ジャンボ鶴田氏の行った、どこでも寝られるためのトレーニング
いったんプロレスラーが遠征に出ると、移動の連続で、睡眠時間もままならない場合も出てくる。新幹線やバスの中など、どこでも寝られるようになることは、非常に重要な能力らしい。
プロレスラーに限らず、オリンピックや世界選手権出場選手など、海外で試合がある場合には、環境の変化や時差ボケ、緊張などで寝られなくなる場合も多く、睡眠確保は大事な問題である。
鶴田氏がアマレスでミュヘンオリンピックに出場する際、その強化合宿の中で、どんな状況でも寝られるようになるために、そういったトレーニングを行ったという。これは当時のアマチュアレスリング協会・八田一郎会長の指令でもあったのだ。
例えば夜中に目が覚めて、トイレに行きたくなった選手がいるとする。するとその選手は隣に寝ている人間を揺り起こすのだ。別に一緒について来てもらいたいからではない。いつ起こされても、またすぐ寝付けるようになるためだ。
別の選手が目が覚めたら、また隣の別の人間を起こす。こうした約束ごとによって、何人かが一緒に寝ているわけである。
また、夜中の2時に、コーチのかけ声と共に全員叩き起こされる。そして歯を磨き、顔を洗って廊下に一列に並ばされる。
並んだ後に1! 2! 3! と、点呼を取らされる。それが終わると「よし!寝ろ!」と言われる。要するに、ただ点呼をとるためだけに起こされたようなものだ。
この後、いかに早く熟睡に入れるか、というのが睡眠のためのトレーニングになるのだ。
また、明かりをつけたまま寝たり、音楽をガンガンにかけたまま寝たり、トイレで寝かされたこともあったという。体調十分で試合に臨むためには睡眠は避けては通れぬ問題で、そのために競技の練習とは別に、こうしたトレーニングも行われていたということである。