楽しい入院読書

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第一日め…2001年2月14日(水)…
とうとう、入院(っていうか手術^_^;)する羽目になった。どうせこんなことになるなら、うじうじ悩まずさっさと病院に行けばよかったのだ。みなさん、早めの受診が大事ですぞ。・・・などと思いつつ、JR最寄り駅から徒歩15分ばかりのところにある総合病院に向かっててくてく歩く。病院に車を置いておくわけにもいかないので、公共交通機関で行くしかないのだ。誰も連れて行ってはくれない身の上を嘆きつつ、午後1時20分頃病院に到着。先日言われていた準備すべきもののうち、「T字帯」だけは手に入らなかったので、病院の売店で購入。普段ちょっと、お目にかからない品物ですね。
外科外来で待っていると、病棟の看護婦さんが迎えにきてくれた。大部屋の空きが今ないので、空きが出るまで個室に入っていただきます、とのこと。しかも差額は頂きませんって。らっきー(^_^;)なのか?早速病室に入るも、元気いっぱいの私としては、即座にパジャマに着替えるべきか悩む。しばらくぐずぐずしていたら、看護士さんが来て、いろいろお話をしたり、病状の確認、検温などをする。(ちなみになぜか37.2度の微熱。風邪かしら?)その上、300CCの水を飲んだあと、おしっこをためてくださいという。腎臓だか、膀胱だかの機能の検査らしい。病人扱いされているうちにすっかりその気になってしまった私、とうとうパジャマに着替えてベッドにもぐりこんだ。TVでも見ようか。TVはプリペイドカード方式で、早速カードを購入すると、1000円で22時間見ることが出来るようになっている。しばらくつけていたが面白くもなく、もったいなくもあり・・・というわけで、持ってきていた本を読むことにした。昨日から読み始めていた『ニコラス・クインの静かな世界』The Silent World of Nicholas Quinn(コリン・デクスター/大庭忠男訳・ハヤカワミステリ文庫)。デクスターの本はこれと、あと『悔恨の日』を残すのみなので、もったいながってなかなか読んでなかったのだが。実際この本を今まで読まなかった理由が自分でも分からない。デクスターに関しては、ずっと順番に読んでいたはずなのに、なぜかこの一冊は抜け落ちていた。それはともかくストーリ―をご紹介しなくってはね。 極度の難聴という障害をもつニコラス・クインが海外学力検定試験委員会の一員に選ばれた。事務局長のバートレットは反対だったが、委員の一人、ループの強硬な推薦によって任命されたのだ。読唇術を得意とするクインはなんとか無事に業務をこなしていたが、三ヶ月後自宅で毒殺死体となって発見される。クインはなぜ、殺されなければならなかったのか?やがて海外学力試験に関する不正の疑惑があり、クインがそのことで、何かを知っていたらしい、ということが分かる。
モース警部とルイスのコンビは相変わらず。モースの気まぐれにルイスがじっと耐えている(?)の図はなかなか楽しい。ご機嫌なモースは結構魅力的なんだけど(^_^;)「モースは頭のいい男だ。まったく頭がいい。もっとも彼が言う通りかどうかは・・・」というわけでルイスもかなり懐疑的になったりするんだけど、それもごもっとも。モースの夢見るような「めくるめくラビリンス」(帯の言葉)を彼とともに彷徨うのはなかなか骨が折れる。犯人は、いかにもまさか、という人物がまず指差されるが、これっていかにも「もっとも意外な犯人」を作ったみたいでいまいちだあ、と思っていたら最後にどんでん返し。でも、このどんでん返しにももう少し意外性をもたせてほしかったなあ。二人のうち、「こちらが真犯人なのだ!」と言える決定的な部分はルイスも言っているようにこじつけっぽかったり、ちょっと弱かったりするんで。でも、周りの人々のやや不可解な行動が、そう考えると納得できる、というあたり、なかなかよく考えてあって、文句をいうわけにもいかない感じ(^_^;)なんだかとんでもないところに飛んでいっているみたいで、でも最後には合理的な解決にたどり着いちゃうのね、モースさん♪ただ、最初に犯人とされた人物の動機となったのは「金」だけど、無実だとしたら彼の「金」は一体どうやって調達されていたのだろうか?きっとどこかに書いてあったんでしょうが、何せ病人なので気もそぞろで^_^;分からずじまいですな。
もう読み終わってしまった。夕食も食べてしまった。特にすることもない。次の本は『略奪』(アーロン・エルキンズ)を手にとって見る。なかなか厚い。これを開いてみたり、TVをつけてみたりするうちに午後10時。普通なら午前1時より早く寝ることなど皆無と言ってもいい私だが、なんだか不思議と眠気が襲う。もう寝ちゃえ。・・・というわけで、暖房の効きすぎた寝苦しい入院第一夜は更けていくのでした。(つづく)

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第二日め…2001年2月15日(木)…
寝たんだかなんだか、よくわからない一夜でした。神経質にはなっていないつもりだったけど、結構小心者だったのかもね(*^^*)7時頃看護婦さんが検温にやってくる。やっぱり微熱・・・でもでも、食事はきちんと食べてしまいます。普段はバナナ一本くらいしか食べないんだけど。
今日の予定はまず、麻酔の先生の問診を受けることから。看護婦さんが呼びにきてくれて、麻酔科の場所を教えてくれた。そこでは麻酔の方法、麻酔のリスクなどについて説明を受ける。どっちにしろ麻酔を受けないわけにもいかないが、私は「まだ若いから」(がはは)そんな心配することはありませんよ、と言われる。
午前中はそれ以外特に用事もなし。お昼ご飯はサンドイッチでした♪山のようにあるが、全部平らげる(残すのが異常にもったいなく感じるのよね)午後からはTVを見たり、本を読んだりしてごろごろ。TVでは内田康夫の浅見光彦もの「平家伝説殺人事件」(とかなんとか言う題名だったけど、違ってるかも^_^;)をやってたので、ベッドに寝そべりつつ見入る。主演は水谷豊。お母様役が乙羽信子で、お兄様で警察のお偉いさん役は・・・う〜ん名前が思い出せないがとにかくすでにお亡くなりになってしまった人だ。かなり昔のヤツだなあ。しかし、なんで「平家伝説」?と思いつつ見ていると、看護婦さんがやってきて、抗生剤のテストをします、という。四種類の抗生剤を少し注射してみてアレルギー反応などが出ないかどうかを見るのだとか。もともとアレルギーというものには縁がないのですが、今回も難なくパス。よかった(^_^;)抗生剤も使えないとなると、回復もおぼつかないような気がするし。「平家伝説」が終わる頃、担当医の先生がやってきて病状と手術の内容の説明をします、という。「カンファレンスルーム」というところに家族とともに入り、先生の説明を受ける。私は何度か聞いているし、病気のことについても本やネットで調べ尽くしていたので特に気になることもないが、家族はちょっとショック受けたかも。それに、今のところ良性の所見だが、取り出した後それを病理で調べてみて、悪性であればさらに広範囲な手術(リンパ節郭清とか)が必要、なんていわれるとあまりいい気分ではないですな。まあ、お医者さんとしては悪いほうの可能性も色々話しておかないといけないのでしょう、と自分を納得させる。あ、これが「インフォームド・コンセント」なんだ〜。麻酔の同意書や手術の同意書を書いたり提出したりして、家族も帰る。
ではここで昨日から読み始めていた本の話でも・・・『略奪』LOOT(アーロン・エルキンズ/笹野洋子訳・講談社文庫)。エルキンズの本は今まで全てミステリアス・プレス文庫から出ていて、あのオレンジ色の背表紙が本棚にズラリと並んでいるのですが、今回はなぜか講談社だぞ。講談社は実は苦手なのだ。なぜかど〜も読みにくい。しかも高いぞ〜(怒)550ページの長編とはいえ、税込み1200円とはひどいわよ。入院の予定がなかったら、当分買わなかったかもよ(入院読書にいいかな、と思って高いけど買ったんです)・・・愚痴愚痴言ってもしょうがないのでストーリーのご紹介に移りましょう。実業家、美術館の学芸員、ハーバードの教師を経て現在は「個人相手に美術コンサルタントのようなことをやるかたわら、時には警察や税関の相談にものっている」わたし(ベン・リヴィア)は、親しい質屋のシメオンから店に持ち込まれた絵画のことで相談を受ける。ベラスケスの可能性がある、というシメオンの言葉に半信半疑出向いたわたしは、それが第二次世界大戦中、ナチスによって略奪された「トリーホス伯爵」だということを知る。やがて、シメオンをはじめその絵画をめぐって起こる殺人事件に巻き込まれたわたしは、ナチスの略奪絵画を追ってヨーロッパを駆け巡る。
うふふふ(^_^)楽しいなああ。なんで今回はクリス・ノーグレンじゃないのかはよく知らないが、相変わらず絵画の薀蓄たっぷり(というより、大戦中のナチスの絵画略奪の経緯のほうが主眼ですね、今回は)しかし、略奪された絵画というのはなかなか難しい問題を孕んでいるらしいです。絵画の売買というのも、表に出せるものと、闇取引しか出来ないものといろいろなんですねぇ。マフィアがいろいろ考えるのもうなずけます。頭を絞り、策を弄するだけの値打ちがあるというのがよくわかりました、はい。それはともかく、ベン・リヴィアくんという人物、ちょっと作りすぎ?実業家時代の金で悠々自適(というほどでもないがまあ食っていける)なんてのはいただけませんな。クリスほどには絵画に対する「愛」を感じ取れなかったのは私がイタラナイせいなのか〜。しかし、全編活劇活劇なので、退屈せずに読めることは請け合い(^^)最後にはリヴィアも自分の道が見えかけてきたみたいで、今後に期待です。ステッテンじいさんにはまいったし、ヌスバウムさんも娘夫婦にときどき?贈り物でもできるようになったし♪めでたいぞ(*^^*)
そうこうしているうちに夕食も食ったし・・・ところが今夜は大変なことがまちうけているのだぁぁあ。みなさんはご存知だろうか?全身麻酔をする場合、腸を空っぽにしないといけないということを!そうなんです、手術前夜のこの夜、私は数十年ぶりに浣腸と言うものを経験しました(^_^;)おなか痛くならないでしょうか?と気弱に聞く私に看護婦さんはう〜ん、そんなことないみたいですよ(にこ)と優しく答えてくださったが、とにかくできるだけ我慢してくださいと非情なお言葉。結局、冷や汗が流れるほどの腹痛に見舞われただよ(泣)明日の朝、も一回しないといけないんだぁ、と思うだけで眠れなくなりそうな入院第二夜(手術前夜)なのでした。(つづく)

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第三日め…2001年2月16日(金)…
ふぅ・・・昨夜に引き続きもう一回アレして(今回は五分間は我慢してください、と念を押された)もうくたくたですぅ(^_^;)しかし、個室で本当にラッキーだった。みなさんも手術の前には個室に入られることをお勧めします。
朝ご飯ももちろん食べられないのですが、食欲もないのでそんなに苦痛ではない。TVをつけてNHK連ドラ「オードリー」を見たり、本を開いたりして時間が過ぎるのを待つ。昨夜から読み始めたのは『本陣殺人事件』(横溝正史)。入院前にブックオフの100円コーナーで見つけて買っておいたのだ。おどろおどろしさが入院読書にぴったり?かどうか(^^)そのうち看護婦さんがご機嫌伺いと検温に。相変わらず微熱だが、手術は予定通りです。婦長さんもこられて、大部屋が空いたので手術後はそちらに移る、ということでも良いか?と聞く。申し訳無さそうにおっしゃるが、私としてはお金も払わずに個室に入れてもらっているのですから、文句のあろうハズもありませんとも。
9時半頃か、看護婦さんが手術着を持ってきて、着替えて置いてくださいね、という。なんだかぶかぶかしたそのキモノを着て待っていると、家族もやってきた。いよいよですゾ〜。
手術室に入るまでのっていくストレッチャー(?)に乗り移り、天井を見上げながらごろごろ押されて移動。手術室の前室みたいなところで再び手術用ベッドに移動。帽子もかぶせてもらい、手術室に入りました。麻酔や点滴をはじめる段になって、点滴の針を刺すのを、救急救命のほうからきている研修の人にやらせてもらって良いか?と聞かれた。突然のことでびっくりして、一瞬意味がわからなかったけど^_^;もちろんOK〜(痛くなければ)そんなこんなでテキパキ準備は進み、麻酔も入って・・・
で、目が覚めたとき、人工呼吸の管がまだ入っているのでびっくりしないでくださいね、と事前に言われていたのですが、実はそのときのことを私は全然覚えていない。手術室を出るときのことは覚えているし、いったん個室に戻って、大部屋に移されたことも覚えているのだが。10時過ぎに手術室に入って1時過ぎ頃出てきたらしい。
この日の午後は結構ハイテンションになっていたような気がする。そばにいる家族にベラベラとかなりしゃべっていたみたい。TVが見たいので、前にいた個室にまだTVカードが入ったままになっているから取ってきて、とかいってとってきてもらったり、大部屋になったのでイヤホンがいるんだから買ってきて、と言って買ってきてもらったり。しかしTVはわずらわしくて全然見ることが出来ない。仰向けのまま身動きが取れないのでTVのリモコン一つ操作できないし。退屈だから本でも読む、と言って例の「本陣殺人事件」を持たせて貰ったが、読めるように本を支える力がないのでやっぱり無理。結局うとうとしながら午後を過ごす。執刀した先生がやってきて、ちょっと手術する範囲が大きくなっちゃったので、予定より少し時間かかるかも、とかおっしゃる。なんとなく納得。再発するよりましだし。夕方には家族も帰る。
午後8時になると病棟には面会時間の終了を告げる放送が流れる。その放送で目が覚めたのですが、その時、私は自分を襲う悪夢のような、っていうか地獄のような一夜を予感していたような気がする・・・。
とにかく、背中といわずお尻といわず、そこらへん中が痛いのだ〜(泣)傷が痛いのではないの。「傷が痛くありませんか〜?」とは何べんか聞かれたが、そうではないのよ。背中が、腰が痛いのよ〜(泣泣)立てひざはしてもかまいませんよ、と言われたのでひざを立ててお尻を浮かせてみたり、色々試すが限界だあ〜。しかも時間がわからないので、夜が明けるまでの時間が無限大に長〜い。看護婦さんに訴えても無駄。ちょっとならこっち向いてもいいですよ、とかいうけど、そっちもどっちも体の向きを変えることは不可能(T_T)寝返りってどうするんだったっけ?(手術後二週間にもなろうとする現在も、いまだ寝返り打てずの状態は続いております)そして悪夢のクライマックスはこの後すぐ・・・
私はもともと胃が弱い。ときどき胃痛を起こす。ストレスがすぐ胃にきちゃうのね。そして私はこの段階で丸一日以上物を胃に入れていない。空っぽの胃が極度のストレスにさらされて、ものすごい痛みにおそわれてしまったのだ〜(涙)こんなに痛いのは久しぶり。しかも身動き取れないし・・・。ちょっと横向きになって、牛乳かなんか胃に入れたら和らぐことは分かっているのですが。ついに辛抱たまらずナースコールして看護婦さんに訴えると、舐めるタイプの薬をくれた。でも全然効かないぞ〜。再び様子を見にきてくれたのでこんどは水をほんの少し飲ませてもらう。時間を聞くとまだ四時だって(泣)夜明けは遠い・・・(つづく)

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第四日め…2001年2月17日(土)…
それでも二時間くらいは眠れたらしく、気が付くと明るくなっていた。ほっっ^_^;検温や血圧を測ったりしてもらううち、朝ご飯の時間。昨夜の胃の激痛の後遺症は少し残っているけど、この際何かおなかに入れたほうが楽になるに違いない。ようやくベッドをぐりぐりと起こしてもらえて、腰や背中も楽チンになった♪ご飯はおかゆにお味噌汁、おかずもついているけど、おかゆと味噌汁を半分ずつくらい頂く。おいしくはないけど(^_^;)消化器系の病気ではないので、今夜にも常食に戻れるのはありがたいです〜。
看護婦さんが体を拭いてくれる。くるっと転がして寝巻きも取り替えてくれた。ついでにおしっこを取っていた管もぬいてくれたので、もう動いても良いってことなのね(^^ゞ点滴は今日いっぱい続けるし、傷口から出る血その他を出す管もつないだままなので不自由ではありますが。再び横になっていたけど、思い切って起きてみよう。手をついて起き上がることが出来ないので、腹筋を使ってえいっ、とばかりに起き上がる。私はもともと腹筋が強いほうなのでいいけど、お年よりなんか起き上がるだけで大変でしょうね〜(T_T)点滴をガラガラ引きずってトイレにもいけたし、もう安心ですね。先生もやってきて、肩はまだ動かしたらダメだけど、手や肘は積極的に動かしてください、と言われた。グーやパーをしてみて、しびれているような感じはありませんか?などときかれるが、特に問題なし。
お昼ご飯もまだおかゆ(T_T)でもおかずは全部食べた(食ってばっかりですな)あんまり動き回ることもできないのでベッドにあぐらをかいて本を読む・・・・というのも、やっぱり昨夜の苦痛を思い出すと、なるべく横になりたくないのです。周りのベッドはおばあさんばかりで、ほとんど横になって眠っているが、あんなに寝ていてよく体が痛くならないなあ。この日以降、夜以外はまったく横になることなく過ごしました。(それでも7時間が限度で、それ以上寝ていると痛くて目が覚めるのよ!)
さてさて、昨日手術後に手に持たせては貰ったが、結局読めなかった『本陣殺人事件』(横溝正史・角川文庫)。横溝正史というと、中学時代に映画全盛期だったような。あの雰囲気を文字で読まされてはたまらんと、本はまったく手にとったことがなかったのだが、どうやらそんなに忌み嫌うほどの事はなかったみたい。この本には中編がみっつ収められている。『本陣殺人事件』は金田一耕助初登場の作品で、第一回探偵作家クラブ賞長編賞というのを受賞したそうだ。右頬に大きな傷、そして右手には三本の指しか残っていない不気味な男が、かつてその地の本陣であった一柳家の場所をたずねたのは、当家の主人賢蔵の婚儀を明後日に控えた日のことだった。周囲の反対を押しての婚礼ではあったが、ともかくも無事に迎えたその夜、恐ろしい悲鳴が屋敷に響き渡ったのだ。そして続いて聞こえてきた琴の音。離れ座敷にはずたずたに斬られ血塗れになった新郎新婦と、金屏風に残された三本指の血の指跡が。離れの外の石灯籠のそばには日本刀が突き立っていたが、その離れは完全な密室だったことが分かる。
この、小道具の使い方、たまりません(^_^;)不気味な三本指の男のの正体とは?琴の音に秘められた真相とはぁぁあ?水車のまわる音や、玉公のお墓もいい雰囲気出してますね。そして密室のからくり♪力学にはとんと弱い私なので、ホンマに〜?という疑問は残るものの、面白いからOKです(^^ゞそれよりも、共犯者(?)の特異な性格、というかこいつの取った行動のほうがよっぽど不可解だ。世のミステリマニアのみなさんには、こいつの心理が共感できるでしょうか(笑)それに比べると犯人の動機のほうがよほど分かりやすい。時代背景というものもあるかもしれないが、現代にも結構生息していそうな気がします。怖いっすね・・・
『車井戸はなぜ軋る』この話は好きだわ。猜疑と恐怖と緊張を与えることによって成就された復讐劇。げに恐ろしき〜(T_T)でもこの手紙形式が、かえって臨場感あっていい感じ。『黒猫亭事件』「顔のない死体」の正体は?黒猫のマスターの愛人鮎子か、はたまたマダムの繁子なのか。死体があるんだから、どっちかが殺されたんだと思うよね(^_^;)マスターのかかわり方がちょっと無理っぽくないだろか?つまりぃ、男のほうが無邪気すぎなのだわ。
夕方最後の抗生剤の点滴が終わると、点滴の針も抜いてもらえた。これでガラガラ引きずらなくてすむ。身軽だ〜(^^)しかし病院中ガラガラだらけ。みなさん大変ですね・・・。あと、傷口から出る液をためている袋だけは首からさげてある。邪魔です(T_T)夕飯はもう常食に戻った。ご飯以外は全部食べる(ご飯は多すぎるので少なめに変えてもらうことにした)夜になってTVをつけてみると、畑山隆則とリック吉村のタイトルマッチをやっていた。普段格闘技は全然見ないわたしですが、珍しいのでずっとみてしまう。格闘技のなかではどちらかというとボクシングはなじみがあるほうかもしれません。「あしたのジョー」は愛読書といってもいいくらいだったし(^^ゞしかし本物はあんまり見たことなかった。素人目には畑山のほうがおされているようだったけど、挑戦者のほうに反則のマイナス点がついたりして、結局引き分け。引き分けの場合はタイトルはそのまま畑山のものらしい。なあるほど。
そろそろねなくっちゃ。平らに寝てしまうと、傷口が引っ張られて痛いので、背中に薄いクッションをあてて楽な姿勢をとる。ようやく落ち着いたが、TVのリモコンが手の届かないところにおいてあることに気付く。げげげ(T_T)眼鏡もかけたままだった。げげげげ(T_T)またえっちら起き上がらなくてはならない。明日からは気をつけよう、となかばあきらめムードに笑ってしまう私なのでした。(つづく)

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第五日め…2001年2月18日(日)…
腰が痛い・・・どうもあお向け寝は苦手です(ーー;)体がカチカチになったような感じで、昨日出来ていた腹筋起き上がりも今朝は出来ない。ベッドの左側の柵にしがみつくようにしてようやく起き上がれました〜^_^;時計を見るとまだ六時前ですが、もう寝られそうにもありません。ベッドにあぐらをかいてしばしボーゼンとしていた。TVをつけてニュース番組などをみつつ、時間が過ぎるのを待つ。7時前には看護婦さんが朝の見回りにやってくる。まだ右手があんまり使えないけど、身支度などしていたら、朝ご飯の時間。TVを見ながらのんびり食べる。
ご飯もおわって、顔も(簡単に)洗ったりして、ぼんやりしていたら朝の回診の時間。今日は右脇のしたから傷口のあたりにしてあった圧迫を取ってくれた。ガーゼだけになると妙に不安定でちょっと怖い(T_T)でもまだ傷口の管はのこしたままなので、浴衣式の寝巻きの前がしょっちゅうはだけている。気をつけなくっちゃ^_^;
回診が終わってしまうと、入院生活って別にすることないものなんですよ〜。TVも、うちにいるとBGM代わりにずっとつけてたりする私ですが、ここではよほど見たい番組でもない限り面倒くさくって見ていられない。だって、イヤホン使わないといけないし。何か疲れる・・・。新聞を家から持ってきてもらったので、ぼちぼち読んでいると、びっくりした!というテーマで本の話題がのっていた。このテーマで読者から推薦があったミステリが二冊紹介されている。(※後日両方読みました。題名をクリックすると感想に飛びます『トレント最後の事件』(E・C・ベントリー)と『8(エイト)』(キャサリン・ネヴィル)。すいません、どっちも読んでません^_^;とくに『8』のほうは最近文庫になったのは知っているのだが、なかなか見かけませんね。とりあえず退院後のために覚えておこうっと。ほかに『占星術殺人事件』(島田荘司)と『ロートレック荘事件』(筒井康隆)のことなども書いてあった。ぐ〜ぜんだが、『占星術殺人事件』は入院中に読もうと思って持ってきているのだ。ちょっとにやりとしつつ(^_^)来週の日曜日にはまた、いろいろ紹介してくれるのだろうか?ちょっと楽しみ♪
そんな私はいま、何を読んでいるのかというと・・・『黒猫館の殺人』(綾辻行人・講談社文庫)。「館」シリーズもついに六作目。この前の「時計館」の大掛かりなトリックに、面白いんだけどちょっと疲れさせられてしまった私としては、あんまり厚くないこの本にはさほどの期待はしてなかった。稀譚社という出版社の編集者江南のもとへ、鮎田冬馬と名乗る人物から電話がかかってきた。作家鹿谷門実の担当者のかた、と指名してきたその相手は江南にとって忘れることの出来ない名前を口にする。中村青司―彼の設計した数々の「館」で起きた悲劇の話を読んだという鮎田は、自分がかつて「黒猫館」の管理人をしていたときにおきた事件をつづった手記を差し出す。そこには「黒猫館」で起きた殺人事件が記されていたが、鮎田はその後記憶喪失になってしまったというのだ。果たして「黒猫館」は実在するのか?そして事件は実際におこったのだろうか?
この小説の構成、というか展開はすごくいいなぁ。余計なものがなくって、すっと入り込める感じが好き。手記が創作なのか事実なのか、という問題が一つ。鮎田という人物の不透明さも問題だし。事件に対する鮎田氏のかかわり方の不自然さは一体・・・?と思ううちに「黒猫館」が徐々にその姿をあらわす、というのはなかなか面白い。どっちかというと地味なんだけど、バランスがとってもいい感じで、個人的にはこういう作品は気持ちよく読める。奇抜なトリックなどというものもないが、伏線を探るのが楽しいし。しかし、気が付かない伏線がいかに多かったことか^_^;こいつは伏線か〜?とおもっても、それが指し示すものがわからないことも多いし。ミステリを読もうと思ったら、まず雑学を山ほど頭に詰め込まないといけないのね(^^ゞ
日本の作家が続いたので、次はラヴゼイなど。家人に「本棚の・・・の・・・にピーター・ラヴゼイって言う作家の本が二冊くらいあるハズだから持ってきて」と頼んだら、手帳にメモして^_^;探し出してきてくれたのでした。感謝。
今夜はTVが結構おもしろい。「さんまのスーパーからくりTV」「北条時宗」ときて9時からは「シュリ」を見た。北朝鮮の女工作員(凄腕!)を、そうとは知らずに愛してしまった韓国の情報部員。微かな不信感がだんだん大きくなって・・・。女工作員のほうも、自分に課せられた任務や、祖国への思いと、愛する男のはざまで苦しむ。北朝鮮のひとたちの「祖国」に対する考え方はようわからん。疑問もたくさんもっているんでしょうね?多分。しかし、人がバンバン死ぬのがすごすぎる。平和ぼけニッポンに住んでいるせいで、いまいち実感が伴わないのか(ーー;)金賢姫の手記も読んだことあるけど、北朝鮮と韓国の緊張の実態って、そんなにすごいの?!怖いです〜・・・
最後までみたら、11時過ぎてしまった。今日は慎重に用意をして眠る態勢を作る。なんだか無性に首からさげている袋が邪魔で、うまく姿勢が決まらない。あっち向いたり、こっち向いたり、枕から頭を落としてみたり、また乗せてみたり。眠るのも結構苦労ですぞ。(つづく)

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第六日め…2001年2月19日(月)…
月曜日がやってきた。本当に今週中には退院できるんだろうか?ちょっと不安だけど、まだ管につながっているようなことじゃあね^_^;朝の検温では微熱が続き(しんどいことないですか?い〜え全然、という会話が繰り返される)血圧はやっぱり低い。あんまり気にしたことはなかったけど、上が80ちょっとくらいしかないので、毎回「血圧は低いほうなんですね?」と念を押される。そうなんですよ(^_^)
朝ご飯を食べてぼけっとしていたら、朝の回診の時間がやってきた。今日は管を切ってしまいましょうね、といってチョキチョキっと切ってくれました♪もう袋を頭から下げなくっていいんだ〜わ〜い\(*^▽^*)/でっかいガーゼを当ててくれて、汚れたら取り替えましょうね、といわれた。今日から肩もどんどん動かしてくださいとも言われる。動かさないと肩の関節が固まって動きにくくなるそうだ。腕を上げてみて、というので恐る恐るあげてみたが、肩より少しあがるくらい。ちょっと無理をすると・・・いててて(T_T)痛ぇ〜よ!リハビリのパンフレットを貰ったけど、特にプログラムというのは無いみたい。自分で頑張るしかないわけね^_^;そして、「胸帯」をつけて抑えておきましょう、という。「胸帯」は入院するときに、必要なようなら用意しましょう、といわれていたので、まだ買ってない、というと、やっぱりあったほうがいいから売店で買っておいてね、と言われた。六階の病室から、一階にある売店までいってみることにしよう。
一階は外来初診の受付やら、清算窓口などがあるので、人がたくさんいる。病気の人ってほんとに多いですよ〜。でも久しぶりに外の空気(でもないんだけど)に触れた感じできょろきょろしてしまった。売店の人にいって「胸帯」というのを見せてもらうと、なんと2500円もするじゃないですか!二枚買うつもりだったけど、とりあえず一枚にしておいた。
病室に帰ってまたまたボケっとしていると、看護婦さんがやってきて体を拭きますか?と聞く。はいはい(^^)「胸帯」も買ったというと、背中を拭いてくれて、「胸帯」もつけてくれました。一枚しか買わなかったんだけど・・・というと、そうですねえ、汚れるかもしれませんから・・・と言われた。もう一枚買っとこうかしら。きょうから寝巻きはやめて、パジャマにしてしたので、動きもらくになった。この日くらいから食事は病棟の食堂で食べることにした。食堂、といっても別にそこにメニューがあるわけではない。食事のお盆を運んできて、面会にきた人とかと一緒に食べることができるわけ。病室で辛気臭く食べているよりよっぽどのびのびする。
午後、窓から外を眺めていると、なんだかいい天気だわ〜。ぽかぽかあったかそうで(*^^*)ちょっと出歩いてみようかしら、と思い立ちまず一階の売店まで階段を下りていく。飲み物など買って今度は屋上(九階)まで階段を上ってみました。ぜぃぜぃ^_^;ちょっと息切れしたけど運動しなくっては〜。屋上には入院患者さんの洗濯物が干してあったりする。長期になると大変ですよね。ちょっぴり風があるけど、本当にいい天気だ〜♪屋上からは眼下に瀬戸内海が望め、その向こうには宮島も見える。ベンチに座ってぼんやりするのは気持ちいい。屋上をぐるぐると歩き回ってから、病室に戻った。
家人が帰るのを送りついでに、再び売店へ。「胸帯」をもう一枚買っておいた。(結局これ使わなかったので、退院するときに、返品できますか?ときいてみると、あっさり引き取ってくれた(^^)よかった)
運動もしたし、なかなか体調もいいので、ベッドの柵に寄りかかって本を読み始めた。今日は『帽子屋の休暇』Mad Hatter's Holiday(ピーター・ラヴゼイ/中村保男訳・ハヤカワミステリ文庫)。Mad Hatter(気ちがい帽子屋)とはなんじゃろか?訳者のあとがきによると、as mad as a hatterというイディオムがあるそうだけど。英国最大の海水浴場ブライトンに夏の休暇をすごしにやってきたモスクロップは、双眼鏡で海岸線をのぞいていたときに見つけた一人の女に惹きつけられる。苦労して彼女と近づきになったモスクロップは、彼女(ゼナ)の夫の不審な行動に疑問を抱く。ある朝、海岸近くの水族館で、切り落とされた女の手首が発見される、という事件が起きた。同時に姿を消してしまったゼナのことが気になるモスクロップは、事件の調査のためにスコットランドヤードから派遣されてきたクリッブ部長刑事に事の次第を訴える。
舞台は1882年の夏、英国の有名な避暑地ブライトン。こういう物語は風俗の描写が楽しめていいですよね(^^)時代背景がのんびりしているせいか、モスクロップも現代に持ってくるとずいぶん気味が悪い人物だろうけど、この物語の中ではどっちかと言うと滑稽な感じで親近感さえ感じてしまう(というのは大げさかしら)。避暑地の雰囲気のせいで、クリッブの口も滑らからしく、サッカレイともよくしゃべる。やっぱりみんな少々浮かれてしまうんでしょうね(^^)物語はたいした山場もないままに第二の殺人(?)が起こってしまう。こっちのほうが本筋なんだろうな?最初のは、あとのほうのきっかけに過ぎないのかも(だって、たいした謎も無いし)ゼナの夫のプロセロの行動は無理やりなぞめかしてあるみたいで、少々必然性に欠ける気がした。なんとなく焦点が合わない感じのまま物語は進んで、最後にはそうくるか〜。プロセロという人物がいまいち飲み込めないままに、こんな解決をされても困ってしまうけど、このトリックが使いたかったのかしらん。時代物ならではの面白さは確かにあるけどね^_^;(どうも、入院読書ではお点が辛くなりがちですねぇ。)
今日も夜はTV三昧。8時からは「HEY!HEY!HEY!」9時から「HERO」10時から「スマスマ」を見てしまった。こちらでは「ガキ使」が月曜深夜にあるので、本当はこれも見たかったんだけど、さすがにあまり遅くまでTVをつけておくのは憚れる。11時過ぎたし、寝ることにしよっと。信じられないかもしれませんが、周りはもうすっかり真夜中の雰囲気です・・・。(つづく)

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第七日め…2001年2月20日(火)…
相変わらず早く目が覚める。家にいるときにも、こんな風ならいいんだけど(^^ゞやっぱり起き上がれないので、柵のご厄介になる。ベッドの柵っていうのは、重要な役目を果たしているんですよ!
朝の見回りと検温と、そしてお食事。いつもと同じスケジュールですが、今朝から朝ご飯も病棟食堂に運んで食べた。さすがに朝は人がいない。静かな雰囲気のなかで、誰かが置いていってくれたちょっと昔の週間文春や、週間新潮を読みながらの食事は入院生活最大の楽しみといってもいいかも。結構面白いよね(^^)
今日の朝の回診では、昨日切ってくれた管(ドレーン)を抜きましょうね、と言われる。キョ〜フ^_^;痛そうじゃないですか!体を硬くしていたら、なんだかちょっとくすぐったいような痛いような感触が。あれ、もう抜けたんですか?ほっっ♪
いよいよ、傷口にはガーゼが当てられているのみ。安定感がなくなって、かえって痛みがあるような。傷もよくなってますよ、とはおっしゃるが、薬かなんかつけらられても、なんだか変な感触があるのみだ。がんばって運動してくださいね、といわれて診察もおしまい。
昨日、看護婦さんに頼んで美容院を予約しておいて貰った。もう、アタマが限界〜(>_<)まだお風呂というわけにはいかないので、シャンプーだけでもしてもらおう、というわけ。10時30分の予約に間に合うようにお財布だけ持って出かける。美容院には先客もいたけど、ちょっと待っていたらすぐにシャンプーしてくれた。え〜と、木曜日に洗って以来だからずいぶん汚れているハズ。ごしごしやってくれるけど、いまいち満足できない〜(ーー;)もうちょっとごしごししてくれよぉ、と言いたかったんだけど、気弱な私は結局不満なまま言い出すことも出来ず(T_T)でもまあ、すっきりしたことは確かです。しかし、20分足らずのシャンプー&ブローで2000円も取られたのは高くない???ぷんぷん。
お昼ご飯はおうどん。めんとおつゆが別々のおわんにはいっていて、えっ?っと思ったけど、そうか、めんがのびないようにという配慮なんですね〜(^^)色々考えてあるものだわ、と感心。
今日もいい天気です。昨日よりはやや気温は低めかもしれないけど、昨日があったかすぎたのね。今日もまた、屋上で日向ぼっこした。屋上からながめる海はキラキラしていてまぶしい。埋め立ての進んだ沖のほうには新しい橋も出来ていた。まだ車は走ってないみたいだけど、退院したらちょっといってみようかな、なんて思う。
昨日からまた新しい本を読み出している。『占星術殺人事件』(島田荘司)。しかし今日は病室でもなんとなく窓の外を眺めて過ごしてしまう。近くには学校のような建物も見える。病院のすぐ裏にJRと私電の線路が走っていて、その沿線の町並みはずいぶんごちゃごちゃとした立たずまいだ。しかし、遠くには山を切り開いて大きな団地も造成されている。その割には道路が整備されていないよね〜、とつくづく思ってしまった。
今日はさほど面白いTVもないので、夜の時間はもてあまし気味(ーー;)本も読んでいるけど、少々疲れてきたよ。しかし、あんまり早く寝ると、また早く目が覚めるしな〜。どうしよっかな・・・(つづく)

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第八日め…2001年2月21日(水)…
とほほほ〜(T_T)やっぱり早く目が覚めたぞよ。しかし、腰が痛くって寝てられないのでとりあえず起き上がる。まだ5時過ぎじゃん。しばらく腰をさすったり、屈伸したりしてから、もう一度横になった。ちょっと痛いけど結局また眠ってしまって、気がついたら看護婦さんの見回りの時間になっていた。
朝のスケジュールも特に変わったことなし。回診のときも、傷口を消毒?かなにかしてくれただけ。まだ恐ろしくて自分では傷を見ることは出来ない。ガーゼ交換のときも目をそむけていた。運動してる?と聞かれたので、ぼちぼちですぅ(^_^;)と答えておいた。前方から上にはかなり上がるようになっているけど、横方向から上にあげようとすると突っ張って痛いっす。毎食後10回づつ腕を上げる練習をしている。私って結構まじめなのですよ(^^)しかし、ストレスたまる・・・。
退屈なので、また売店までいってみる。一階はやっぱりすごくたくさん人がいる。この病院、以前お見舞いにきたことは何度かあるのだけど、前はもっと狭苦しかった。2年くらい前?に立て直してずいぶん広々と明るい雰囲気になった。看護婦さんもお医者さんも丁寧で優しいし、いい病院です(^^)売店でちょっとお菓子などを買って病室に戻る。体を拭くタオルを配ってきたので、私も貸してもらった。しかし、背中に手が届かない。思わぬ苦労があるものです。
今日は打って変わって天気が悪い。午後からは終日ベッドの上で過ごす。TVは基本的には見ない。『占星術殺人事件』(島田荘司・光文社文庫)も佳境だあ。「私は悪魔憑きである」内なるデモンに攻め立てられ、私はデモンの要求するところの「完璧な女」をこの世に作り出さなければならない。六人の処女から取ったからだの各部を持ち寄って、一人の女(アゾート)を作り上げるのだ。この恐ろしい手記にしたがって、やがて日本各地で六人の女のバラバラ死体が次々と発見される。手記を書いた男は、それに先立って殺されている。誰かが手記を書いた男の意志をついで、「アゾート」を作ったのか?占い師、御手洗潔がこの40年も昔に起こった未解決事件の謎に挑むことになったのは、ある女性からの依頼があったためだった。驚くべきことに、女性の父親は、この六人の死体を埋める役目をさせられたという手記を残していたのだ。新たな事実を手がかりに、御手洗がたどり着いた真相とは?
と、要約を書いてみてもすごすぎる内容(^_^;)導入部のものものしさにはちょっとひるんでしまいますね。ホントか嘘かしらないけど、西洋占星術に関する薀蓄が語られる。気味悪いぞ〜。考えてみるに、星占い♪なんて少女チックにいうと可愛らしいが、占星術というのは元来気味の悪いものなのかもしれない。魔術や呪術に発展していった歴史もあるんだろうし(いや、実はまったく詳しくはないんですけどね)なんて思っていると、御手洗氏と、石岡氏の登場。ホームズとワトスンかな(^^)しかし、御手洗氏、話の途中でホームズものをずいぶんこき下ろし、私は大笑いである。なんか、愛を感じてしまった。(プルプル笑っている私は相当ヘンだったかもね、他の人から見ると)
最初のころは、緯度だ、経度だ、4・6・3だ、と数字ばっかりでてきて、めんどくせ〜。こういうのはダメなんだよね、私・・・。しかし、東経139度にまつわる話、なんかは面白い。アゾートの隠し場所論議が一段落し、いよいよ殺人事件の核心ともなる、竹越氏の手記が出てくる。そしてついに一週間の期限での謎解きが始まって・・・。
やたらと石岡氏の行動に付き合わされてしまったのは不満ですが。ワトスンの行動に意味があるのか〜?と思いつつ(^^)でも、まあわかんないもんね。これはこれで、結構楽しめました。しかし、さすが名探偵!御手洗のほうは、ちょっと違う世界にいるらしい。この真相はすごいですね。昭和11年という年代をうまく利用したもんです。犯人が・・・だとすると、ほかの事件との整合性も確かによく考えられているし。真相までには、ただ一点の事実だけなんだけど、目くらましがすごすぎて、ちょっと気がつかないわ〜(^_^;)いわれてみると、超クヤシイ。でも最後には、御手洗にとっても、犯人にとっても、必然とも言えるこの出会いがあって、本当によかったと思えたものです。この読後感はちょっと意外だったな。
夕方、担当医の先生がきて、順調なら週末に退院ということにしましょうと言ってくれた。よかった〜(^^)家に電話をしてその旨を伝えた。お金も用意しなくってはいけないし。一体いくらくらいかかるものなんでしょうか?まったく分かりませんね〜・・・。
今夜もTVはたいして見ない。でも、本当は水曜日には深夜番組を見るのが習慣なのだ。録画のセットもしてないので、本当は起きていたいのだけど、やっぱり無理だわね。(つづく)

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第九日め…2001年2月22日(木)…
今日はまず採血から。この結果如何で退院できるかどうかきまるのだ。といっても、別に心配しているわけでないけど。今日の朝食は食パン。微妙に温めてあるパンに、袋入りの柔らかマーガリンといちごジャム付き。マーガリンをパンにのばしていると手がべたべたになってしまったけど、久しぶりに食べるジャムが嬉しくって(^^)
朝の回診では相変わらず運動してくださいね、といわれ、看護婦さんには「どのくらい(手が)上がるようになりましたか〜?」と聞かれる。う〜ん、このくらいです、とやってみせると、ハイハイ、と言ってくれるけど、一体順調なんだか?気にしても始まらないのでせいぜいリハビリに励むけど、なんとなく落ち込む気分である。
今日もあんまりいい天気ではない。病院内は暖かいけど、きっと外は寒いんだろうな〜、窓をながめている時間が多くなっている。ど〜も、いけませんね(ーー;)こうなると、ミステリでも読んで現実逃避(?)するのが一番。昨日から読み始めている『霧越邸殺人事件』(綾辻行人・新潮文庫)はそれにぴったりの内容なのだろうか^_^;「ですから、探偵小説の中で起こる事件は、やっぱり、なるたけ突拍子もないものであって欲しいもんですな。いかにも現実にありそうな事件をくどくど読まされるくらいなら、警察の捜査記録に目を通しとるほうが宜しい」今のところまったく同感の私。さて、突拍子もない事件に案内してくれるんでしょうねっ?
劇団「暗色天幕」のメンバー八人は、公演の打ち上げで滞在した信州のホテルを出発した。数時間後、突然の吹雪に行くべき道を見失った一行の前に忽然と現れた湖と巨大な洋館。助かった・・・、「霧越邸」を目にした誰もがそう思ったそのとき、見えない糸にあやつられた運命はすでに動き出していたのか。謎めいた住人たち、邸そのものが発しているかのようなメッセージ、外界との遮断・・・。巨大な密室と化した「霧越邸」でついに第一の殺人が。北原白秋の「雨」の詩を見立てたと思われる幻想的な殺人劇は、一体何を物語るのか。
やむことなく降りしきる雪の中、おぼろに、しかしずっしりと存在する「霧越邸」。その中でどんなに華々しく、どんなに恐ろしい劇が演じられていようとも、その周囲では物音一つ聞くことは出来ない。ブラックホールのような、外からは窺い知ることのできない世界。そんな印象をもった。「・・・特にこうして来客があったりすると、とたんにこの家は動き始めます」内在する謎・・・住人たち、家の「動き」、を解き明かす、なんていうのがこの物語の主題でなくってよかった。そんなことをされるとまったく興ざめしてしまう。
「・・・しかしね、どうかな。彼女は―あの真っ白なテラスで純白のレースを纏い、胸に大輪の緋い華を咲かせた彼女は、美しくなかったかい」そう、私はこのシーンのこの美しさが、この殺人劇のクライマックスだとおもったのだ。そう考えた私はおかしいのかどうか、それはよくわからないけど。(このシーンに心を奪われて何度か読み返した私は、もしかしたら犯人にかなり近づいていたのかもしれない。でも、見立てとか難しいし^_^;犯人っていっても色々(?)だし、謎の人影にも惑わされたし、結局深く考えないままだった。あ、いつものことではありますが…)話は変わるが、みなさんは夭折、ということを非常な不幸だと考えていますか?大多数がそうだよね〜^_^;がっ、私はそうでもないのだ。あ、何か責められそう・・・(苦笑)
午後からのめりこむようにして、『霧越邸殺人事件』を読破してしまったので、ちょっと疲れちまった。次は気楽な気分で19世紀の英国へ(^^)この本で最後かな、入院中に読める本も・・・
夕方、担当の先生がやってきて、血液検査の結果もOKなので、土曜日退院ということにしましょう、と言ってくれた。もう、お風呂も入っていいですよ〜、だって(^^ゞう、うれしい・・・はやく、アタマ洗いたい!(これが本当に辛かった)
夜は8時までが面会時間。それを過ぎると病棟は急に夜の雰囲気になる。みんなカーテンを閉めて、それぞれTV見たり、早々と寝てしまったり。でも、私の場合、もうTVカードの残り時間が少なくなってきたので、土曜日の午前中まで持たせるための計算をしなくてはならない。けち臭いと思うなかれ、残したってもう使いようのないカードなんだから。明日は昼間面白いTVあるかな〜・・・夜は「アリー」を見ないといけないし・・・といろいろ考えてTV消してしまった。やっぱりケチだらうか^_^;(つづく)

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第十日め…2001年2月23日(金)…
いよいよ退院もきまったし、このベッドで目覚める朝も明日限りと思うと、なかなか感慨深い(なんちゃって)。入院生活もそんなに悪くはなかった。一日中パジャマで過ごし、好きなように本などよんで、気が向いたら寝転んでTV見ててもいいし、気楽なもんだ(^^)しかし、本当のところ寝転んでTVっていっても、寝転ぶことそのものがほとんど苦痛といってもいいし(寝ると傷が引き攣れて痛いぞ)第一あの手術直後の苦しみは(^_^;)経験しないと、身動きもならずにベッドに寝ているというだけのことがあんなに苦しいとは思わないだろうなぁ、というのが素直な感想です。月並みな感想になりますが、健康が一番ですよ、ほんと。といっても、消化器その他の内臓系の病気でなかったおかげで、食事なんかはすぐに常食になったので、そういう意味ではずいぶん楽だったと思う。病院食ってそんなにおいしいものでもないけど、ずいぶん気を使ってあるとは思うし、唯一の楽しみにさえ感じられるんだから、これが不自由なかったというのはありがたいことでした。
そんなこんなで、読書三昧に明け暮れた入院生活の最後を飾る?本はというと『殿下と騎手』Bertie and the Tinman(ピーター・ラヴゼイ/山本やよい訳・HM文庫)。
ラヴゼイは、ノンシリーズのほうが面白いような気がするが、シリーズものも結構ある。クリッブ部長刑事もの、ダイヤモンド警部もの、それにこの殿下ものといったところかな。殿下ものに関しては以前短編を読んだことがあるだけだが、それはわりと面白かった。といってもキャラがよかっただけのような気もするけど。
時は1886年、ヴィクトリア女王統治下のイギリスで一人の男が拳銃自殺を遂げた。男は有名な騎手アーチャーで、死の直前「きたか、あいつら」という謎の言葉を残していた。腸チフスによる一時的な精神錯乱が原因との評決がくだされたが、彼をよく知るアルバート・エドワード皇太子(のちのエドワード七世)はその評決に疑問を抱き、生前のアーチャーと親しかったバックファスト大佐と協力してひそかに調査を開始する。やがて八百長疑惑などさまざまな問題が浮上するうち、バックファスト大佐が襲われて殺害されるという事件が起きる。
これもやっぱり、19世紀末が舞台。この物語で自殺する騎手フレッド・アーチャーというのは実在の人物らしい。もちろん殿下ことアルバート皇太子のほか、彼の妃アレックスや、母親にして偉大なるヴィクトリア女王なども。謎の解明よりも、アルバート皇太子の私生活のほうが楽しい。「時間に正確で有名な女性」ではなく、やや耳の遠いアリックス妃と殿下の会話もなかなかほほえましく、とくに殿下が妃の誕生日プレゼントとして贈ったオウムのコッキーのエピソードは(これを殿下が手に入れたいきさつは悲劇なんだけど)気が利いている。困った男の殿下ではあるが、そこはやはり育ちの良さかしら(^^)何をするにものびやかである。で、そののびやかな雰囲気は読んでいてとても心地よく、ときどきクスっとさせてくれるユーモアも上品でとてもよいのであるが、いかんせんこれはミステリ、謎解きが大切なのだ。その点では少々間延びするな〜、という感じ(^_^;)起伏や意外性には乏しく、途中で「あっ・・・」と思ったのが、最後に「あっ、やっぱり・・・^_^;」とつながってしまったのは、ちょっと残念だった。まあ、それはともかく、やはり風俗描写が楽しい。イギリス人にとって、競馬っていわゆるバクチであるのは確かだけど、王室といわず、貴族といわず、馬を所有してレースで勝つことは大変な名誉だったみたい。ダービーとか、王族の方々が見にきてたりするあたり、相撲みたいなものなのか(ちょっと違うか^_^;)馬そのものが貴族的なイメージだもんね。それに、王室に対する庶民のスタンスが、日本人が皇族に対する場合とはかなり違うんだろうな〜とも思った。だから、このお話が現実味がある、とまではいえないけど、面白い読み物に仕上がっているのは確かなんじゃないかとおもうんですが(イギリス人じゃないからわかんないけどね。もしかして水戸黄門くらい荒唐無稽なのかしら^_^;)。好みの分かれる本だろうな、ということで一件落着。
退院を控えて、体調万全と言いたいところではあるが、どっちかというとだんだん具合は悪くなるような気がするのだ。腕の付け根が何かでくくられているように突っ張るし、傷の背中側は腫れてきてるし。今朝の回診で、もうガーゼは取ってしまった。そのとき、傷口はよくなってますよ、と言ってくれたが、傷の周辺の感触がおかしい気がしませんか?と聞かれた。自分ではろくに触ってないけど、他人が触るときの奇妙な感触が気持ち悪かったので、そうですね、と言ったら、その感触は当分直りません、と言われてしまった。だんだん範囲は小さくなるけど、完全に元には戻らないらしい。やれやれ。しかし、この背中の腫れはどうなんだろうと思って、夕方主治医の先生が来てくれた時に言ってみた。先生はちょっと触ってみて、水がたまってるんですね、と言った。手術後に入れていたドレーンを抜いてしまうと、どうしても液が内部にたまってしまうらしい。注射器で抜いてみようとするが、固まってしまって抜けない。時間とともに溶けるものらしいので、とりあえずそのままにすることになった。退院することには支障はないそうだ。ほっ(^_^;)
いよいよ、入院最後の夜だ。TVカードをケチっていたおかげで、まだたくさんみれる(^^ゞ11時からはアリーを見よう♪と楽しみにしていたのだけど、それまでの時間、面白そうなのが全然ない。実はこの段階ではまだ、『殿下と騎手』を最後まで読み終わっていたわけではなかったのだが、ベッドの上にあぐらをかいて本を読むのにもう疲れてしまっていた。背中が腫れてたりして痛いので、柵に寄りかかってというのも辛い。寝て読めばいいとお思いだろうが、仰向けで本を支える力がまだないのだ。それでもかなり頑張ったが、10時ごろ、ついに横になってしまった。11時になったら、また起き上がってTVをつけようと思っていたが、その時がきたときには、もはや起き上がる気力がなかった(^_^;)こうして最後の夜は、無気力に過ぎていったのでした。
・・・というわけで、翌日の2月24日(土)、無事に退院いたしました。家に着いたらすぐに風呂に入ったのは言うまでもありません(^^)極楽、極楽〜と陳腐なセリフで・・・(終わりっ!)

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