叫び、テーブルに置いてあった頭蓋骨の脳天に魔剣を突き刺した。

「これで大丈夫です。あなたのご主人は3ヶ月以内に交通事故で死にます。」とウラは語った。

しかしウラはああ言ったものの、3ヶ月どころか4ヶ月過ぎても夫は死なない。とうとうしびれを切らして、ハンネローレはムンドと一緒に夫を殺害することにして失敗し、2人一緒に逮捕されることとなってしまった。


▼ウラの成功例

ウラが使う呪いにはいくつかの種類があるが、その中でも彼女が得意としているのが人形を使った呪いである。

「人形臓針(ぞうしん)の呪殺法(じゅさつほう)」と呼ばれ、人形自体も種類があり、ロウ人形、木製人形、布人形、死皮人形とわかれる。

死皮人形とは、「カラスやハゲタカの内臓」と「死刑になった罪人のツメ」「墓場の土」の3つを混ぜて人形を作り、この人形を罪人の死体から切り取った皮膚で包んで乾燥させたものである。頭の部分には、動物の頭蓋骨を使う。

この人形を使う時には、まずウラは、サタンを呼び出す呪文を唱(とな)え、殺したい相手の写真に魔剣を突き立てる。そして自分の指に針を刺して出血させ、その血で死皮人形の心臓の位置に×印を描く。

「この者に悪魔の呪いがかかれ! 呪いが届いて地獄へ落ちろ!」と叫び、死皮人形の心臓の位置に針を突き刺すのだ。


この死皮人形を使って実際に夫を殺してもらったという、シモーヌという女性がウラについてこう証言している。

「2年ほど前、私はウラさんを訪ね、
『夫がすぐに暴力を振るうので恐ろしくてたまりません。1日も早く夫を殺して下さい。急ぐので、一番強力な呪いでお願いします。』と言って、1万マルクを一括で払いました。

この時ウラさんは
『分かりました。死皮人形の呪いを一週間続けて行いましょう。』と約束してくれました。

ウラさんが呪いを始めた翌日から早くもその効果が現れたのです。夫に、心臓がキリキリと痛むような症状が始まりました。その症状は数日続き、ついに8日目の朝には夫は血を吐いて死んでしまいました。」

希望通りの結果となって、シモーヌも大いに喜んだ。突然死ということで、一応解剖がなされたが、死因は心臓マヒと診断された。

呪いによって相手を殺しても、それは立証されることはなく、シモーヌもウラも逮捕されることはなかった。

これはウラの呪いが完全に成功した例であるが、数々の成功を成してきたウラといえども冒頭の一件のように失敗することもあり、漫画やドラマのように成功率100%とはいかないようである。



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