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このコラムは1993年から2005年まで手作りチラシ「MYDOやまます酒店です」に書いたものです。
その後は上のちゅうぶラリン」にて25回にわたり「初心者のための日本酒講座」を連載しました。
内容に関しまして正確ではないもの
もあるかもしれませんが、ご容赦ください。

TITLE リスト

ショック!
純米酒の復興なるか?
数字をとるのか、質をとるのか
純米酒の水割り
治さなきゃね
消費者ニーズに隠された罠
日置桜 5年熟成酒 「時の匠」
私ちょっと迷ってます…。
渋い酒の会
自分で熟成酒を作ろう!
ショック!

 開店して以来、はじめて月末の日曜日を定休日にさせていただいた。地域振興券が使用できる初めての日曜日ただなんとなく、ふところに余裕があるような気がしていたのは私だけではないでしょう。振興券はしっかりと妻が握っているにもかかわらず・・・。別に、これといって贅沢をするわけでもなく必要最低限の買い出しでしたが「これ買ってみようかな、振興券で」なんて考えながら売り場を歩くだけでもいいもんです。

 知り合いのアクセサリーショップに立ち止まり(何も買わなくてゴメンナサイ)「最近どう?」の立ち話。新しいピアスをウィンドウショッピング。アクセサリーに目がいくなんて、これって心豊かなのかなぁ・・なんて思う自分に微かに満足。
 小休止の間、子供達はソフトクリームに夢中になり、私は買い物客を眺めていました。自分の気持ちのせいか、なんかみんな久しぶりに見るほのぼのとした顔つき。「うーん、今日はいい日かもしんない」
 ぶらっとして、ぼーっとして時間はそろそろ夕ご飯の時間になってきました。この日曜日のために予てから某ホテルのお食事チケットを買っていましたから、さらに財布に余裕があるようないい気分お腹も程よく空いてきて・・・レッツゴー!ロビーでは知り合いの方にも出会い「やっ、おたくも今日の。ウチもこれから食べに行くんですよ」なんて他愛もない会話にも、ほろほろと笑みがこぼれる。まさか、こんなことになろうとは予測がつかない程いい気分で会場へと近づいて行きました。

 「なんだぁ、この混雑は!」

 チケットを買ってきているにもかかわらず、なんでWHY?・・・。確かに手に持っているのはシート指定のチケットではありませんでしたが、会場のキャパとチケット販売数を考えればお客様に気持ちよくお食事をしていただける状態になるかいなや算数ができればわかりそうなものなのですが。
 さっき、ロビーで会った知り合いは5分程でめでたく入場の許可をもらい入っていった。子連れの我ら家族は10分待てども15分待てども入場できずにいる。さっきまでのささやかな幸せ気分は、松井選手の快心の当たりの如く場外へと消えていきました。
 待ち合い場所がなにやらざわめいてきました。ハッピ姿の小学生が手にバチを持ち、ここに来た時から気になっていた(待たされるんなら、ソファーくらい置いてあってもよさそうなものだ、という位置に設置してある)太鼓の前に整列しはじめました。それに伴い彼女たちの親御さんと思われる方々で待ち合い場所はますますの混雑を極めてきました。

 「まっ、まさか・・・。頼むから止めてくれ!」願いは虚しく、思いっきり元気な演奏が始まってしまった。「空きっ腹に太鼓の音は響くちゅうのっ!!」「もう、帰る!」「だけど、チケット代金がもったいないなぁ」いてもたてもいられず、階下へ非難。もう少しでほんとに帰るとこでした。
 30分ちょっと待った挙げ句、ようやく入場の段となり、ほっとしたのもつかの間でした。会場に入るとここは本当にホテルの中なのかと思いたくなるほどレイアウトが泥臭く(まるで屋台村)、混雑している。私は未だかつてパーティ以外でこんな混雑したホテルでお食事をとった経験が無い。おまけに何を勘違いしているのか各屋台が大声をあげての呼び込み。屋台のそばに座らされた身にもなっておくれ!うるさくて食事どころじゃないよ、ったく。
 全国の郷土料理が売りものであったようですが、お題目に反してどこでも食べられるものばかりでした。味付けもだーーーめ。この私がビール中瓶1本飲みきる気にもならなかったのですから、心中ご察しあれ。子供は正直だと言います。我が息子は朝ご飯や昼ご飯はそんなに食べないのですが、夜はものすごく食べるんです、いつもなら。その日彼は普段の半分で「ごちそうさま」でした。

 これぞ、まさに「食ing」

 おれの幸せ気分を返してくれ!!!!!!
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純米酒の復興なるか?

 昨年の焼酎の値上げはまだ記憶に新しい事と思います。やっとこの価格に慣れたと思いきや、~12年10月には2度目の値上げ(税率引き上げ)が行なわれます。これは、ご存知のように、ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒と、同じ蒸留酒である焼酎の税率の差を無くそうとするものであり、最終的に~13年に再々度の引き上げが行なわれます。売れないウイスキーに引っ張られ焼酎が高くなるのは非常に腹立たしい事ではあります。

 この機会にもしかすると、酒類業界に大異変が起こる可能性が含まれています。結論から言いますと、醸造酒としての日本酒は「純米酒」のみとなるかもしれないのです。最近は特に売れなくなりましたが、いわゆる「普通酒」や「本醸造」などの添加物の入った日本酒は醸造酒ではなく、カンチューハイなどと同じ部類の「混成酒」に位置づけられるはずです。

 なぜ、そうなるのか?理由はこうです。同じ蒸留酒という理由で、焼酎は外圧に屈して税率を引き上げられました。ところが、今盛んに輸入されているワイン(果実酒)は同じ醸造酒にもかかわらず日本酒よりもかなり税率が低いのです。こうなれば、日本酒メーカーも黙ってはいません。(日本酒メーカーの中には焼酎も造っているところがありますから)必ずや、ワインと同等の税率まで引き下げるように要望するに違いありません。ここで、片方だけ(日本酒だけ)引き下げれば税収の総額が下がりますから、政府はワイン税率を少し引き上げて日本酒税率を引き下げるというような方法をとるでしょう。そうなれば、今度は外国のワインメーカーは現在市場に一番多く出回っている「普通酒」に難癖をつけるでしょう。同じ市場の中でパイの奪い合いをしていると勘違いしていますから。そして、外国から見れば混成酒である「普通酒」「本醸造酒」を税率引き下げの対象から外すよう要望するでしょう。そして、折衷案のようなかたちで、ワインの税率を上げ、純米酒以外の日本酒を対象外として税率の引き下げが行なわれるでしょう。

 これは、単に純米酒の値段が下がるからうれしいという事だけでは終わりそうにありません。これまで、「柱焼酎」の使用の事実を挙げてアルコール添加は悪い事ではないと言っていた人達に大打撃を与えかねません。ワインの中にも果実酒と甘味果実酒がありますが、少しワインに親しんだ人なら「甘味果実酒=本物ではないワイン」という意識が自然と出来上がっていると思います。日本酒でも同じ事が起こる可能性があります。つまり「アルコールやその他添加した日本酒=本物でない日本酒」の意識が出来上がっていくはずだからです。普通酒を飲む事、本醸造酒を飲む事は亜流の日本酒を飲む事、紛い物を口にする事、合成酒とさして変わらないものを飲む事のように捉えられていくでしょう。時間は少しかかるでしょうが。

 かくして、大手メーカーもこぞって「純米酒」の大量生産に入るでしょう。今でもありますが、米糠や屑米で造った純米酒、米を融かして造った純米酒などが、どんどん低価格で売り出される事でしょう。それらは、何もわからない酒屋や消費者を直撃するでしょう。また、まともな純米であっても管理の行き届かない酒屋によって、消費者は傷んだ酒を買わされる事も起こりうるでしょう。

 えっ?同じ醸造酒のビールはどうなるかって?あんなに売れていて税収の見込めるものの税率を下げるわけないじゃないですか、政府が。

 今年の初め、広島国税局鑑定官と酒席をともにした時の事です。「広島のI酒造が、ここのところ良い造りになってきている」とおっしゃったので、純米酒にしか興味のない私は「で、そこの純米は?」と訪ねたところ、「純米の指導をやっているんだよ」とのこと。再来年を視野に入れてのことでしょう。
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数字をとるのか、質をとるのか

 昨年の暮れに、商業企画・イベント企画のお仕事をされている方のお話を聞きました。最近手がけたお仕事にホテル(仮にAとする)でのケーキバイキングがあり、大変盛況の事。ホテルの一番暇な時間帯に1,000円ちょっとで、ケーキから、ぜんざい、大福、コーヒー、紅茶、抹茶に煎茶、塩昆布にいたるまで食べ放題。その種類の多さと安さには定評があるらしい。もちろん、ウエィターが取り分けるという従来のセルフには無いサービスも忘れてはいない。これで採算がとれるのだろうかという疑問はあるが、考え方としては「損して得取れ方式」で、「ほんの少し黒字が出ればその時に付いて下さったお客様は、他の時間帯にも何割かは必ず戻ってくる」らしく、むしろプラスに向うというお話でした。ここまでは、なるほど・・・と考えさせられる講演だったのですが・・・。

 この時に引き合いに出されたのだが、この方式を真似したホテルが出現したのだそうです。ただ、その真似したホテル(仮にBとしましょう)では、飲物はコーヒーと紅茶しかなく食べ物もケーキが数種類あるだけで200円ほど料金も高く設定してある。おまけに、Bのケーキは薄っぺらくフォークをいれるとすぐに倒れてしまいきたならしく、けちくさい。Aホテルのケーキは少々安っぽいが一切れが大きく倒れない。またBでは、確かセルフサービスとおっしゃっていたように記憶しています。

 ここまでを見て、あなたはどちらのホテルのケーキバイキングを選びますか?AですかBですか?ふつう、どうしてもAを選びたくなりますよね。それはそうでしょう、これだけの情報では。絶対的にAに荷担した情報しか書いていませんもの。

 私の場合は、とってもひねくれ者ですから、A,B両方のバイキングに行ってみてからじゃないと決定しません。なぜなら、情報を流しているのがAに荷担した人物であるからAに有利な情報しか流していない可能性が大きいからです。果たして、Bのケーキバイキングは200円多く支払をするだけの価値が本当にないのでしょうか?確かにケーキは薄っぺら、飲物の種類は少ない、セルフサービスで手間がかかるのですが、これを少々言い換えてみましょう。

 Bホテルでは、お客様のカロリー計算まで気を使い、最高の素材でケーキを作っています。そして、ヨーロッパの一流ホテルのケーキの厚さを丹念に調査した結果、フォークをいれる前の美しさはこの厚さ以上では崩れてしまう事を発見したのでした。そして、上品に食べればこの大きさで充分倒れない事を証明したのです。また、バイキング方式でつい食べ過ぎても、カロリー過多にならないように大きさを考え、さらにセルフにしていちいち取りに行っていただく事によりなるべくカロリーを消費していただこうという、心憎いほどの気使いがあります。また、コーヒーと紅茶に限ったのも、最高のタイミングでお客様に飲んでいただこうと考えた場合、これ以上に作る事が出来ないからです。もちろん、これもセルフという事にもつながります。なぜなら、ケーキは作り置きができますが、コーヒーと紅茶は作りたてもしくは、細心の注意をはらって温めなければ味や香りのバランスが狂ってしまいますから飲物担当者がきっちり付いていなくてはならないからです。
 どうです?別に、Bを弁護する必要はまったくありませんが、酒屋の中のお金大好きと酒大好きと同じ違いがあるように思えたものですから。

 競争の視点を数字に於いた場合と、質的なものに置いた場合ではこんなにも説明が変わってくるものなのです。
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純米酒の水割り

 10月17日、おりしも台風10号が九州に上陸しようとしていたその日の朝、長崎へと向った。時間経過と共に風雨が強まり、全国各地から集結する審査員の到着さえも危ぶまれた。しかし、到着して暫くすると空は明るくなり北海道からの審査員も無事飛行機で到着する事ができた。
 なるほど、台風も審査委員長の上原先生には恐れをなすか・・・。(こんなことが過去にも数回あった)

 今年は出品点数が103点と比較的少なめだったおかげで、審査は実に楽であった。しかしながら、審査当日の朝、歯磨きをしたついでに舌磨きをしたのがいけなかった!全ての日本酒に酒とは違う味わいが感じられてしまったのだ。でも、ご安心あれ、その味を頭の中で取り除いてみればいいだけの事。ハハッ、プロとはそういうものさ。

 今回、一般公開パーティで上原先生指導のもと面白い実験をした。
 上原「大体、まともな純米酒なら10%位の割合で水割りしても崩れりゃせんのだわ(味が)。」審査員席では、一升何千円もする純米大吟醸がどんどん水割りされ、その旨さに驚きの声があがっていた。きき酒するには驚愕の純米大吟醸も食卓にあげた場合は、少し味やアルコールが濃すぎるものなのだ。(*O*)

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治さなきゃね

 この間の日曜日、生まれてはじめて機械での稲刈を経験した。これまでは、中山町の「はた酒店」さんの酒米の刈り取りに鎌を持って出かけた経験があっただけだ。好天の中一条刈りのエンジン付き刈取り機で黙々と刈取っていく。刈取りから、はぜ掛けまで、午前10時頃からはじめて午後6時過ぎまで、少しの休憩と昼食をはさんでめいっぱい働いた。お陰で季節はずれの日焼けとなった。ただゴルフ焼けと違って両手の甲は共に真っ黒になった。もともと、その日は「山田錦」の田圃の雑草取りのつもりでいったのだが、行ってみると雑草はきれいにとってある。いやな予感が走った・・・。でも、「鳥脅し」がまだだ。今日は「鳥脅し」を張る作業で終わりかな・・・。
 まったく甘かった!何時まで経っても山田錦の田圃に移動する気配もない。やっと辿り着いたのは他の「コシヒカリ」の田圃の作業が終わってからであった。なかなか、やるわい「お父さん」(妻の)。

 てな、話はさて置き、山田錦は順調に生育していました。まだやっと穂が頭を垂れはじめたところで、遠くから見てもそこだけ青々としていて他の田圃と品種が違うのが一目瞭然でした。このままいったとして、刈取りは10月の中頃、誰かテゴしてぃな!(倉吉弁)この酒米が酒になったら必ず有料で飲ましてあげるから・・アハハ。
 実はここで悩んでるんです。この大自然の中で育った酒米(うまくいけば素晴らしい米になるはず)をどうするかだ。売り先はもう決っている。お判りだと思うが、大谷酒造(鷹勇)である。しかし、その米を使って酒を造り、タンク1本買ってオリジナルの酒を造るかどうか。おおよそ一升瓶で3000本になると思われるのだが、販売する自信がない。それに3000本も造ったら、そればっかり売らないといけなくなりそうで。
 前述の「はた酒店」さんでは会組織を作ってまるでジゲ起こしのようにして販売している。他人がする事はどうでもよいのだが、自分がするとなると・・・。

 でもね、ここだけの話。はっきり言ってはじめの年の「はたさん」のとこの酒はあんまりいいできじゃなかった。それでもみんな旨い旨いって、そんなもんなんでしょうね、自分達のかわいいお酒なんだから。

 酒米造りにしても酒造りにしても私が関わっている理由は、「いかにして旨い酒を造るか」という命題をなんとか極めたいから(かなり大袈裟だが)であって、人を巻き込んで売ろうという考えはさらさらないのだ。(もちろん、結果旨いものが出来ればお勧めしますけど)おまけに、私、6人以上で酒を飲むのはあまり好きではない。会組織にするとどうしても、やれ刈取りだ、やれ新酒ができただので多くの人と酒を飲まざるをえなくなる。苦手だ!
 とは言うものの、都合の良い話ではあるが「いっちょ、自分が音頭を取ってやってやる」なんて人が現れればやってもいいかなぁなんて思ったりもする。オレが会長になって「自分達の酒を造るんだ」という熱意のある人、どうぞ申し出て下さい。

 そこで、求む! 会長さん

 しかし、治さないといけませんね。この内気な性格。商売なんだから。
 ところで、ご愛顧頂いてました「若桜産こしひかり100% 天日干し」ですが、今年は酒米に切り替えてしまいましたので、ありません・・・というのは、冗談で、私が刈取ったうちの3俵だけですが今年もわけて頂くことになりました。今日の台風で干す期間が少し伸びそうですが、天候がよかったですから今年も美味しいぞ!

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消費者ニーズに隠された罠

 イトウヨーカ堂の業績は依然好調だ。これは徹底して消費者ニーズを追求した結果であるとものの本で読んだことがある。「マーケティング」によるデータ分析の結果、今何を消費者が求めているのかを数値化し、好調なものは継続し不調なものはバッサリと切り捨てていったのだろう。勿論、同時に新たに商品開発を怠ることを忘れはしなかったろう。大小売業としては(製造側を単に商売相手としか見ない場合)、おそらく当然の処方である。

 第二次世界大戦の頃、中国を侵略して満州国をつくった日本軍は、その寒さに耐え兼ねてアルコール飲料を欲した。ところが、日本酒はアルコール度数が低く極寒の地満州では凍結してしまい飲むことが出来なかった。そこで、アルコールを添加した。それだけでは辛くて飲めないから糖類も添加した。増醸の始まりであった。戦後を迎え、酒は飲みたし、原料はなしということで、この満州に持っていった日本酒にならい、更に水で薄めて量を増やした。薄い味になった分糖類や調味料を加えて出荷したのであった。まさに消費者の声に応えての酒製造であった。ところがどうだ、時代が進み物資が豊富になり、他のアルコール飲料も手軽に飲めるようになると、日本酒は「臭い、悪酔いする」という増醸の副産物により消費者から見放されていった。また、殆どの消費者は日本酒=増醸した酒のイメージしか知らなくなってしまっていた。消費者ニーズによって創り出されたはずのものが消費者に嫌われてきた。そこには、先を見越しての新商品開発の手だてがなされていなかったのだ。そして、今となってはそうした贋物の固定概念を取り除く事が出来る製造者、小売業者は希有である。

 最近、ビール業界では「発泡酒」が大流行である。消費者の安くて手軽に飲めるすっきりとしたビール(本当はビールではないし、すっきり飲めるとはいい難いが)というニーズに応えて開発された。業界最大手もついに手を染めた。若者はこれをビールとして受け入れ何の抵抗も無く飲みはじめている。増醸された日本酒が出始めた頃の若者もそうであったに違いない。これまでビールを飲んだ事のある人間が大半を占めている時代はまだよかろうが・・・。

 果たして、ビールメーカーは日本酒の辿ってきた道をどう見ているのだろうか。「これが本物のビールだ」なんて言う時代にはそれを説得できる酒屋はいなくなっているかもしれない。そんな時代にはひょっとしてビールはスーパーマーケットでしか売ってないかもしれない。

 「お客様は神様です」確かにそうではあるが、「全知全能の神」と勘違いしてはならない。今売れれば良いという事のみに執着すると、本物まで失う事になる。
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日置桜 5年熟成酒 「時の匠」

 純米酒720ml 弐千円
 純米大吟醸720ml 四千五百円

 純米酒の方は、これほど食事に合う酒があったのか!という感じ。酒だけで飲むと若干の老香が感じられそれほど「おっ!」て言う酒じゃないんだけど、何か食べながら飲むとお料理にピタピタ。割りといろんな料理に対応できる。
 純米大吟醸の方は、平成4年の純米酒の出来が素晴らしかったことを如実に物語っている。その素晴らしい酒を、実に良い保存状態で熟成させている。まるさと奥深さが現れ、しかも吟醸のスタイルは全く崩れていない。両方とも何年かに1度あるかないかの掘り出し物である。

 更に、素晴らしいことがある。それは、箱に書かれている熟成酒を表している言葉である。

 人は技を磨き怠らず
 熱い心で挑み続ける

 時は全てを包み込み
 至高の技の証を創り出す

 どうです、いい言葉でしょう!
 「杜氏が精魂こめて造った酒は、時という偉大な神が極上のものに仕上げてくれる。」という意味なんですけどね。実は、小生が考えたコピーなんですよ。コピーに恥じない、良い酒でござんす。小生は良くもないお酒に荷担するほど悪人ではございません。
 5年前の酒が飲める歓びと、その時の流れを脳裏に浮かべ、蔵元をはじめ、杜氏そして、時という神に感謝しながら今宵の杯をかたむけようではないか。 乾杯!
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私ちょっと迷ってます…。

 6月13日、蔵元交流会幹事会。6月14日から15日第9回蔵元交流会、神奈川県逗子市にて開催された。これは日本酒の造りを勉強する会なので、その講習内容に関しては専門的すぎるので割愛させて頂く。どうしても聞きたいという御人がいらっしゃれば、説明しなくもないが、個別に聞いて頂きたい。
 話は、幹事会の夜の食事の時のことである。私の大好きな喜多の華酒造の蔵元「星敬二」氏(名前は格好がよいがその姿は、毛のないテディーベア)が、「何処の酒かはわかんないよ」なんて顔をして差し出した酒に端を発する。その酒は、安物の香水のような香りを放つ十四代本醸造のような酒(味はあれほどしつこくないが)であった。彼は、私がこの手のお酒を大嫌いと知った上で勧めてきたのだ。そして、私は彼の期待通りに顔をしかめ、「なんじゃいこれ!こんなもん飲めるかいっ!」と放言し、少しでもその味が早く舌から消えてくれないかと、まるで夏ばての犬のように舌をだらりと垂れてしまった。その様子をいかにも楽しそうに、したり顔で星氏は眺めていた。そして、一言「うちの酒です」。いかにも悪戯そうな目で私の顔を見ると「そんな酒造るのは簡単だ、もう十四代に追いついただろう」と笑いながら話すのであった。

 彼の傍らに座していたのは、震災までは灘の準大手であった大黒正宗の安福又四郎商店 安福啓子 女史。現在彼女の蔵では、製造数量を震災前よりずいぶんと減らしてこだわりの良酒を造ろうとしている。ただ残念なことにまだその評価は「悪くない」に留まっている。

 「確かにこのお酒はこの会では評価されないでしょうけど、結構この手の酒は女の子とか、若い男の子に受けるんですよ」「うちでも、なんで売れるんだろうと思いながらも造ってますよ。」
 「うちなんか、観光客相手にバンバン売ってますよ。うちの酒、いい香りがして飲み易いでしょう、なんて言ったりしてね。」ますます調子に乗ってくる星氏。
 それでも私があんまりボロカスに言うものだから、明日別の酒があるからそれを本当は見てほしいと、やっと本当の蔵元らしい顔に戻る。

 さて、この話題で本当に問題なのは、私が頑固という点もあるが、「妙に香る酒」を求めているのが若い兄ちゃん、姉ちゃんだということだ。今日も、レジに立っていると若い身なりのきちんとしたカップルが来店された。・・・別にきちんとしてなくてもいいんだが。その二人、どちらも同じ香りがした。柑橘系の強い香り。着けている本人達は何ともなかろうが、私は鼻孔の奥がツーンとするほど痛くなってしまった。ほとんど店中がその香りで充満した時、私にはポテトチップスの袋からもれる油とイモの香りさえ分からなくなってしまった。昨今のお兄ちゃんは、お姉ちゃん達に負けず劣らず身を飾り、強い香りを身にまとっている。そんなに強い香りで馬鹿になった鼻ならば「香水のような酒」しかその香りを刺激として感知しないのだろう。
 世が世なのだから、私も妥協すべきなのだろうか。

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渋い酒の会

 私は、日本酒、そして蔵元が多数集まるところには仕事を放っておいても出かけてしまう。後に仕事につながることではあるが…。いつか書いたかもしれないが、それだけの酒、それだけの人物に対して一つ一つまたは一人一人に出会いに出かけることを思えば非常にお安くつくからである。また、同じ銘柄の酒でも「その時期の味わいは、二度とない」からである。
 というわけでその二つの条件が見事に合体したイベントが、先日名古屋の「ごとう屋」という酒販店で開催された。日本酒をただ楽しむ会ではなく、勉強するための会で「素人お断り」の会であった。日本全国から蔵元及び杜氏が20名程度、酒販店その他関係者が10名程度、酒の種類は48種類。名づけて「渋い酒を飲む会」!

 ここで、渋い酒とはなんぞや、ということを説明しておこう。全部説明すると紙面が足らなくなるので要点だけ。日本酒は、この時期(5月)は大体「火入れ」して1ヶ月少々しか経っていないから、完全に未熟の状態だ。まだ本来の姿を現しておらず、飲んでも「味らしい味」がせず、どちらかというと焼酎っぽいところがある。おまけに、舌にザラッとくるような渋味も感じられる。数値的にいえば「酸量」より「アミノ酸量」が低く、phが4.3より下になっている。こういう酒は、おおむね最低一年は熟成期間が必要だが、その年の秋くらいから「ぬる燗」で旨くなる。なかには、どの温度で飲んでも渋い物もあるが、これは熟成に2から4年はかかる。反対に、この時期いわゆる酒の姿をしており、すいすい飲めるような酒は、夏が来るまでによく冷やして飲んでしまわないと後悔することになる。また、「火入れ」していなく「生」の酒でも低温管理された酒ならばこの時期はまだまだ渋い。渋い酒は、まっとうな造りをした証明なのである。ただ、この渋さはともすれば、雑味が多く荒いだけの酒と勘違いする人もいるので、この会のように素人に味見させるわけにはいかない。(当店のお客様のように私の“酒ロリコン”にすっかり慣れた方は、別ですが。)プロでもこの酒がどう変化していくのか読みにくいところがある。
 渋い酒とは正反対の酒の中には「鑑評会」で金賞をとるような酒も含まれる。前述から考えれば「まっとうな造り」ではないということになる。実はその通りである!あのお酒は飲むことを前提には造られていない、鑑評会の日に味が出るように、その日、いや、その一瞬のために造られている。

 その夜、主催者の後藤氏と某蔵の石川杜氏と語り合った。
 「日本酒はまだまだ基本的なところで最高の技術が発揮されているとはおもえない」「やれ鑑評会だの、やれ酵母がどうのこうの、などいっている間は、所詮小手先の技術ではないのか」「日本酒の今の状況は、かつて流行ったBタワーやMドンナなどのドイツワインのようにいわゆるフルーティで飲みやすい物がもてはやされるという域を脱していないのではないか」「ドイツワインも今では食事とあわせるものがちゃんと市場に出てきている、日本酒が鑑評会を追いかけている間は、食事と相性のよいものは出てこないかもしれない」「是非日本酒は、和食の中の“ご飯”のような存在になってほしい。噛めば噛むほど味が出て、冷やでもおいしくて、もちろん温かくてもおいしくて。他国の料理だっておかずにでき、それだけでも十分味わえるようなさぁ」云々。この後、後藤氏所有の「酒に香りをつけるための薬品(実際に使用されている)」の香りまで嗅ぐことになった。側で寝ていた人まで「臭い」を連発して起きてしまうほど強烈だった。関係者には聞かせたくないような議論や実験が明け方まで続いた。

 折しもその日は、「全国新酒鑑評会」の翌日であった。

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自分で熟成酒を作ろう!

 ワインブームの影響だろうか、ここのところヴィンテージに対する関心が高まってきたように思う。ワインの品質は、収穫された葡萄の良し悪しで左右される。従って、年間の気候が不順なヨーロッパでは葡萄収穫年号(ヴィンテージ)が非常に重要な意味を持ってくる。
 昨年は、希に見る秀逸な年だったので、ドイツやフランスの97年ものは今後高値がついてくる事は予想される。但し、これはヨーロッパのお話であり、世界各国に共通なものではない事は強調しておかねばならないだろう。例えば、オーストラリアやチリなど比較的気候が安定していたり、長期熟成型のワインでない場合はあてはまらない。もしも、これらの国で97年という理由だけで高値がついていたとしたら少々疑ってかかった方が無難だろう。

 ところで、時々ご注文を受けることがあるのだが、困ってしまうことがある。(当店が大変な資産家であれば問題はないのだが)

 「彼の(または彼女)の誕生日なんですが、生まれた年のワインが欲しいのですが、探して頂けませんか。」

 日本の法律から考えれば、当然この要望のワインは20年以上前のヴィンテージという事になる。そんなに前のワインを在庫として持っているということは、相当資金に余裕が必要である。何せ買っておいてずっと売らないで眠らせて置く訳だから、仕入れたものがお金にならなくても困らないという訳である。最も、以前からワイン専門でやってきているヴァンシュールヴァン(東京)などの店では見つける事ができると思う。ただ、その誕生年が秀逸な年でない場合たとえ発見できたにしても、旨いかどうかの保障はない。更に、其のワインが長期熟成に耐えられるものかどうかでも、大きな違いがある。
 当店でも入手経路はあるが、何処で買おうとも20年以上寝かせている訳だから高価である事は覚悟していてほしい。まさか、数千円で買おうなどと考えないでほしい。しっかりした管理下に置かれたものならば。
 今後、そんな予定がある方は今の内に買っておくのが無難だ。1万円以上(比較的新しいヴィンテージのものでも)は覚悟しておいた方が良いだろう。何といってもそれほどの長熟に耐えるのだから、銘醸ワインを選択せざるを得ないから。(銘醸ワインは日本酒と違い、市場に新酒の状態で売られる事はないから、その間のプラス金額が加算される)また保存にも気を使わねばならない。セラーがあれば最高だが、無い場合「北向きの押し入れでその年月の間一切動かさないで寝かしておく事」のが良いだろう。

 その点、これを日本酒で行なおうという場合はワインよりもずっと楽?である。日本酒の場合、ヴィンテージ(ライスエイジとでもいうべきか)制は採られていないので、何年の物だからという理由で特別に高値になる事はない。(長期熟成酒として売られている場合は除く)それに高価な酒だからといって熟成させれば必ずよくなるとは限らないから、ワインに比べて安価で購入できる。市価3,000円(一升瓶)くらいの日本酒で十分である。ただ、その酒が新酒でしか飲めないような酒かどうかは酒屋に聞く必要がある。(蔵元に聞いても、明確な答えが返ってこない場合が多いので注意が必要)

 さて、長熟可能な酒を「息子(娘)の誕生」にあわせて当店で買ったとしよう。やはり、比較的温度変化の少ない且つあまり温度が上昇しすぎない北向きの押し入れに入れておこう。ワインと違って寝かせておく必要はないし、湿度は気にしなくてよい。土蔵をお持ちの方はそこでいっこうにかまわない。熟成速度に差はあるが冷蔵庫でもOK。(温度が低いほど、精米歩合の数値が低いほど熟成速度は遅く濃熟型の熟成酒は造りにくい)
 さぁ、後はそこに酒を入れた事は20年間忘れましょう。いい酒があるなんて途中で思い出してしまうと「呑べ」は居ても立ってもいられ無くなるから。
 一つ注意申し上げるが、日本酒の場合まだまだ熟成に関する研究は始まったばかり、本当にその酒が良くなるかどうか、何年で完成するのか、それこそ博打である。パチンコに比べれば安い物だが、落胆は大きい。
 
 私は記憶力の良い呑べだから、無理です。
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