Top Page  心霊現象の小部屋  No.67  No.65


No.66 炭鉱の跡

土木関係や炭鉱など危険を伴う工事現場では、事故で死亡者が出た場合、それが幽霊話となって残る場合が往々にしてある。

北海道夕張市にある炭鉱跡もその一つで、ここは今では閉鎖になっているのだが、かつて石炭を掘っていたトンネルは今もそのまま残されており、時々このトンネルの中からトロッコの音が聞こえてきたとか、人のざわめきが聞こえてきた、あるいは作業服を着た男たちが立っていた、などの噂が絶えない。


炭鉱跡といっても、別に山奥にあるわけでもなく、近くには住宅街もあり、横には舗装された道路が走っている。普通のサラリーマンをしている金森さんもこの炭鉱の近くに住む住人の一人で、いつも炭鉱の横の道を通って帰っているのだが、幸いにも今まではそういう経験をしたことはなかった。


ある夜、金森さんは会社の同僚と飲みに出かけ、いつものように自転車で家へと帰っていた。炭鉱の近くまで来た時、前方の方から、一人の男がふらふらしながらこっちへ向かって歩いて来るのが見えた。

男が間近に迫った時、
「す、すいません、すいません、ちょっと止まって下さい。」
と、男が話しかけてきた。

近くで見ると、作業服は泥だらけで、ヘルメットまでかぶっている。いかにも仕事中のような状態である。こんな夜中に仕事をしていたんだろうか・・?


「どうかしたんですか?」
と、金森さんが聞くと、

「きゅ、救急車を呼んで下さい!」
「救急車? どこか具合が悪いんですね、分りました。」と金森さんが答えると、

「いえ、私じゃないんです。仲間が事故に会っちまって・・。まだあの中にいるんですが、早く病院に連れて行かないと・・!」
そう言って作業服の男は炭鉱の入り口を指差した。

「こいつは幽霊だ!」
瞬間的に悟った金森さんは、悲鳴を上げながら全速でぺダルをこぎ、その場から走り去った。


家に着くまでの間が途方もなく長く感じた。家に着くと勢いよくドアを開けて玄関になだれ込んだ。あまりに音が大きかったので、まだ起きていた母親が何事かと思って、玄関までやってきた。

「もう夜中なんだから、もっと静かに帰ってきなさいよ。」
「で、出た、出たんだよ、母さん。」

「出たって何が?」
「ゆ、幽霊。あの炭鉱の跡に噂の幽霊が・・!」

「何言ってんのよ。また飲み過ぎて何かを見間違えたんでしょ。まったく、しょっちゅう酔っぱらって・・。ほら、後ろに立ってる友達も心配そうな顔をして、お前を見てるじゃないの。今日は泊まってもらって、これから二人でまた飲むんでしょ。」

「は・・!? 友達って・・? 俺は一人で帰って来たのに・・!」
後ろを振り向くとそこには誰もいなかった。