脳のこやし

もご参照のあれ

小説 / 児童書 / 書物 / マンガ / アニメ / 映画 / ドラマ

1ページ / 2ページ

子供向けだからこそ、混ぜものも、混ざりものもない、
まっすぐな純粋さで描かれている物語は、バカにできません。

普通の小説より、さらっと読めてしまうのも魅力です。

あらすじしか書いてないようなのは、
記憶が薄れているものです

だいたい、読んだ順番で並んでいます

また思い出したら、追加していきます

.

ルドルフとイッパイアッテナ
ルドルフともだちひとりだち

テーオバルトの騎士道入門
マックスのどろぼう修行
斉藤洋

講談社

 「ルドルフ―」は、飼いネコだったルドルフが、魚屋に追われて飛び込んだトラックで東京に連れていかれ、そこで出会ったイッパイアッテナから、文字や生き方などを学びながら成長していくお話。
 単純に野良ネコ生活を楽しんでも読めますし、人間にも当てはまる人生や哲学的な考え方にも触れられているので、大人が読んでも充分に楽しめます。
 近年「ルドルフといくねこくるねこ」が出ましたが、私的にはもうひとつでした。
 でも、また続きが出そうな終わり方なんで、今後も期待しています。
 笑いあり、涙ありの知恵と勇気と友情の物語で、絶対のおすすめ。

 「テーオバルト―」は――
 テーオバルトの祖父は、死んだ息子の代わりに、テーオバルトに早く後を継がせたいと思っていたが、世間知らずのテーオバルトは、一人前の騎士になるためには、竜の涙を手に入れなければならないと思いこんでいた。
 でも竜なんて本当にいるはずがない・・・そこで出てきたのが、偽物の竜をテーオバルトに倒させて、偽物の竜の涙を手に入れさせようという案。
 果たして、テーオバルトの祖父たちは、うまくテーオバルトに竜を倒させて、竜の涙を手に入れさせることができるのか?
 というようなお話なんですが、テーオバルトは世間知らずでも、バカじゃない。
 おまけに騎士道精神を重んじているせいで、出会う事件にいちいち首を突っ込んで、旅は思うように進まない・・・と、この計画がどういう風に展開し、終わるのかというのが気になって、物語にぐいぐいと引きこまれていきます。

 一方「マックスの―」は、盗賊ギルドの頭領の後継ぎなのに、まるで泥棒の才能のないマックスが、みんながあっと驚くような物を盗んでこなければ帰って来れないという、厳しい修行の旅に旅に出されるお話。
 こっちは「テーオバルト―」とちがって、偶然に偶然が重なって、いい方いい方にお話が展開していく感じなんですが、それが決してご都合主義ではなく、その旅に課せられた「掟」が鍵としてうまく効いていたり、マックスの得意な笛がうまく危機を救ったりと、愉快な話であります。
 旅の途中まで、テーオバルトの足跡を追うように展開していくので、「テーオバルト―」を読んでからの方が断然楽しいです。
 この2冊は、子供向けにかかれていますが、時代背景などはしっかりしていますで、大人もちゃんと楽しめます。

.

二分間の冒険
.
放課後の時間割
ふしぎの時間割
雨宿りはすべり台の下で
ようこそおまけの時間に
ムンジャクンジュは毛虫じゃない

びりっかすの神さま

選ばなかった冒険
 ―光の石の伝説―
.
岡田淳

偕成社/文庫

 「二分間の冒険」は、喋るクロネコ ダレカに導かれ不思議な世界に迷いこんだ悟が、その世界で出会った、同級生そっくりのかおりとともに生贄を求める竜を倒しに行くというお話。
 竜を倒す問題の他に、悟が元の世界に戻るためには、その世界で『一番確かなもの』を見つけなければいけないんですが、確かだと思ったものが次々と不確かなものに変わっていく様が、物語とうまく絡み合っていて、竜を倒すことすらも予想外な展開になっていきます。
 剣と魔法のファンタジーとはちょっと違いますが、純粋に、異世界迷いこみ型のファンタジーとしても面白いので、おすすめです。

 「放課後の―」は、学校に住みついているという人の言葉を喋り、お話を作るのが好きな学校ネズミが、図画の先生に自分たちの話をしていくというお話で、学校を舞台にした不思議に面白いオムニバス作品です。

 「ふしぎの―」も、「放課後―」と同じように学校を舞台にした不思議に面白いオムニバス作品。
 こっちはネズミが語っていくのではなくて、登校時から、6時間目、放課後までと、時間を追っていく形式になっています。
 「放課後の―」よりも、若干 大人向きというか、大人は大人なりの読み方ができるお話が多いです。

 「雨宿りは―」は、同じアパートに住む雨森さんは、もしかすると魔法使いなのではないかと、子供たちが雨宿りするすべり台の下で、雨森さんにまつわる不思議な話をしていくお話。
 不思議に面白く、切なくも心温まるファンタジー作品です。

 「ようこそ―」は――
 ある日突然 賢は、みんなが茨に囲まれ眠っている教室で、ただ1人目覚めていることに気づき、茨から次々とクスラメイトを助け出し始め――というようなお話。
 この作者の「他の世界」「子供だけの秘密」「みんなで力をあわせて」という定番のノリで、人は表に出している顔が全てではない、お互いの心の間にある茨の垣根を取り除けば、もっと仲良くなれるのだ――というようなことが語られています。

 「ムンジャクンジュ―」は、登ると祟りがあるといわれるクロヤマで見つけた、毛虫のような不思議な生き物ムンジャクンジュを、同じアパートに住む克彦と稔と良枝はこっそり育てていたが、やがて手におえなくなって、クラスのみんなに助けを求めて・・・と、子供たちだけで秘密を共有するというワクワク感が面白いお話です。

 「びりっかす―」は――
 新しい学校に転校してきた始は、初めて入った教室で、背中に羽根が生えた小さな男を見つける。
 どうやらその男は、クラスでびりになった者の近くに現れるらしい。
 それならばと、始は算数の小テストで0点を取ることにした。すると予想通りに、その男が目の前に現れ・・・
 というような感じで、そのびりっかすの神さま見たさに、クラスのみんなが次々と、びりになるようにふるまっていくんですが、ひとに勝つということは本当に大事なことなのか、びりになって何がいけないのか、そして がんばることとはどういう事なのか、といったことを考えさられるお話です。
 オチも効いてておすすめ。

 「選ばなかった―」は――
 学とあかりが突然紛れこんだ世界は、学がプレイしていたゲームの世界だった。
 そこで2人は、違うクラスの勇太とその世界の住人バトルと出会い、無事に元の世界に帰るためには、ゲーム同様、光の石ほ手に入れなければならないことを知る――と、ありがちなお話なのですが、ゲームの不完全な世界に対する疑問や、ただ殺されるだけのザコキャラも、その世界では生きているんだということ、例え自分を守るためであっても、それは他人を傷つけるのだということなど、いろいろと考えさせられるところが多いお話です。
 基本的に高学年向けなんで、読み応えがありますし、ラストも劇的で、シビアな終わり方になってます。

遠い星からきたノーム
 TRUCKERS
 DIGERS
 WINGS
.
テリー・プラチェット

鴻巣友季子 訳

講談社

 「ディスクワールド」と同じ作者で、単純に笑え、楽しめるお話です。
 デパートで生まれ育ち、デパートの外に世界なんてないと思いこんでいるノーム(想像上のノームとはまったく関係ない)たちが、デパートが解体される事を知って、反目しあっていた者たちも一致団結してトラックを盗み、みんなで逃げ出す――というようなお話(1巻)なのですが、ノームたちの考え方やなんかがトンチンカンで、デパートの創設者は神で、デパートに張り出されている注意書きや、宣伝文句なんかは神の啓示であると思いこんでたり、章の始めに旧約聖書をパロった引用なんかが出てくるのも楽しいところです。 
 人間に対する風刺や、なかなか哲学的なところもあっておすすめ。
 イメージは違いますが、「ドラゴンランス」のノームたちが好きな人は、とんちんかんなノームという点では一致してますので、読んでみてください。

穴 HOLES

幸田敦子 訳

トイレまちがえちっゃた!
.
ルイス・サッカー

講談社

 「穴」は――
 濡れ衣を着せられて荒野の更正キャンプに送られた、いつもついてないスタンリーは、サディストの所長に怯えながら、来る日も来る日も穴を掘らされることになる。
 そんな日々の中でできた友達ゼロのため、スタンリーは、引き返すことのできない荒野へと足を踏み出すことに・・・というようなお話。
 途中で、まったく関係ないような昔のお話が始まるのですが、実はそれらの話が全てがつながっていて、だんだんとひとつの物語が織り上がって行く様は見事です。
 最後の最後まで、伏線と布石の置き方にうならされます。

 「トイレ―」は、傷付きたくないから友達を作ろうとしないクラスの嫌われ者ブラッドリーが、転校生のジェフやカウンセラーのカーラと出会ったことによって、自分の心の問題を解決していくお話。
 スタンリーとカーラの心温まる交流やら、ブラッドリーが自分を変えることで、自分を取り巻く状況が変化して行き、最後に独り立ちしていく様は読んでいて染みるものがあります。

.
月神の統べる森で
地の掟・月のまなざし
天地のはざま
月冠の巫王
.
たつみや章

講談社

 縄文時代を舞台に、星の神の子として生まれたポイシュマの成長と、月の神を信仰するムラの民と日の神を信仰するクニの民の戦いを描く、純日本縄文ファンタジー小説。

 日本のお話だと、どうしても史実なんかを元にして、古代の勢力争いや登場人物がどうこうと、小難しい物が多いのですが、このお話は、縄文の生活様式なんかにはこだわってますが、小難しいところもないですし、時代小説みたいに時代がかった言葉も使われていないので、そういうのが苦手な人でも、純粋なファンタジー小説としてすんなり受け入れられます(ちゃんと剣と魔法のファンタジーっぽくなっているところがミソ)。
 それでも、狩猟民族たるムラの民が、縄文的な文化とアイヌ的な生活様式で、農耕民族たるクニの民は弥生文化的生活様式だったりして、興味深いところも多いです。

 物語の方は、ムラとクニの争いが全体的な流れですが、主人公ポイシュマの成長と冒険に主眼が置かれていますので、あまり殺伐とした感じもなくて読みやすく、最初の「月神の―」だけを読むと、ムラの者とヒメカのクニの戦いだけで終るのかと思いきや、物語はおそらく作者も当初予想していなかった方向に広がりを見せ、ラストはとんでもないことになっています。

 翡翠色の瞳と一房の白い髪をもつ星神の子ポイシュマ、若く頼もしいムラの長の長アテルイ、アテルイの幼馴染みで白く美しい髪もつ月の神の息子シクイルケ、クニの長の地位が約束されながらも厄介払いの旅に出されたワカヒコ、真の神懸りの力を持つ日の巫女ユツなどなど、主要な登場人物だけでなく脇役も実に魅力的ですし、他にも、
 運命、宿縁、冒険、友情、成長、平穏な日常、恋、絶望、後悔、癒し、許し、預言、祈り、奇跡、神、精霊、逃避行、決死の戦い、背徳、裏切り、欲望、利権争い、怒り、喜び、悲しみ、怨念、自己犠牲、などなど
 色んな要素がつめこまれていますので、読んでいて飽きることがありません。
 特に、ポイシュマの独り立ちのシーンや、自分が呼びこんでしまった不幸を背負って生きるけなげさには涙せずにはいられませんし、常に自然に感謝を捧げ、互いが与えられるものを分かち合い、疑うということを知らないムラの民の生活は、今のほとんどの人間が忘れかけている自然の中の一員としての人間の生き方を教えてくれて、心洗われるようです。

 ただ、1巻のあとがきにあった、「日本神話で月の神についてほとんど触れられていないのはなぜなのか、ということを解き明かす」という命題について、ほとんど触れられないまま終ったのは、ちょっと残念でした。
 例え悲劇になることを前提としてでも、その後のお話として、そういう物語を書いてもらえると、私としてはとても興味深いのですが。

 ともあれ、時代劇ではない純然たる日本ファンタジーってのは珍しいですし、自然と、人としての生き方をもう一度見つめ直す意味でも、読んでおいて損はない作品です。
 日本人ならば、どの海外作品よりも、まずはこの作品をおすすめします。

 予備知識がなくても楽しめますが、アイヌ民族の風習や神話などについて知っておくと、より楽しめます。

1ページ / 2ページ

小説 / 児童書 / 書物 / マンガ / アニメ / 映画 / ドラマ

≪戻る≫