□高度情報処理技術者試験の論文集  SD−上級システムアドミニストレータ−過去問題&論文例




年度
設問タイトル 論文例
H18
経営的視点からの情報システムの選択について -
ソフトウェアパッケージ利用における業務プロセスやルールの見直しについて -
業務改善におけるデータ活用について -
H17
情報システムの活用による間接業務の効率向上について 549
情報の社外流出事故の防止について -
外部データの効果的な活用について -
H16
システム化要件の定義における利用部門の役割について -
顧客情報の有効活用について -
商品やサービスの開発のスピードアップについて -
H15
関連する業務プロセスの改善について -
原材料や部品の調達業務の改革について 407
戦略実現のためのデータ活用について -
H14
成功事例を活用した業務プロセスの再構築について -
業務要件と整合の取れたアプリケーションソフトウェアの調達について 427
情報システム導入後の評価と業務の改善について -
H13
知識やノウハウを活用した業務の付加価値向上について -
業務改善のための情報化投資と効果について 252, 262
情報技術活用による間接部門の経営スタッフ機能強化について 258
H12
中堅・中小企業における情報化の推進について -
ユーザ部門で実施する運用テストについて -
基幹システムのデータの活用について -
H11
業務プロセスの再構築について , 274
部門情報システムにおけるデータ活用の高度化について 265
営業・マーケティング部門における情報技術の活用について -
H10
部門の情報化推進におけるソフトウェアパッケージの活用について 423
情報システムの活用に関するユーザ教育について -
部門情報システムにおけるセキュリティ管理について
H9
非定型業務の改善について -
業務上のコミュニケーションにおける情報技術の活用について -
システムの運用におけるユーザ部門の役割分担について 348
H8
部門間の連携が必要なエンドユーザコンピューティング(EUC)の推進について -
部門情報システム構築における外部の力の活用について -
データの効果的な活用について



H18−問1 経営的視点からの情報システムの選択について

 新たな事業展開や,既存事業の変革又は大幅な拡大などに際して,関連する情報システムの整備は必須である。 整備を進める際には,独自開発やソフトウェアパッケージ導入による自社システムの構築か適当か,ASPやアウトソーシングなどの外部専門サービスの利用が適当か,それらの組合せが適当かなど,利用部門としても慎重な判断が求められる。 この判断は,経営的視点から,対象となる情報システムをどのように位置付けるか,機能面や性能面,運用面での必須要件は何か,稼働時期やコストをどう考えるかによっても異なる。
 外部専門サービスは,給与計算関係業務では長年にわたって多くの実績があり,近年はほかの業務でもメニューが充実してきている。 インターネットショップは,外部専門サービスで手軽に構築できる。 CRM,SFA,業種ごとのメニューなども増加している。 事業の先々の見通しが不透明な場合でも早期に必要な環境を用意し,その後の状況を見て柔軟に対応するために,こうしたサービスを利用するケースがある。 一方で,将来にわたる競争力や自社でのノウハウ蓄積のために,時間やコストがかかっても自社システムの構築を選択するケースもある。 また,自社システムの構築と外部専門サービスの利用の組合せ範囲を見直したり,組合せ方式からいずれかに切り替えたりすることもある。
 利用部門は情報システム部門とも十分に協議を重ねた上で,経営的視点から対象事業の目的や特性にふさわしい情報システムを選択することが求められる。
 あなたの経験と考えに基づいて,設間ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア 新たな事業展開や事業の変革,拡大などを支援する情報システムの企画検討の際,自社システムの構築と外部専門サービスの利用との比較・検討をしたケースにおいて,対象とした業務と情報システムの概要,あなたの役割について,800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた情報システムの比較・検討において,経営的視点による選定基準を挙げ,自社システムの構築と外部専門サービスの利用のそれぞれについて基準の項目をどう評価し,選定したか。また,その際,利用部門として,特に検討を要した事項について,具体的に述べよ。
設問ウ 設問アでの経験を踏まえ,今後同様なケースで情報システムを選択する場合,手順,方法及び判断において改善すべき事項を簡潔に述べよ。


H18−問2 ソフトウェアパッケージ利用における業務プロセスやルールの見直しについて

 経営上の判断や全体最適の視点からソフトウェアバッケージ(以下,バッケージという)の利用を決めるケースも多いが,利用部門にとっては自社開発以上の困難に直面することがある。
 パッケージの利用を想定して準備を進める場合においても,まず現状を分析し,解決すべき間題点や達成すべき目標を明確にし,あるべき業務プロセスを検討しなければならない。 その上で,パッケージが備える機能,業種・業務特性との適合性,自社の要件との整合性などについて,どのような差異があるかを明らかにしていくことになる。
 パッケージのカスタマイズは極力抑制し,回避することが望ましいが,競争力の源泉となる自社特有の処理や取引先との関係などに絞り込んで,最小限のカスタマイズや追加間発も行われる。 しかし,こうした対応によっても,システムに期待される要件のすべてを充足することは難しい。 多くの場合,パッケージの機能や対象業務範囲の制約から,それまでに検討してきた業務プロセスや処理ルールを見直したり,代替策や運用面で工夫したりすることになる。
 利用部門はこうした事態を受け入れ,当初想定したあるべき姿との問で生じる差異に対し,新たな発想で再度業務を見直し,ビジネス上の目的実現に向けて取り組むことになる。 上級システムアドミニストレータは,利用者に大きな負担がかかったり,重大な問題が起きたりしないように,関係者と協働していく必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

 
設問ア パッケージを利用して実現した業務プロセスの概要について,パッケージ利用の経緯とあなたの役割を含めて,800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べたパッケージ利用に当たり,それまでに検討してきたあるべき姿との間でどのような差異が生じ,どのような問題に直面したか。差異が生じた際,問題解決のために実施した実務プロセスや処理ルールの見直しの内容,代替策や運用面での工夫について,具体的に述べよ。
設問ウ 設問イでの対応について,システム稼働後の業務状況を踏まえ,あなたはどう評価しているか。また,今後改善すべき課題と対応方針について,簡潔に述べよ。


H18−問3 業務改善におけるデータ活用について

 企業は,継続的に業務を改善し,業務のスピードアップを図るなど,業務運営の効率向上を目指している。そのためには,様々なデータを活用し,現状を分析した上で,業務改善策を立案して実施することが必要である。
 例えば,営業担当者が効率よく営業活動を行うためには,販売促進ツールの準備,見積書の作成,契約書類の作成,納品の手配,請求書の発行,売掛金の回収などの営業事務の効率向上を図る必要がある。 営業事務の効率向上を阻害している問題点を洗い出し,業務上の課題を設定するために,実績データから作業工数を集計することや各作業に費やすコストのデータを算出することなどが求められる。 各データを分析することによって問題点を把握し,課題を設定し,改善策を立案して実施することで業務のスピードアップを図り,業務の効率向上を推進することかできる。
 上級システムアドミニストレータには,現状の業務を分析するために必要なデータを収集し,そのデータを分析することで現状の問題点を把握することが求められる。 その上で,取り組むべき課題を設定して業務の改善策を推進し,業務全体の効率向上を実現する役割を担っている。
 あなたの経験と考えに基づいて,設問ア〜ウに従って論述せよ。

 
設問ア あなたが業務改善のためにデータを活用した事例について,あなたの立場・役割を含め,800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの事例について,当初設定した改善目標の概要及び現状の問題点を把握するために収集したデータとその分析結果を具体的に述べよ。さらに,実施した改善策とその効果を具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた業務の改善について,今後,改善効果を継続的に測定して業務改善に結び付けるためには,どのような仕組みを組み込めば効果的か。あなたの考えを簡潔に述べよ。


H17−問1 情報システムの活用による間接業務の効率向上について

 経営効率向上の一環として、間接業務の効率向上策を推進している企業が多い。間接業務の効率向上のためには、業務プロセス全体を効率の観点から見直し、間接部門で集中処理している事務作業の一部を、データの発生場所である現場部門へ移管するなど、部門間の適切な役割分担を図る必要がある。
 間接業務の見直しに当たっては、まず業務プロセス全体を見直し、無駄な業務や重複業務などを整理した上で、集中させた方が効率の良い業務と、分割させた方が効率のよい業務を明確にする必要がある。 各部門がその特性に応じて業務上の役割を適正に分担し、情報システムを活用した最適な業務プロセスを構築することによって、間接業務全体の効率を向上させることができる。その結果、間接部門では、事務作業の軽減や効率向上だけでなく、現場サポート業務及びデータの集計や分析などの経営サポート業務の強化が可能になる。
 上級システムアドミニストレータは、現場部門及び間接部門の適正な役割分担を図り、情報システムを活用することで、一連の業務がスムースに流れるように、関係する各部門と連携を取りながら、間接業務全体の効率を向上させる役割を担う。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが携わった、業務プロセス全体の見直しを行った間接業務の効率向上策の概要を、部門間の役割分担の見直し及び情報システムの活用を含め、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた事実について、施策実現の過程であなたが最も重視したことを、重複業務の整理、集中・分散すべき業務と部門間の役割分担、及び情報システム活用の観点を含め、具体的に述べよ。
設問ウ 設問アで述べた事例について、あなたは間接業務の効率向上策の成果をどのように評価しているか。今後の課題とともに述べよ。
論文例  


H17−問2 情報の社外流出事故の防止について

 近年、情報の社外流出問題は、企業における大きなリスクの一つといわれるようになった。企業には、顧客や取引先の情報、新商品や研究開発の機密情報、及び従業員の個人情報など、社外への流出事故を防止すべき情報が多い。 セキュリティを高めることは、企業防衛に役立つだけではなく、顧客の信頼や従業員の安心を得ることにもつながる。
 情報の社外流出問題に対しては、次のような観点を考慮することが重要である。

 上級システムアドミニストレータは、セキュリティポリシの設定に積極的に関与するとともに、そのポリシに基づいて部門の業務プロセスを具体的に見直す必要がある。 アクセスログの取得・保管やデータベースの暗号化などといったセキュリティ確保のため、情報システムの改善や再構築が必要なことがある。業務の従事者の監督や相互けん制、機器やデータの持出しに伴う事故対策など、運用面のルールを見直し、教育・研修を通じて管理体制を定着させることが必要である。これらの対策に当たっては、情報の社外流出リスクの大きさ、業務の運用効率への影響を考慮した様々な工夫が望まれる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが経験した業務の中で、情報の社外流出事故の防止のためにとった対策の概要を、業務の内容、対象情報の内容、及び情報システムでの対策を含め、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの対策を実施するに当たって、セキュリティを高めるためにどのような工夫を行い、その効果はどうであったか。内部管理や委託先の管理・監督の観点から、セキュリティポリシの設定と関連させて具体的に述べよ。
設問ウ 設問アの対策に関し、今後に残された課題と、その課題に対する取組について、あなたの考えを簡素に述べよ。


H17−問3 外部データの効果的な活用について

 企業は様々なデータを蓄積し、業務分析や計画立案などの企画業務に活用している。 企画業務にデータを活用する場合、内部データだけでは不十分なことが多いので、外部データで補完する作業が必要になってくる。 外部データについては、データの特性などをよく理解した上で、活用する必要がある。
 例えば、金融商品の中・長期の販売計画を立案する場合、商品別販売実績などの内部データを使って、過去数年間の販売実績を分析し、販売量の経年変化や販売動向などを把握する必要がある。 併せて、同時期の他社類似商品の販売状況を外部データベースなどから入手し、需要動向を把握した上で、販売計画を立案することも重要である。しかし、外部から入手したデータは、必要な項目がなかったり、項目名が同じでも含まれている内容が違っていたりする場合があるので、外部データはその特性を十分に吟味して活用することが必要である。さらに、商品を取り巻く環境や消費者動向を把握するために、独自に調査したり、外部調査機関に依頼したりして、不足するデータを収集することも求められる。
 上級システムアドミニストレータは、内部データだけでなく、外部データについてもデータの特性を十分に把握し、企画業務に効果的に活用する役割を担っている。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが企画業務に、内部データと外部データを活用した事例の概要を、そのねらいとあなたの役割も含め、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの事例について、外部データを活用する際に、データの特性上、どのような問題点があり、それをどのように解決したか。また、外部データの活用の成果を、あなたはどのように評価しているか。具体的に述べよ。
設問ウ 設問アの事例を踏まえて、今後、企画業務での外部データの効果的な活用を推進するために、あなたはどのような施策が必要と考えるか。施策の意図も含めて、簡潔に述べよ。


H16−問1 システム化要件の定義における利用部門の役割について

 近年,ビジネス環境の激しい変化を受けて,情報システムに対する利用者の要求もますます高度化し,多様化している。 情報システムに求められる主要な要件としては,経営戦略や事業方針との整合性の確保が挙げられる。
 例えば,情報システムに組み込むべき業務プロセスやデータのモデルは,経営戦略や事業方針を十分に確認し,費用対効果の検討や優先付けを行いながら,利用部門が定義する必要がある。 同時に,現状の業務や情報システムについても問題の本質や要件の実態を把握し,情報システムの機能の利便性や操作性などを考慮する必要がある。 また,一度定義したシステム化要件は,状況の変化によって追加や変更が発生することも多い。 状況の変化への対応とともに,漏れのないシステム化要件の定義や潜在的な業務要件の抽出などは,業務を熟知している利用部門が主体となって行わなければならない重要な課題である。 利用部門は,要件定義での討議に主体的に参加するとともに,効果的な定義を行うための手順や方法なども身に付けておく必要がある。
 これまでのシステム化要件の定義では,情報システム部門や外部機関にその作業をゆだね,必ずしも十分とはいえないことが多かった。 その結果,開発期間の延長や運用直後からのメンテナンスが発生し,開発費用の増加やシステムのライフサイクルの短縮が生じている。 利用部門が,システム化要件の定義を中心に,システム開発プロジェクトにいかに主体的に参加していくかが,システム開発を成功に導く上でのポイントになっている。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが利用部門としてかかわった業務要件の抽出やモデル化を伴うシステム化要件の定義作業の概要を,その作業における利用部門の役割と定義した要件の概要を含めて,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた事例において,経営戦略や事業方針と整合性のとれた業務要件の抽出やモデル化のために,あなたは,どのような手順や方法を用いたか。また,その作業で発生した主要な問題と対応策について,具体的に述べよ。
設問ウ  設問アで述べた事例において定義したシステム化要件の妥当性について,あなたはどのように評価しているか。今後の課題とともに述べよ。


H16−問2 顧客情報の有効活用について

 企業において,顧客情報の様々な有効活用が求められている。 これまで,顧客と様々な接点をもちながら,各部門に散在していた顧客情報を有効に活用できれば,顧客満足度を高めることができ,有料顧客や企業の収益力の増大が期待できる。
 具体的には,店舗や営業員,電話,電子メールまどの様々なチャネルから入ってくる顧客情報を1箇所に集約し,有効活用しようというケースが増えている。 例えば,コールセンタでは,顧客からの問合せに即答できるように,多くの質問と回答の中から典型的な対応例を検索・抽出できるようにしている。 コールセンタで解決できない場合は,対応できる部門がコールセンタからの情報を迅速に引き継げるようにしている。 また,複数の部門が顧客に対応する場合,一元化された顧客情報を使用し,各部門が情報を共有すれば,整合性のとれた顧客対応が可能になる。 こうした対策を通じて,顧客満足度を高め,更に,収集された顧客の声を総合的に分析し,活用することで,新たな商品やサービスの企画に生かすこともできる。
 上級システムアドミニストレータは,顧客戦略を理解した上で,関連部門の立場を調整しながら,顧客情報を集約し,有効活用することによって,顧客にとって価値のある情報やサービスを,一環して提供できる仕組みを作ることができる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが構築に携わった顧客情報の集約と有効活用の事例について,顧客戦略や情報技術の活用も含めて,その概要とねらい,あなたの役割を,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた事例について,どのような顧客情報を集約し,どのように有効活用したか。部門間の連携や除法技術の活用とも関連させて,具体的に述べよ。
設問ウ  設問アで述べた事例について,気体する成果を更に高めるために,あなたはどのような施策が有効と考えているか。今後の課題とともに述べよ。


H16−問3 商品やサービスの開発のスピードアップについて

 顧客ニーズの激しい移り変わりに伴い,商品のサービスのライフサイクルが短くなっておリ,顧客の支持が得られるものをいかに早く市場に出せるかが重要になっている。
 商品やサービスの開発では,マーケティング部門や研究開発部門などの連携のもとで,次のような一連のプロセスを実施する。 まず,顧客や市場から収集した情報の分析に基づいて,商品を企画し,試作を行う。 次に,顧客による試作品の評価などによって,商品化の見通しがついたところで,商品製作やサービス提供の仕組み作りや改良,量産体制の準備を行い,販売戦略も立案する。
 商品やサービスの開発のスピードアップは,社内外の知見や関連情報の迅速な収集・分析,適切な開発ツールの導入,部品の共通化,製作工程の標準化など,個別プロセス自体の変革や効率向上の結果として実現することも多い。 また,個別プロセスの組換えや並行処理,一部のプロセスの他部門や外部への委託などによる,業務プロセス全体にわたる変革も有効である。 商品やサービスの開発を支えるインフラストラクチャとして,顧客情報,商品情報,関連技術情報などの共有化や活用,開発業務のマネジメントに必要な仕組み作りも重要である。 限られた時間と要員で,商品やサービスの開発のスピードアップを図るには,情報技術の活用が欠かせない。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わった商品やサービスの開発で,情報技術の活用によってスピードアップを図った事例について,対象となった商品やサービスと開発業務プロセスの概要を,あなたの立場を含めて,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた業務に関し,開発のスピードアップを図るために,あなたはどのような工夫をしたか。スピードアップの阻害要因がどこにあったか。また,阻害要因を解消できなかった場合はその原因を含めて,具体的に述べよ。
設問ウ  設問アで述べた業務について,あなたはスピードアップによる業務上の成果をどのように評価しているか。また,今後,その成果を一層高めるためにはどのような施策が有効と考えているか。簡潔に述べよ。


H15−問1 関連する業務プロセスの改善について

 これまで部門における業務プロセスの改善は,部門全体の業務プロセスを構成する個々のプロセス単位に着手することが多かった。その結果,個々のプロセスは最適化しても,部門全体として最適化することができないケースがあった。
 例えば,物流管理部門において,部門全体のコスト削減を目指して業務プロセスの改善に着手する場合,仕入処理では,発注や検品作業の効率を優先して発注サイクルを長くするような検討をすることがある。この結果,需要との整合性がとれにくくなり,仕入量の過不足が発生する。一方,在庫管理では,商品が適量に発注されることを前提に,商品の保管レイアウトや棚番管理などを改善する。しかし,実際には,適正な在庫量とはならず,一時的に余分なスペースの確保や棚番管理の見直しが必要になる。場合によっては,過剰在庫や品切れ対応などでコストも増加する。
 部門全体を対象とした業務プロセスの改善では,個々のプロセスの順序や改善効果のプロセス間の影響度合いを全体的な視点で検討する必要がある。
 特に,個々のプロセス間で,互いに利害が一致しないようなケースでは,プロセス相互の調整という改善ステップを踏みながら,部門全体としての改善効果を実現させるようなアプローチをとる必要がある。部門全体としての体制作りやITを活用した情報共有の仕組み作りも欠かせないものになる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わった業務プロセスの改善について,全体の概要及び個々のプロセス間で利害の一致しない点を,改善作業におけるあなたの役割とともに,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた業務プロセスの改善について,部門全体の改善効果を実現させるために,どのようなアプローチをとったか,その中で,利害が一致しないプロセスをどのように調整したか,具体的に述べよ。また,改善を進める上で発生した予期しない事態に対し,どのように対応したかを述べよ。
設問ウ  設問イで述べたアプローチを評価して,部門全体のプロセス改善を目標どおり実現できた場合には,成功に結びついたポイントを,できなかった場合は,今後,どのようにして実現しようとしているのか,あなたの考えを述べよ。


H15−問2 原材料や部品の調達業務の改革について

 原材料や部品の調達業務は,ITの進歩によって,大幅に変わりつつある。インターネットの普及に伴い,企業間における情報の共有と活用によって,計画的でタイムリーな調達を可能にし,リードタイムの短縮や在庫の削減を図るケースが増えてきた。
 調達業務の改革に際しては,期待する成果を上げるため,取り扱う品目や業態に応じた仕組みを検討する必要がある。例えば,ネット調達によって調達コストの削減を図ったり,関係企業間の受発注データなどの交換によって調達業務の効率向上を図ったりする。また,調達業務を戦略的に再構築することによって,調達・生産・在庫の各領域にわたるコスト削減や業務の効率向上を図るなど,総合的な効果を期待する例もある。
 上級システムアドミニストレータは,調達業務の改革を円滑に推進するために,関係者間の意志疎通を十分に図り,目的やねらいを明確にした仕組みを構築する必要がある。取引条件の設定,コードの統一,業務運用上の責任の切り分け,特に,電子商取引の場合は,決済上のトラブルや機密保持対策などを含め,ビジネス上のルールを設定することが必須である。関係者の意識変革を図り,思い切った発想で業務の仕組みの再構築を行って,業務の効率向上を図ることが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わった,原材料や部品の調達業務の改革について,その概要を,取組のねらい,ITの活用を含めて,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた調達業務の改革について,期待する成果を上げるために,業務の仕組みの構築に際し,どのようなビジネス上のルールを設定したかを述べよ。また,構築の過程で生じた問題と,それをどのように解決したかを述べよ。
設問ウ  設問アで述べた調達業務の改革について,期待する成果を一層高めるためには,どのような施策が有効だと考えるか,今後の課題と対比させて簡潔に述べよ。
論文例  


H15−問3 戦略実現のためのデータ活用について

 ITの進歩によって,大量に蓄積された生データや画像などの多様なデータが迅速に扱えるようになってきた。また,利用できる外部の情報が豊富になり,各種の外部データが容易に活用できるようになった。部門の戦略や企業戦略の実現を支援するために,これらの各種データを有効に活用することが求められている。
 例えば,コンビニエンスストアでは,各店舗から得られる膨大な売上データの分析結果や地域のイベント情報及び天候の情報などを,商品の品ぞろえ,更には新商品の開発に活用している。最近では,独自のカードを発行し,その顧客データを活用して各種サービスを実施したり,店舗を多機能化して,チケット予約や画像データを有効に使った各種の情報サービスを提供したりすることで,固定客の確保や顧客層の拡大に結びつけようとしている。
 一方,商品を提供する側のメーカでは,新商品のヒット率や開発効率の向上,生産コスト削減などに各種データを活用している。販売実績データを多面的に分析したり,インターネット上で画像データを使って商品に対する顧客の反応を分析したりして,その結果を迅速に商品開発に結びつけている。また,コスト削減のために,事業分野別に分析した自社の経営情報と,海外現地情報や同業他社動向の調査情報など外部データを活用し,特定商品の生産拠点の海外移転という戦略を実現しているところも多い。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わった業務で,部門の戦略や企業戦略の実現のために,大量のデータや多様なデータを活用した事例について,その戦略及びデータ活用の概要を,外部データの活用を含めて,800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた事例について,データ活用のポイントを戦略実現の視点から具体的に述べよ。また,それによって実現した戦略上の成果について,評価及び問題点を含めて述べよ。
設問ウ  現在より更に大量データや多様なデータがより迅速かつ容易に扱えるようになった場合,設問アで述べた戦略の実現方法や実現のスピードは,どのような影響を受けると考えるか,あなたの考えを述べよ。


H14−問1 成功事例を活用した業務プロセスの再構築について

 経営環境の変化を受けて、企業の事業展開や部門における業務の在り方が見直され、それに伴う業務プロセスの再構築が行われている。
 業務プロセスの再構築に際しては、顧客や経営視点に立脚した検討が求められ、部門の業務についても個別的な対応ではなく、関連するプロセス全体を対象にしなければならない。
 再構築を迅速に推進するために、様々な成功事例をモデルとして活用しているケースがある。しかし、成功事例を活用する場合には、公開されている対象範囲や内容のレベルを確認するとともに、自企業の特性との相違にも十分に留意する必要がある。
 例えば、活動基準をベースにした原価管理を導入して、製品やサービスの損益を的確にとらえ、業務改善につなげた成功事例を活用しても、コスト意識が低く、組織の壁があり、業務活動の標準化が進んでいない企業では、大きな効果は期待できない。通常、公開されている成功事例は、成功の背景となっている企業の組織風土や社員の変革意識など、企業の特性の説明が不十分な場合も多い。
 また、事例を活用する場合でも、公開されている成功事例をそのまま鵜呑みにせず、どの部分が自企業にとって適合するかを十分に見極めることが、効果を上げるためのポイントとなる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが再構築に携わった業務プロセスの概要と、再構築の背景となった顧客や経営上の課題を、800字以内で述べよ。
設問イ  活用した成功事例とその事例を選んだ理由、及び成功事例を自社の業務プロセスの再構築に確実に生かすために払った留意点について、自社の特性と関連させながら述べよ。
設問ウ  業務プロセスの再構築の効果と今後の主要な課題を、成功事例を生かせた部分と生かせなかった部分に分けて述べよ。


H14−問2 業務要件と整合の取れたアプリケーションソフトウェアの調達について

 情報化の進展に伴い、情報システムを構築する段階で、利用部門がアプリケーションソフトウェアの開発を直接外部に依頼し、調達するケースが増加している。
 業務要件と整合の取れたソフトウェアを調達するためには、社内の調達基準に基づいて、対象業務の要件やシステムの動作環境などを明確に提示する必要がある。
 利用部門では、業務の特性を踏まえたシステム化要件を明確に定義し、提案元や提案されたソフトウェアを評価するための基準などを事前に整備することも求められる。
 ソフトウェアの調達における準備から発注までの手順は、次のように行われる。

 しかし、現実の調達では、提案内容の明確な評価基準を持たないまま調達先を決定し、ソフトウェアの検収時点で業務要件との不整合が明らかになったりするなど、調達のためのマネジメント不備によるトラブルも数多く見られる。
 このような事態を回避するためには、利用部門においても調達手順に従った的確なマネジメントが欠かせない。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  情報化の対象になった業務と、調達したソフトウェアの概要を、利用部門において調達マネジメントにかかわったあなたの立場とともに、800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた調達に際して、業務要件などを、相手に分かりやすく提示するために、どのような点に留意したか。また、どのような点がうまくいかなかったか、その原因はどこにあると考えるか、対象業務の特性を踏まえて述べよ。
設問ウ  外部からの提案内容に対して、どのような基準で評価を行ったか。また、評価基準の有用性をどのように考えたか、今後の課題とともに述べよ。
論文例  


H14−問3 情報システム導入後の評価と業務の改善について

 ERP に代表されるような業務モデルを組み込んだソフトウェアパッケージの活用が進んでいる。導入した情報システムを十分に活用するためには、導入段階だけでなく、導入後も引き続き、その利用実態を適切に把握・評価し、情報システムを活用した業務の改善を続ける必要がある。
 例えば、ERP を導入する場合、従来の業務プロセスに合わせてソフトウェアパッケージの機能の追加・変更を実施することが多い。しかし、過度な機能の追加・変更を実施すると、その後のバージョンアップなどに迅速に対応できず、必要な経営情報がタイムリーに得られなくなり、当初の目的を十分に達成しなくなった事例も見られる。また、ERP の場合は、業務モデルが組み込まれ、運用も容易という意識があり、導入後の保守・運用体制が不十分な場合が多い。業務環境の変化に伴う継続的な機能変更や要員教育などが十分に実施できず、事務作業の停滞や人員の増加に悩んでいる事例も見られる。ERP の導入に際しては、導入時点でのコストや導入期間の評価だけでなく、導入後の機能の追加・変更の影響や保守・運用体制などを継続的に評価し、対応していく必要がある。
 上級システムアドミニストレータは、利用者側のリーダとして情報システムの導入にかかわるだけではない。導入後も、情報システムの利用状況を把握し、導入の目的の達成度合いを評価することによって、情報システムを活用した業務を継続的に改善する役割を担っている。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが導入に携わった業務モデルを組み込んだ情報システムの概要と導入の目的を、業務上の要請を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた情報システムについて、導入後の業務環境の変化に伴い、情報システムを活用した業務に、新たにどのような改善が必要になったか。問題となった業務環境の変化及び業務モデルの活用を考慮した解決策を、具体的に述べよ。
設問ウ  業務モデルを組み込んだ情報システムの導入について、あなたはどのように評価しているか。実施した機能の追加・変更の範囲や導入後の保守・運用体制などと絡めて、あなたの考えを述べよ。


H13−問1 知識やノウハウを活用した業務の付加価値向上について

 多くの企業では、業務の付加価値向上のために、社員が日常業務で体験した事例や長年培ってきた業務上のノウハウなどを、組織として活用する必要性が高まっている。
 通常、目に見えない暗黙的な形で個人の中に留まっている知識やノウハウを活用するには、これを目に見える形に置き換えたり、より効果的な内容にするために関連する知識やノウハウと結合したりする。この処理を継続的に繰り返し行うことを、ナレッジマネジメントという。
 具体的には、次のような手順をとる。商品販売やサービス業務では、顧客や取引先との折衝場面を通じて知識を獲得する(共同化)。獲得した知識は、実績データによる客観的な裏付けやスペシャリストのアドバイスを受けて、販売促進などの支援策として目に見える形に置き換える(表出化)。これらの支援策は、戦略会議などの場で関連する施策と連携され、重点施策として販売やサービス活動に反映される(連結化)。この結果、更に新たな知識やノウハウが蓄積されて業務の付加価値が向上していく(内面化)。このようなプロセスの繰返しは、知識やノウハウを創造し、増殖させるために欠かせないものである。
 ナレッジマネジメントを実践させるためには、知識やノウハウの蓄積だけでなく、社員がそれを活用できる能力を備えていることも必要である。また、ナレッジマネジメントを定着させるためには、組織風土や個人の意識の変革も重要で、継続的な啓もう活動、知識やノウハウの提供者への奨励なども欠かせない施策になる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わったナレッジマネジメントの概要を、知識やノウハウの活用を必要とした背景やあなたの役割とともに、800字以内で述べよ。
設問イ  ナレッジマネジメントの実践において、蓄積した知識やノウハウを活用しながら増殖させるために、どのように取り組んだか、情報技術の活用を含めて述べよ。
設問ウ  ナレッジマネジメントを定着させるために、組織風土や個人の意識の変革にどのように取り組んだかを述べよ。また、取組の結果に関するあなたの評価を、今後の課題とともに述べよ。


H13−問2 業務改善のための情報化投資と効果について

 企業が業務の改善を図るためには、情報システムを活用することが有効である。情報システムの構築には、多額の投資を要することが多く、投資に見合う効果を上げることができるかどうかを見通した上で、開発に踏み切ることが必要である。投資の決定に当たっては、業務の仕組みを検討し、情報システムを開発する費用のほか、これを定着させ、運用していくための費用も考慮する必要がある。
 情報システム投資の効果には、定量的な効果と定性的な効果がある。定量的な効果は、作業効率の向上による人件費の削減、販売促進費や物流費の削減など、数値で算定することが容易である。製品やサービスに対する顧客満足度の向上、企画・管理力の強化、業務上の判断力強化などの定性的な効果についても、数値化を試みるなど客観的に評価できるよう最大限の工夫を行うことが重要である。二つの効果を総合的に評価し、情報システムの構築・運用にかかる費用と対比させ、期待効果実現に関するリスクも加味して、投資を決定する必要がある。
 より大きな効果を実現するには、稼働後の継続的な改善努力が欠かせない。計画どおりに情報システムが利用され、新しい仕組みが定着しているか、期待どおりの効果を実現しているか見極めた上で、一層投資効果を高めるために必要な新たな施策を検討し、実行に移すことが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  あなたが携わった業務改善の概要を、そのねらい、情報システムの内容、構築・運用の各段階の費用を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた業務改善について、期待した効果に関して数値化した内容とその根拠を述べよ。また、定性的な効果に関して行った、評価に客観性をもたせるための工夫を述べよ。
設問ウ  設問アで述べた業務改善の実施後、効果をどのように把握し、計画と対比したかを述べよ。また、より効果を高めるため、どのような施策を実施したかを述べよ。
論文例  論文例  


H13−問3 情報技術活用による間接部門の経営スタッフ機能強化について

 企業活動の様々な分野に情報技術が活用されるようになり、情報技術活用の効果は、単に事務処理の効率向上にとどまらず、企業の経営戦略の立案や業務企画などの分野にまで及んでいる。多くの企業が間接部門の見直しを行っているが、その背景には、間接部門に対して定型的な事務処理を中心とした業務だけでなく、経営スタッフとしての機能を一層強く発揮することを求めるようになったことが挙げられる。
 例えば、人事部門では、給与計算などの定型的な業務に加え、組織変更などに臨機応変に対応するための適正なスキル・キャリア管理の実施や、キャリアパスに基づく研修体系の充実が求められている。社員情報データベースを充実させ、それを活用した最適な人員配置案作りや、多様な研修体系を実現するために e ラーニングを活用するなど、新しい仕組みの構築が求められるようになってきている。
 経理部門では、決算処理や財務諸表の作成などの業務に加え、業績データを多元的に分析したり、シミュレーションを行ったりするなど、経理の専門家としての立場から経営を支援する機能が求められている。さらに、連結会計を円滑・迅速に進めるための関連会社の指導や、企業買収・合併の企画及び企業の海外進出時の経営支援までもが求められるようになってきている。
 上級システムアドミニストレータは、情報技術を活用して定型業務の効率向上を図るとともに、経営支援に有効なデータベースの充実やデータ活用の新しい仕組みの構築に取り組む必要がある。これらの情報や仕組みをより高度に活用し、経営企画業務にスタッフとしてかかわれるように、スタッフ教育の充実など人材面での強化にも注力する必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア  情報技術活用による間接部門の経営スタッフ機能強化のため、あなたが携わった業務プロセス変革の概要を、経営上の要請を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ  設問アで述べた業務プロセス変革の過程で遭遇した業務上の問題と、それにどのように対処し解決したかを具体的に述べよ。
設問ウ  設問アの経営スタッフ強化に対応するために、あなたが提案した人材面での強化策と成果を具体的に述べよ。
論文例    


H12−問1 中堅・中小企業における情報化の推進について

 経営環境の変化や情報技術の進展によって、中堅・中小企業においても、情報化の推進は事業発展の重要課題となっている。
 これまで、これらの企業の情報化は、経営者の意向に左右されたり、推進できる人材が確保できなかったりすることから、思うように進展しないという状況が多かった。
 中堅・中小企業における情報化の特徴は、経営者が最も重要と考える経営課題に対象を絞ることで、情報化の企画に直結させやすいことである。情報化の企画段階では、経営者の思いを的確にくみ取り、経営戦略にベクトルを合わせた計画としてまとめる能力が必要になる。しかし、現実には、これらの能力をもつ情報化推進者は不足しがちで、システムの開発作業と併せて外部の力を借りなければならないことが多い。
 システムの運用においては、個々の利用者の意識や能力の差が大きいことから、導入時の個別指導や、能力に応じた様々な運用支援策が必要になる。さらには、運用中のシステムについても、利用者が片寄ったり、業務要件の変化に対応できなくなったシステムを、手作業で補完して使用し続けたりするような事態を避けるための措置も欠かせない。
 このような中堅・中小企業特有の課題を解決しながら情報化を進めるためには、推進者の確保と、スキルや時間などの不足を、外部の専門家の支援などによって、どのように補完するかということがポイントになる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア 中堅・中小企業の情報化推進者としてあなたが対応した経営課題の概要とあなたの役割、及びシステム稼働までに携わった作業の概要を、800字以内で述べよ。
設問イ 情報化の企画段階において、どのように経営者層と方針のすり合わせを行い、情報化計画にまとめたか、スキルや時間などの不足を補うために利用した外部からの支援を含めて述べよ。また、そこで発生した主要な問題点と、その解決策を具体的に述べよ。
設問ウ 導入したシステムを計画どおり活用するために、利用者に対して、どのような支援を行い、どのような効果を上げたか、あなたの企業における利用者の実態を踏まえて述べよ。


H12−問2 ユーザ部門で実施する運用テストについて

 情報システムを効果的に運用し、業務効率の向上を図るためには、システム導入時に、ユーザ自らが主体的に情報システムをテスト・検証しておくことが必要である。ユーザ部門で実施するテストでは、新しく構築した業務プロセスが効率的に運用できるかどうかを中心に検証する。
 例えば、日常の仕事が新しい業務プロセスで効率的に運用できることを検証するためには、実際のデータを使って業務プロセスのテストを行うことが最も有効である。また、導入したシステムについてのテストだけでなく、他システムや他部門と連携してテストを実施することによって、総合的に業務プロセスを検証することも重要である。トラブル対応やリカバリ機能などをテストで確認し、検証しておくことも忘れてはならない。このようなテストの結果、業務運用上の問題点が発見された場合には、計画した業務効率向上の目標が達成できるように、システム機能や運用方法を変更したり、要員教育を追加・拡充したりするなど、適切に対処していく必要がある。
 上級システムアドミニストレータは、導入しようとしている情報システムの運用テストに、部門のリーダの立場で積極的にかかわり、新しい業務プロセスが効率的に運用できることを検証し、適切な対処をする必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが携わった部門の情報化の概要及び情報システム導入時に実施したテストの概要を、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べたテストで発見した業務運用上の問題点を具体的に述べよ。また、それらの問題点について、システムの機能面や運用面でどのように対処し、解決したかを述べよ。
設問ウ 設問イで述べた、テストで発見した問題点への対処の経験から、限られた期間内にテストを効率的に行い、かつテスト結果の信頼性を保つために、ユーザ部門主体で実施するテストをどのように主導すべきだと考えているか。今後のテストで工夫していきたい点を簡潔に述べよ。


H12−問3 基幹システムのデータの活用について

 コンピュータとネットワークの利用技術が発展し、多種多様なデータを有効に活用することで、業務効率の向上を図ることができるようになってきた。立案・分析・管理などの業務で、基幹システムのデータを抽出して活用することは、データの正確性や入力作業の省力化などの面で有用な手段である。しかし、そのためには、様々な工夫が求められる場合が多い。
 例えば、営業戦略立案で多様な分析を行う場合、基本となる売上や経費などのデータは基幹システムから抽出することが多いが、その際、分析に必要な項目や履歴データが保有されているかどうかを確認しなければならない。また、使用するデータを、基幹システムから効果的に抽出するタイミングを見極めることも必要である。ほかの手段で入手した新たなデータを追加したり、データを加工したりする仕組みの構築について検討することも必要になる。
 上級システムアドミニストレータは、分析などに必要とされるデータが、基幹システムから入手できるのか、基幹システムから入手できないデータについては、どのような手段を考えるのかなどを検討する必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア 立案・分析・管理などの業務で、あなたが携わった基幹システムのデータを活用した業務及び情報システムの概要を、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた情報システムの導入の目的と、その目的を実現するために、どのようなデータが必要と考えたかを具体的に述べよ。また、それらのデータのうち、基幹システムから入手したデータ及びそのデータを入手するために行った工夫について、具体的に述べよ。
設問ウ 設問アで述べた情報システムについて、基幹システムから入手できなかったデータをどのように補完したか、業務上の成果を含めて、具体的に述べよ。


H11−問1 業務プロセスの再構築について

 業務プロセスの再構築においては、個々の現状の業務プロセスにとらわれず、思い切った発想から仕組みを考えることが重要である。業務プロセスの本来の目的を十分認識し、これに必要な機能を満たす最適な仕組みを作るためには、自部門内の現状にとらわれず、関連他部門を含めた全社的視点と自部門の在り方の双方を意識することが重要である。業務プロセスの再構築では、従来の業務プロセスとの違いが大きいほど、周到な準備と関係者の意識改革が必要である。新しい業務の仕組みを定着させ、効果を上げるためには、企画段階から関係者に幅広く参画してもらうなどの施策も必要である。
 従来できなかったような新しい業務プロセスを実現するためには、情報システムの活用が有効になる場合がある。例えば、購買業務の効率向上のために、ネットワークを通じて取引先と生産や在庫の情報を共有し、その情報に基づいて製造現場から原材料を直接発注するなど、納入指図から決済までの業務プロセスを短縮し簡素化を図るような方策が考えられる。この場合、あらかじめ取引先や関連部門と、業務手順やルールなどについて十分検討し、関係者に周知することが必要である。また、経費の承認申請やりん議など煩雑で冗長になりがちな業務の効率を向上させるためには、これらの手続を情報システムの活用によって一元化し、承認手続を含めて簡素化を図るべきである。そのためには、思い切った権限委譲を含め、権限と責任について検討することも必要になる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたは、どのような業務プロセスの再構築を情報システムの活用によって可能にしたか、その概要とねらいを800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた業務プロセスの再構築において、従来の業務プロセスをどのように変えたか、また変える際にどのような問題が生じ、これをどのように解決したか、情報システムの活用と関連させて具体的に述べよ。
設問ウ 設問アで述べた業務プロセスの再構築について、今後より一層の業務上の効果を上げるために、とるべき方策を簡潔に述べよ。
論文例  論文例  


H11−問2 部門情報システムにおけるデータ活用の高度化について

 近年、ビジネス環境の変化は厳しく、各部門においては、短期間で情報システムを構築してデータを活用し、業務上の成果を上げることが期待されるようになっている。また、情報技術の急激な進展やユーザの情報リテラシの向上によって、単なる表計算ソフトウェアの活用にとどまらず、データベースの分析用ソフトウェアを活用した高度な顧客分析や販売分析など、ユーザ部門でも比較的複雑な情報システムを構築し、データ活用の高度化を図ることが可能になってきている。
 各部門でこのような情報システムを稼働させ、データを十分に活用して業務上の成果を上げるためには、運用段階まで含めた十分な計画を策定して、慎重に取り組む必要がある。期間情報システムとの連携によって、必要なデータを適宜更新し、整合性のあるデータを提供できるようにすることも重要である。また、部門情報システムの有効活用には、業務的な利用促進に重点を置いた十分な教育や研修が必要になる。さらには、情報技術に詳しいユーザだけでなく、一般的なユーザが十分活用できるように、操作が容易なシステムを指向するとともに、導入後の技術的なサポートによって、ユーザの作業負担を少なくする工夫が求められる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが構築に携わったデータ活用を目的とした部門情報システムについて、その業務上の目的とシステムの概要を、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた部門情報システムについて、データを有効活用し、業務上の成果を上げるためにどのような工夫を行ったか、データの活用内容と併せて具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた工夫について、あなたはどのように評価しているか。また、今後より一層のデータの有効活用を推進するために、解決すべき課題とその解決策を簡潔に述べよ。
論文例  


H11−問3 営業・マーケティング部門における情報技術の活用について

 情報技術を活用して営業活動を支援したり、サービスや商品の魅力を高めたりして顧客層の拡大を図ることは、企業にとって有力な戦略である。しかし、技術ありきのシーズ指向に陥ることなく、あくまでも顧客の視点を考慮したビジネスの観点から企画を行うことが重要である。近年のように顧客のし好の変化が激しい環境下では、販売の状況や傾向を素早く把握し、その変化に迅速かつ適切に対応できることが重要である。例えば、インターネットによる直販チャネルや POS 情報を活用し、顧客の反応を見つつ、売れ筋商品中心の品ぞろえを行ったり、セット販売の組合せを変えたりして拡販を図るなど、柔軟な対応が可能になる。
 情報システムやネットワークの活用は、業務処理の改善だけでなくマーケットの拡大にも役立つ。例えば、ネットワークを活用し、情報提供サービスなどを付加することによって商品やサービスの魅力を高め、新たな需要を創造することもできる。このような視点は、営業・マーケティングなどの部門で情報技術を活用する上で、今後一層重要になると考えられる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが携わった営業・マーケティング部門における、情報技術を活用した業務施策の概要を、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた施策について、その効果を上げるため顧客の視点からどのような工夫や試みを行ったか、その結果及びその結果をもたらした原因を含めて具体的に述べよ。
設問ウ 設問イで述べた工夫や試みについて、あなたはどのように評価しているか。また、今後より一層の成果を得るために、どのように情報技術の活用を図るべきか、簡潔に述べよ。


H10−問1 部門の情報化推進におけるソフトウェアパッケージの活用について

 コンピュータの急速な進歩、普及によってエンドユーザ自らがコンピューティング環境を活用し、業務効率の向上を図ることができるようになった。
 部門の情報化を推進する場合、従来のように膨大な費用や時間を掛けて独自のシステムを開発することは、必ずしも得策ではない。目的に合ったシステムを、短時間に効率よく構築するために、信頼性の高いソフトウェアパッケージを導入し、それを効果的に活用している企業が多い。例えば、営業企画部門では、ホストコンピュータから必要データをパソコンにダウンロードし、表計算ソフトなどを使って、エンドユーザが素早く売上げなどを分析できるようになってきた。また、利用部門で活用できる予算管理や在庫管理などの業務パッケージが普及してきた。その結果、売上げ・利益の予実管理や適正在庫の維持管理などを、簡単にかつ低コストで実現し、業務効率を向上させることが可能になってきている。
 上級システムアドミニストレータは、業務効率の向上を図るため、部門の情報化を推進する際に、独自のシステムの開発を企画するだけでなく、ソフトウェアパッケージを有効に活用するなど、最善の方法を選択することが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたの所属する部門における、あなたの役割及び部門情報システムの概要を、システム導入の目的を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べた部門情報システムの導入に際して、どのようにソフトウェアパッケージを活用したかについて述べよ。また、そのソフトウェアパッケージの選定経緯を述べ、活用の効果について、業務的な観点からの評価を述べよ。
設問ウ ソフトウェアパッケージの活用を含めた部門情報化の推進について、今後どのような計画を考えているか、その目的と効果を含めて述べよ。
論文例  


H10−問2 情報システムの活用に関するユーザ教育について

 情報システムの活用には、ユーザの能力に応じた教育が不可欠である。ユーザ教育は従来、情報システム部門が主導してシステム操作などを中心に画一的に進められることが多かった。最近は、パソコン単体の利用だけでなく、共用データベースの活用、グループウェアの利用など、利用形態の多様化と複雑化が進み、業務への応用範囲が大幅に広がっている。これに伴い、情報システムの活用に関するユーザ教育は、業務改善に役立てるという視点が一層重要になってきた。
 上級システムアドミニストレータには、情報システム部門などの支援を得ながら、次のような点に留意して、情報システムの活用に関するユーザ教育を計画し、実施することが望まれる。

 このようにして、業務改善を目的に情報システムを活用する能力を一層高め、業務上の成果に結びつけていくことが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが計画した情報システムの活用に関するユーザ教育の概要を、情報システムの利用形態及びユーザ教育のねらいを含めて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アで述べたユーザ教育を計画、実施する上で、あなたが特に重要と考えた点を挙げ、それらについてどのような工夫を行ったか、業務上の成果に関連付けて具体的に述べよ。
設問ウ あなたが所属する部門の業務上の成果を一層高めるため、情報システムの活用に関するユーザ教育の上で、今後推進したい施策とその効果について、あなたの考えを述べよ。


H10−問3 部門情報システムにおけるセキュリティ管理について

 情報システムの普及と高度化によって、コンピュータシステムに蓄えられるデータは、企業の経営を左右するほど重要なものになってきている。一方で、ネットワーク化の進展に伴い、データの流通が容易になり、共有化が推進されてきた。企業では、このような環境下で、機密度の高いデータを扱わなければならないという難しい課題に直面している。
 多数のパソコンが社内に配置され、ネットワーク化されている環境では、セキュリティを情報システム部門で一元的に管理することは、大変難しくなってきている。情報システム部門では、ユーザ ID の管理やウィルスチェックなどのシステム的なセキュリティ確保の方策を実施することが必要である。さらに、全社的な観点からネットワークへのアクセス基準、ソフトウェアやデータの利用基準などを整備することも重要である。一方、利用部門では、アクセス基準や利用基準を基に、日常の運用基準を整備し、部門内にセキュリティ対策の実施を徹底させることが必要である。また、ユーザのセキュリティに関する意識の高揚を図ることも重要である。
 このように、情報システム部門と利用部門が相互に役割を分担して十分にセキュリティを確保した上で、データの共有や活用を推進することは、上級システムアドミニストレータの役割である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたの所属する部門におけるあなたの役割及び部門情報システムの概要を、部門で実施しているセキュリティ対策を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ あなたの部門で実施しているセキュリティ対策を、全社のセキュリティ対策との役割分担の観点から述べよ。また、部門におけるセキュリティ対策の運用上の問題点は何か、それにどう対応したかについて述べよ。
設問ウ 今後、更に部門の情報化が推進されることによって、セキュリティを確保する上で予想される問題点は何か、その対応策を含めて述べよ。
論文例  


H9−問1 非定型業務の改善について

 企業における業務は、手順や判断基準の定められた定型的な業務と、これらをあらかじめ定めることが困難な非定型的な業務に分かれる。販売管理業務を例にとれば、販売実績を収集し、一定の方法で分析して報告するのは定型的な業務であり、市場の変化や規模を見通し、これに基づいて販売戦略を立案するのは非定型的な業務といえる。経営環境が厳しく、しかもその変化が激しくなるにつれ、判断や創造性発揮などの面で、より質の高い仕事を行うことが要請され、非定型的な業務の改善が一段と注目されるようになってきている。
 非定型的な業務の改善を支援する情報システムには、ユーザの判断や創造性の発揮を求められる仕事を行う際に有効な情報を、迅速に提供できる仕組みが重要である。的確な判断を速やかに下すためには、ユーザ自身が、必要なデータをデータベースから取り出し、分析や加工を行う必要がある。蓄積データを元に統計処理やシミュレーションを行うことによって、市場予測や事業化検討を行うことも可能になる。また、問題発見・分析を支援するツールを使うことで、顧客満足度の向上やアイディア創出に役立たせることもできる。このように、ユーザがそのもてる能力を最大限に発揮できるような仕組みを作り、活用を図ることによって、業務上の成果を上げていくことが望まれる。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが実施した業務改善の概要について、非定型的な業務を中心に、その背景及びねらいを含めて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの施策に関し、非定型的な業務の改善の上で特に工夫を行った点について、情報システム活用の内容を含めて述べよ。
設問ウ 非定型的な業務の改善の結果について、あなたはどのように評価しているか。また、今後の改善策として何をすればよいか、あなたの考えを述べよ。


H9−問2 業務上のコミュニケーションにおける情報技術の活用について

 近年の情報技術の進展は著しく、その活用範囲は急速に拡大している。コンピュータがコミュニケーションツールとしても利用されるようになってきた。
 最近、企業で広く活用されている電子メールは、その代表例である。電子メールをうまく活用することによって、企業内コミュニケーションの確実性と効率を高め、業務上の成果を上げている企業も多い。全国各地の営業担当者に、他社製品との比較情報や新製品の情報などを、正確かつ迅速に伝達することによって、顧客サービスを向上させたり、販売機会を増やしたりすることに成功した例もある。
 一方で、コミュニケーションツールは導入したものの、期待した効果が得られないケースもある。例えば、電子メールを全社に導入して、社内りん議のスピードアップをねらっても、担当者の責任範囲や承認ルールを見直さなければ、そのねらいの実現は難しい。
 生産性の向上やリードタイムの短縮、売上げの増加など、経営上、業務上の目標達成のためには、単に新しいコミュニケーションツールを導入するだけではなく、業務そのものを見直し、必要に応じて組織を変革し、その上で情報技術を活用することが重要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア 業務上のコミュニケーションに関して、どのような点を問題と認識し、改善を試みたか。その概要をコミュニケーションツールの活用を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの改善に対して、業務上の成果や経営面での貢献はどうであったか、具体的な例を挙げて評価せよ。また、コミュニケーションツールの活用に関してどのような点が有効であったか、その理由も含めて述べよ。
設問ウ 今後、コミュニケーションツールの活用範囲をどのように拡大、発展させようと考えているか。また、そのときにどのような点が障害となるか、あなたの考えを述べよ。


H9−問3 システムの運用におけるユーザ部門の役割分担について

 従来は、情報システム部門が中心となってシステムを構築・導入し、システムの運用も情報システム部門が一元的に実施してきた。近年、情報技術の急速な進歩によって、情報システムの活用範囲が広がり、多様化するにつれ、情報資源の管理や障害時の対応など、システムの運用面でユーザ部門の果たす役割が増えてきている。
 各部門に情報システムを導入し、全社ネットワークを使って部門間で情報を交換する場合、全社ネットワークのパフォーマンス管理や障害対応については、情報システム部門が担当するが、ユーザ側のパソコンやプリンタの障害などへの初期対応は、ユーザ部門が担当するようになってきている。新しいアプリケーションを導入するときや、システムのバージョンアップを実施するときも、情報システム部門などの助言を得て、ユーザ側で作業を実施したり、問題に対処したりする場合がある。ただ、この役割分担も一様ではなく、システムの機能や規模、関係部門でのシステムの位置づけ、ユーザのシステム利用度合いなどに応じて、ユーザ部門の役割も変わってくる。
 上級システムアドミニストレータは、関係する部門間で、システムの運用面での役割分担を調整することによって、情報システムを効果的に活用し、業務の効率向上に努める必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたの所属する部門での情報システムの概要と、あなたの情報システムへのかかわり方を、システム導入の目的を含めて、800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの情報システムを効果的に活用するために、あなたの部門では運用面でどのような役割を分担したか。また、その際に問題となった点と対応策及び結果について述べよ。
設問ウ 今後、情報システムを活用して、より一層業務の効率を向上させるために、あなたの部門での運用面の役割分担で重視なければならない点は何か。現状の反省点と対応策について、あなたの考えを述べよ。
論文例


H8−問1 部門間の連携が必要なエンドユーザコンピューティング(EUC)の推進について

 情報の共有化や有効活用を目指した EUC の推進では、部門を超えた情報の連携や、部門間での作業分担などの調整が必要になることが多い。この場合、他のユーザ部門や情報システム部門との協力なしには EUC の推進は難しい。経営責任者の協力を得て、トップダウン的なアブローチをとったり、関連部門のキーパーソンの賛同を得て、早い段階から協力体制を整備したりすることが必要である。他のユーザ部門との間では、共有すべきデータのコードを統一したり、データの整合性を確保したりするための調整が必要になる。システム構築後のデータの保守・管理の手順や役割分担を取り決める際にも、関連部門との調整が重要になる。また、EUC を展開するうえで、技術的な問題の解決や全社システムとのインタフェースの設計などで、情報システム部門の協力も必要である。
 上級システムアドミニストレータは、EUC の目的や必要性、経営目標との関連などを踏まえ、部門を超えた協力関係を構築する必要がある。また、自らリーダシップを発揮して、EUC を推進しなければならない。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが導入するに至った EUC のシステム概要を、その経緯と目的も含めて 800字以内で述べよ。
設問イ そのシステムの導入に当たり、他部門とどのような調整を行い、協力関係を築いたか、具体的な調整内容及び行動について述べよ。また、協力関係を築くうえで、どのような困難があったか、その解決策も含めて述べよ。
設問ウ 設問イで述べた調整や協力の結果について、あなたはどのように評価しているか、今後の改善点も含めて述べよ。


H8−問2 部門情報システム構築における外部の力の活用について

 部門情報システムの構築では、情報システム部門の協力が十分には得られなかったり、部門内の要員や技術力が不足したりすることもあり、外部の力を活用することが必要な場合が多い。例えば、部門業務のあり方やシステム化計画の検討において、外部コンサルタントの斬新なアイディアや客観的な評価を得ることは効果的である。また、システムの開発や運用においても、単に要員不足を補うためだけではなく、外部の知見や技術力を生かす観点で外部の力を活用することが重要である。
 部門情報システム構築において、外部の力を活用する際には留意すべきことが多い。まず、外部に期待する役割を明確にし、その役割を果たせるかどうかという視点で協力者を評価し、選定することが大切である。
 また、仕事を効率良く進めるためには、協力者とのコミュニケーションが重要である。情報システム構築に必要な情報を十分に伝えなければならないが、現実には、伝えるべき内容の調査や整理が不十分なことが多い。コミュニケーションスキルの不足やシステム特有の専門用語が障害になる場合もある。内部と外部の役割分担を明確にして、情報システム部門とのかかわりや役割についても十分調整を行ったうえで、部門情報システムの構築を推進する必要がある。
 上級システムアドミニストレータは、このような点に特に留意し、外部の力を活用した部門情報システムの構築において、リ一ダシップを発揮していくことが必要である。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが取り組んだ部門情報システムの構築の概要と、外部の力を活用したねらいを 800字以内で述べよ。
設問イ 設問アの部門情報システムの構築において、どのような視点で外部の協力者を評価し、選定したかについて述べよ。また、部門情報システムの構築を推進するうえで、協力者とのコミュニケーションについて、特に問題又は障害となった点を挙げ、それらをどのように克服したかを述べよ。
設問ウ 設問アで述べた外部の力の活用に際し、情報システム部門とのかかわりや役割に関する調整で留意した点について述べよ。


H8−問3 データの効果的な活用について

 上級システムアドミニストレータが推進する部門情報化のねらいの一つに、データの効果的な活用がある。
 活用の対象となるデータは多種多様である。例えば、営業部門で使用されるデータには、氏名や住所などの顧客情報、日々の取引状況や営業活動の記録、自社製品の特徴や価格などがある。また、業界のトレンドや同業他社の業績なども重要なデータである。活用の仕方には、“売上速報”に代表される新鮮さ(スピード)に重点をおくレポート類がある。基幹システムから定期的に取り込んだ取引実績データを基に、過去数年間の取引実績推移をいろいろな切り口で集計し、分析する場合もある。また、営業活動記録や同業他社の業績のように、随時にデータを取り込んで活用する場合もある。データの戦略的な活用という観点からは、集約されたデータだけでなく、POS システムのように生データを収集し、直接それを活用する仕組みも必要である。
 上級システムアドミニストレータに求められるのは、情報化のねらいを十分に把握したうえで、情報システムを利用してデータを効果的に活用することである。その際に、データの形式、性質、量、他のデータとの関連などを考慮する必要がある。
 あなたの経験と考えに基づいて、設問ア〜ウに従って論述せよ。

設問ア あなたが担当している業務と、その業務で活用している主要なデータについて、データの形式、性質、量、他のデータとの関連などを含めて 800字以内で述べよ。
設問イ 設問アのデータについて、情報システムを利用してどのようにデータを業務に活用したか、その目的と特徴的な活用方法を述べよ。また、情報システムの利用に際し、データを活用していくうえでの制約をどのように調整し、克服したかについて述べよ。
設問ウ あなたが今後活用したいと考えているデータについて、その形式や性質、量、他のデータとの関連などを述べ、どのような活用の仕方が考えられるか、業務改善のねらいとともに、あなたの考えを簡潔に述べよ。
論文例  


□御礼□

  問題のテキストデータは、松原敬二さんの
『高度情報処理技術者試験のページ』・伊那丸さんから、お借りしました。


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